人間の習性
洞窟に帰ってきた。
全くもう。
急にぶら下げるから枝を落としそうになった。
腹立つ、けど今は火だ。
なのでさっきから頑張っている。
手を……
擦り付けて……
ゴシゴシ、ゴシゴシ、ゴシゴシ………
ゴシゴシ、ゴシゴシ、ゴシゴシ………
頑張って……………いる。
ゴシゴシ、ゴシゴシ、ゴシゴシ………
ゴシゴシ、ゴシゴシ、ゴシゴシ………
……………熱‼︎
熱い熱い熱い‼︎!
……………………ダメだな、これは(知ってた)
絶対つかない(知ってた)
つくわけない(知ってた)
嗚呼‼︎どうしたらいいんだ‼︎
マッチとか‼︎ライターとか‼︎
何かないんか‼︎
ゴロンゴロンとしながら洞窟の中で考え…………大人を頼ることにした。
その間、わずか5分……
早いなぁ。
諦めも肝心って言うけど。
そんなこんなで親狼くん、頼んだ!
ポフっと親狼を軽めに叩く。
……………何?って顔された。
………多分………(表情がわからない)
まあ流石に無理か。
えっと、これだよこれ。
爪で火の絵を描いて指差す。
こういうのだよ、わかった?
「ンーン」(こーれ)
………………………………………………………………………………………………………………
あ、行っちゃた。
だめだこりゃ。
あきまへんな。
絵が下手だったか?
そもそも火なんて知らないのかな?
使えんな。
まあ、知らないならしょうがない。
マッチでも作ろうかな。
確かエキリン?いや赤リンか。
あと硫黄。
これでマッチみたいなのが作れるらしい。
何処かで聞いたことがあるのだよ。
ハッハァ‼︎ドヤドヤ‼︎
…………どこで採れるかは知らないけど。
振り出しに戻っちゃった。
火打ち石も鉄がいるし……
雷…無理だな。
嗚呼!
どうしよう‼︎
こうなったら摩擦で、って無理でしょ。
せめて虫眼鏡とかがあれば。
はぁ、火、火、火………
なんか危ない人になってるな。
……ちょっと疲れた。
休憩休憩。
ちょっとお外へ。
トコトコ「スーハー」
…………あ。
ササササササっと。
何してるの?
気づいていないのか無視しているのか、親狼は作業を続けている。
穴掘り作業?
犬にそういう習性があるって聞いたことあるけど。
ほら、ここ掘れワンワンってやつ。
ちょっと前に、チラッ。
ん?なんか咥えてる。
石?何あれ?
掘り掘り掘り掘り(ホリホリホリホリ)
無視!
「はぁ」
……楽しいの?それ?
何かあるのかな?
前に出て堂々と穴を覗きこむ。
親狼は気にせず堀掘。
……特に何も出てこないな。
察するにその石を埋めるのか。
それから1分ぐらい経って、親狼は掘るのをやめた。
終わった?
親狼は石をペッと吐き捨てた。
そして今度は地面を埋め直し始めた。
その時、僕は思ってしまった。
後で掘り返そうと。
我ながらゲスいな。




