首輪ならまだマシ
誰かー‼︎助けてー‼︎
と頭の中で悲鳴をあげる。耳から入ってくるこの声が聞こえるだろうか。
「##############………」
「#######………」
「###############…………」
凄く見られている。
おじさん達に、それはもう立派なおじさん達に。
檻の中にいる商品をじっと見て、話し合って査定をしている。
何であろう、僕である。
そう‼︎この、僕‼︎さらには周りの狂気じみた珍妙な動植物。
ひたすらに吠えまくって今にも檻から飛び出てきそうな狼含めた動物達。
ライオンや虎、大蛇などに似た恐ろしい怪物達がすぐ傍にいる。
そして、それらの近くに置かれた醜怪な植物たち。
ある意味拷問部屋のようだった。
いきなり馬車から引き摺り出されたかと思えば、なんという生き地獄。
この場所を見ていると自分がこれからどうなるのか、ますます不安になっていく。
逃げ出したい、けれどもまだ暴れてはいけない。
だって、麻酔矢で眠らされたらそれこそ終わりだから。
結局は檻が開けられた時しか僕は外に出られない。
それはもう既に痛感済み。
………僕は、今まで心の中に『どうにかなる』という思いがあった。
きっと大丈夫だという、根拠のない自信。
根拠になり得るとすれば、僕が人間だったから。
どう言えばいいのかはわからない。
こうしたら出来るかもしれない、こうすればいいかもしれない、そんなこんなで生きてきた僕ではあるが………そんな僕でも今の状況では気軽にやってみようなどとは言えない。
自分の生死がかかっているんだから。
焦りながらも考える、どちらがいいか。
檻を開けられた瞬間逃げ出すか、素直に売られるか。
逃げ出して捕まった場合、酷い目に遭うだろう。痛いだろう。
売られる場合、良い人とは限らないだろう。
どっちも良くはない。
僕にはどちらにも利益がない。
だからせめて損をしすぎないようにしないといけない。
どちらの方がマシなのか、よく考えるんだ、僕。
えっと、逃げれたとしても寝床とか食料とかを探さないといけないよね。
流石に鼠は食べたくない。
売られたら首輪をつけられるかもしれないけど、ご飯は出されると思う。
近くにいる僕と一緒に連れてこられた小狼二匹も殺されてはいない。
鞭打ちされてるけど………
毛皮ではなく僕達自身を査定してるからペット?何じゃないかな。
ペットの方がいいかもしれないね、うん。
「###########」
おや?何か近づいて………あ。
一人のいかにも下っ端らしい男が首輪を持ってやってくる。
檻の扉が開かれる。
………早いよ。まだ迷ってる途中なのに‼︎
………………でも、もう決まったようなものだし良いか。
そして僕は渋々首輪をつけられたのだった。




