夢
自分はある夢を見た。
誰もいない教室に一人いる夢だった。
自分の机の上には、紫のヒヤシンスが入った花瓶が置いてあった。
一人の教室はいつもの何倍も広く感じた。
自分を呼ぶ声がした。
外からした。
教室の窓から外を覗くと、年齢が同じぐらいの女子が立っていた。
しかし、逆光で顔をちゃんと認識できなかった。
女子はこっちに向かって手を振ってきた。
自分も振った。
自分は女子の所に行こうと教室を飛び出した。
廊下を走る。
走る。
走る。
何故だろう。全然進めない。
諦めて教室に戻った。
すると、花瓶は無くなっていた。
外を覗くと、女子はまだいた。
しかし、何かがおかしかった。
女子は上を見た。
自分も見た。
そして、驚愕した。
空が真っ赤に染まっていく。
自分は腰を抜かした。
女子はまだ上を見ている。
自分は女子を助けなければならないと思った。
だが、身体は正直だ。全然動かない。
何もできないまま女子を見ていた。
自分は女子に何度も声をかけた。
何度も。
何度も。
女子はやっとこっちを見た。
しかし、女子は動かない。
自分は、女子の目から涙がこぼれ落ちるのを見た。
それからすぐに、女子は破裂した。血飛沫をあげながら。
自分は絶望した。
目の前で人が死んだのだから。
だが、涙は出てこなかった。
自分は叫んだ。
ひたすら、ひたすら叫んだ。
そして叫び終わると窓から下を見た。
自分は飛び降りた。
自分は無力だった。
だから、飛び降りた。
地面に衝突する直前、空からブラックホールみたいなものが出てきた。
ブラックホールは自分を飲み込んだ。
まるで、助けるかのように。
自分は暗闇の中から目を覚ました。
目を覚ました場所は自分の部屋だった。