美形は裕福らしい
目の前に手があります。僕はどうするでしょう?
一番、叩く。
二番、無視する。
三番、手を置く。
答えは……もうわかってると思うけど。
そう、三番だ‼︎僕は諂う!
プライド無いのか⁉︎はぁぁ⁉︎んなもんあるかぁぁ‼︎
……という心の声は出さずに静かに手を置く。
もちろん屈辱的だよ⁉︎でも仕方ないんだよ!あの部屋に戻るの嫌だし!
放心しすぎて頭がおかしくなる‼︎あとお腹も空くし!
これらが今の僕の心を埋め尽くす本音。
多少乱暴な言葉が含まれている上、急に変になったとか思うかもしれないけどそれはいつものことなので問題ない。
今問題なのは気分どうこうではなく買ってもらえるかなのだ。
騒がない。暴れない。大人しく、淑やかに、胸を張って、そう!気高い犬になったつもりで!
……さて、お相手の反応は?
……………まだ見てる。
え?ダメだった?お手ちゃんとしたのに。
ジーッと見つめ返して僕は睨みっこを始めた。
だって僕お手以外に犬芸知らないもん。他にすることないし。
ほら、ワンちゃんが見てるよ?可愛いでしょう?え?可愛くない?……ま、僕の魅力は生まれ変わっても同じぐらいってことですか。そうですか。
と、一人で落ち込んでいると目の前の男性が何か言った。
「#######」
うん?何だろ?僕に言ったんじゃない。
「####、#############…………」
商人が喋った。少し戸惑った口調になっている。
それを気にせず女性が男性の方に近寄ってきて僕を見た。
そして夫婦と思わしき彼らに僕はじっと見つめられている。
………………え?あの、どうかされたんですか?そんなに見られると気恥ずかしいんですけど。
……美形って目の保養にいいね。ここ最近は血肉ばかり見ていたから本当に何だか、元気が出るよ。
美形で元気が出るって変だけど。
でもやっぱり漫画やアニメが大好きな奴からしたら絵ではなくとも、美しいものが見たいんだよ。
それに西洋風の服着た美形夫婦なんて滅多に見られないしさぁ。
ふふふ、顔がニヤけてきた。やばい、この顔はちょっと不気味に思われるかも。
「###!###########!」
女性がそう喋りながら僕の頭を撫でてきた。
ん?え?ああ、どうも。
……撫でられてる?犬扱いだけど、悪くないね。
えへへ、どうも。ありがとうございます。
「############」
僕が撫でられていると、男性が僕を指差して商人に言った。
それに商人は困惑している様子。
「………#?、########?」
商人が男性に質問口調で聞いたのが何となくわかった。
……うーん?さっきから商人の様子がおかしいのはどうして?
何か失礼なことでもしたのかな。
が、そんな疑問も次の瞬間には頭から削げ落ちた。
男性が懐から広い卓に金銭を出したのである。




