不幸は不幸を呼び寄せる
抜き足、差し足、忍び足。
僕の手足は獣足。
………現在、夜。
親狼は外出中。
兄弟(二匹)は就寝。
キョロキョロ、キョロキョロ。
いない、よし。
ではオカン、good-by‼︎
ダッシュー‼︎!このまま突っ切れー!!!
急げ急げ急げいーそーげー‼︎!
ゴンッ‼︎「ギャ‼︎」
…………………何かにぶつかりましたね、何かに。
前見ながら走ってたんだけど………………
…………………………………………………目玉が二つ?
目玉が二つ……
め、だま、が、ふた……
次の瞬間、噛みつかれた。
とんでもない速さで、とんでもない力で……
「アアアアアアアァ‼︎!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い‼︎!
………………………………………………………………………………………………………………
戻された。
何処に?…洞窟に。
なんとなんと五回目!
何が?…失敗回数。
何の失敗?…脱走の。
……気分がやばいな。
………………………まあ、明日にしよう。
(朝)
「ファァァァ……」
おはよう。
って、あれ?まだ暗いね。
(訂正、早朝前)
…………昨日、僕はとんでもないものを見てしまった。
七、八匹で出て行ったのに帰ってきたのは二匹………
親狼含め、口元に血の痕………
今まで食べてたのは緑っぽい血。
赤色の血もあったけど基本緑。
…………口元の血は妙に濃かった。
…………食べた?共食い?
食われた⁉︎食われた‼︎食われた‼︎!
そうと決まったわけじゃないけども‼︎
怖すぎる!
…………周りをくるくる。
二匹だけ。
昨日はたくさん居たのに今は二匹。
…………いなくなった五、六匹の兄弟達よ。
あの時止められなくてごめん。
…………はぁ。
なんかもう嫌になってくる。
雷に打たれて、狼になって、ご飯不味くて、戦わされて、石ころ役に立たなくて、母親クズで。
不幸しかない。
なんでだろ?
……………………僕もいつか食べられるのかな?
…………やっぱり逃げよう。
ペットでもなんでもいい。
ここにいるよりはマシだ。
でもどうしようかなぁ。
あの親狼が厄介すぎる。
夜に何度も抜けだそうとしたけど駄目だった。
音を立てないようにしても、全力で走っても、木で隠れながら進んでも、しばらく森を歩くと必ず捕まって一瞬で連れ戻される。
う〜ん。
何かで気を引いてその隙に……
ダメだな。
そもそも気を引けるものがない。
あったとしても感づかれるのがオチ。
夜行性の動物は目がいい。
でもあのとき、きっと親狼は遠くにいた。
聴覚や嗅覚が鋭いのかも。
あとは振動とか。
弱点ないじゃん。
いやいや、長所は短所だったりもする。
例えば親狼の近くで大声を出して気絶させたり………(経験者)
うん、それにしよう(怒)
それがいい、それがいい(怒)
………と思った瞬間。
グサッ……………………
僕の真横を弓矢らしきものが通り過ぎた。
壁にぶち当たった模様………
そんなことより………
洞窟の入り口に、見るからに柄の悪そうな連中が………




