僕には見えてるのに?
頭が沸騰しそうなぐらい僕は怒り狂っていた。
蹴られて、こんなとこに連れてこられて、厄介払いされそうになって…………
が、そんな僕の事なんか気にも止めずにさっきからあの、横たわってる人を……………
僕:[……………いやジロジロ見てないで助けなさいよ!!]
さっきから何してるの!?
浮遊少年:[少し黙ってろ。というか、コレと関係がないならもう出ていけ。]
手でしっしと追い出されそうになる。
ハァ!?なんで僕が悪いみたいになってんの!?
此処に連れてきたのはそっちでしょーが!!
出てけって、じゃあなんで僕蹴られたの!?
不届者がうんちゃらかんちゃらって言ってたじゃん!!]
浮遊少年:[コレがその不届者だ。]
心を読まれたらしく、返答が来た。
………………………………………………って、え?
この倒れてる………人が?
不届者?
僕:[………泥棒のようには見えませんけど………]
浮遊少年:[泥棒、とは一言も言っていないが?]
えええ!?何それ!?
ただの早とちり!?
ああもう、いい加減に!!……………いや、待って、まずはこの人の安全が第一だ。
この餓鬼をぶん殴るのは後だ。
僕:[あの、その人、助かります、か?]
内心は威勢がいいのに話しかけるとなるとどうにも弱気になってしまう。
もう、トラウマだ。
けど此処は我慢!!
浮遊少年:[助かる?何が?]
………………え?何がって…………
僕:[その人…………ですけど……]
何当たり前のこと言ってるの?
…………………………
浮遊少年:[…………助かったところでだろう。コイツは長くは生きられない。]
…………………………
そういう縁起でもないこと言わないで。
本当に。冗談になってないよ?
貴方の後ろに倒れてる人は死にそうなんだからね?
…………………………
浮遊少年:[やはり、お前にはコイツが見えているんだな。]
……?え?うん、見えてるけど…………え?
浮遊少年:[コイツには複雑な魔術が施されている。他者の意識的な認識を部分的に阻害する魔術だ。]
…………………………は?なんて?
僕:[もう一回……言ってもらえますか……]
浮遊少年:[…………つまり、普通は目に見えない。]
……………………………!?え、見えないって、透明人間ってこと!?
そんな魔術が!?
…………あれ?でも僕、この人のこと見えてるけど…………
…………まさかまた僕を唆そうと…………
浮遊少年:[お前が見えることについてはまだ分からん。動物には効果が薄いのか………或いは………]
少し上を向いて、何か薄っすら考え事をしている様子。
浮遊少年:[魔術、と言っても中枢神経に物質的に捻り込んだ持続型のもののようだが…………脊髄から掛けられ成立している。これだけ定着しているとなると生まれてすぐ、いや、胎児の頃から施されたものか?後者だとすれば母体自体になんらかの細工を…………まるで人体実験のような…………]
……………………………
なんだかブツブツ怖いこと言っている気がするけど…………
透明人間………………
え、本当に?僕にはクッッキリ見えてるけど?
何で…………?
…………………………………………………………?あれ、僕たち以外には誰にも見えない…………ってことは………………………………
!!?
不味くないですか!?それって、それって……………
この人、誰にも助けてもらえないのでは!!?




