気に入られた
え⁉︎お、お金⁉︎
しかも……これって金貨って奴⁉︎
眩しい!たった三枚なのに、この敗北感は何⁉︎
卓に出された三枚の金貨に目を剥いた。
驚いたのは僕だけではなかったようで、商人も先ほどよりもずっと慌てている。
「##、#########!」
うわー、驚いてる。
…‥ねぇ、今時金貨使うところなんてある?キャッシュはキャッシュでも金貨で!
まあ、それをいうなら馬車もそうだけど。
……でもまだ確定した根拠にはなり得ない。
世界は広いし?技術的に発展が遅れた国ではそういうのもあり得る気がする。
……けどやっぱり金貨はおかしい。
金貨だよ?こんなところで使うより換金して都会のお店であれこれ買った方が絶対得する。
こんな車もない国で動物を買うために金貨をそのまま出すなんて、そんな馬鹿なことってある?
僕はやっぱり此処は地球じゃないと思う。うん、そう思う!
転生なんて現象があるぐらいだしね!
異世界転生……漫画だ〜!
っていやいやいや、こんな狼が捕まってるだけの漫画つまらないでしょ。
……一人漫才お終い。現実に戻りま〜す。(棒)
「##########、##############」
「##、#######………」
おや?なんか商人と貴族風男性が言い合ってる。
あ、貴族風男性が商人に金貨三枚を渡した。賄賂みたいに。
ていうか完全に賄賂なんじゃないの⁉︎
怖〜、大人って怖〜。見るんだ世界中の子供達!これが大人だ!
……え?わわわ………
檻が急に持ち上げられ部屋から出された。
え!?本当に買われたの!?犬科ではあっても狼であるこの僕を!?
どんな趣味してるの!?
お金持ちの思考がわからない!これが恵まれた者とそうでない者との差か!!
……どうやらまた暫く歩くようである。辛抱だ。
(それからしばらくして)
相変わらず長いね。迷路みたい。
これが自由に歩けるのであれば楽しいと思うのだけど。
チラッと後ろにいる貴族風夫婦を見る。因みに僕は従者らしき人に運ばれている。
……全然疲れてなさそう。体力あるなぁ。
……いや違う。僕の体力がないのは最近何も食べていないからだ!
不健康極まりない!
早くご飯をもらいたい。
できれば肉ではなく白飯を、欲を言えば納豆を……
あるわけないか。でもきっと高級なものを食べさせてもらえる気がする。
なんたってセレブに買(飼)われたんだから!
そう僕が期待に満ちている時、漸く迷路から出られたようだ。
太陽の光が見えてくる。扉が開かれる。
さあ、高級犬生活の始まりだ!!




