帰宅!そして一騒動。
「ようやく帰って来れましたね、父様、母様」
「そうだね……思いの外長く離れてしまったからね。シャルやトニー、セルジュ達には悪い事をしてしまったよ」
「ふふ、でも、代わりに新しい家族が増えたのよ。喜んでくれると思うわ」
そう言って屋敷の前に立つ俺、ルシエル兄上、父上、母上の4人。
シシリーは馬車の片付けを門兵の人と一緒に任せている。
「確かに、思いの外時間を取られてしまいましたね。でも、本当にご無事で何よりでした。父様、母様」
と兄上。それは俺も思った。
しかし、実は俺達が向かった日に丁度手紙を出していたらしい。
なので、後数日待てばなんの心配も無く待ってられたと思うとちょっと残念ではある。
けど、リューネ達、漆黒の牙の面々に会えたし、プラスマイナスゼロってとこだろうか?
個人的にはプラスだったとは思うけど。
梨にはちみつも食べられたし。
「それじゃあ、入ろうか?」
そう言って、扉を開ける父上。
すると中から誰かが突っ込んでくる。
「おとーさま!!」
いきなり父上に向かって突進したのは姉上だった。
泣きながら、父上に抱き着いている。
その様子を見て父上も目に涙を浮かべながら「……遅くなってごめんよ、シャル」と優しく抱き返す父上に、母上も駆け寄って一緒に抱き締めて「シャルちゃん、遅くなってごめんなさいね……」とこちらも涙を浮かべている。
「お父様!お母様!兄さんにアリューゼも。おかえりなさいませ」
そう言って、一歩離れたところで俺達を迎えてくれるトニー兄上。
それに対して父上と母上もそちらを見やり
「ああ、トニーにも心配をかけてしまったね……遅くなってすまなかったね」
「トニーちゃん、本当にごめんなさいね……お母さんが調子を崩してしまったから……」
と言うと、トニー兄上は首を横に振り
「いえ、新しい家族が増えたのです。仕方ない事です。むしろ、こんなに早く帰って来られた事を喜ばしく思います」
と、俺達が出掛けてからもしっかりとマナーの勉強に精を出していたのだろう。
しっかりとした受け答えである。
「ふふ。私達の子供達は皆とても良い子に育ってくれてるね」
「ええ、そうね……本当に私達は子供に恵まれているわね」
「ふっ、トニー。遅くなったな。今まで僕らの留守をよく守ってくれた。感謝するぞ」
「いえ。セルジュや他の家臣団のおかげです。僕は特に何も……」
と、言って謙遜するが、まだ9歳なのだからとても心細かったろう。
「トニー兄様。大変お待たせしてしまい申し訳ありません。……ですが、この通り全員無事戻りました」
「アリューゼ……そのようだな。お前も良く無事で」
「はい、頼りになる護衛達と一緒に居ましたので、特に問題ありませんでした」
そう言うと、ルシエル兄上が笑いながら
「ははっ!何をいうか。多分旅の間アリューゼさえ居れば、我々は無傷で旅が出来ただろうな」
その答えに父上、母上、姉上、トニー兄上も驚いていた。
………えっ?そうなの?とは言え、俺達3人だけだと夜が心配だし、漆黒の牙の皆が居ないと多分駄目だったと思うけど。
そう思っていたのだが、ルシエル兄上がニヤッと笑って
「アリューゼはな。向かってくる魔物を瞬時に凍らせて見た事も無い蒼い炎で跡形も無く消し去ったのだ。僕もあの光景には驚いたぞ」
そう言うと、『蒼い炎』と言う単語に皆首を傾げている。
代表して父上が聴いてきたのだが……
「ルシエル。それは本当かい?普通、炎と言ったら赤やオレンジ色じゃないのかい?」
「はい。僕も驚きました。まさか炎に他の色があったとは知りませんでしたので……ですが、アリューゼが言うにはまだ『上』が有るそうです」
「『上』?と言う事はその蒼い炎は普通の炎より強いのか……そして更に『上』があると……」
暫し考えて父上がこちらを見て
「アリューゼ。私にも見せてくれるかい?」
まあ、この流れなら仕方無いか。別に隠すモノでもないし。
なので、魔力を掌に集中。
「分かりました……ただ、実際の所かなり熱いので少し距離を取りますね」
宣言通り少し……5mほど距離を取り魔法を発動。
「まずこれが通常の火球です。そしてこれに風邪魔法で酸素を集めると……」
火球の勢いが少し増し、熱量は少しなんてモノじゃなく増していく
「この様に蒼くなり、更に酸素を集めると……」
辺りが眩い白光へと包まれる……
「と、これが最終形ですね」
と言うと、皆が驚き、中でも魔力感知に長けているトニー兄上がへたり込んでしまった。
「「「「トニー(ちゃん)!?」」」」
「あ、あれはなんですか……?あんな現象は少なくとも魔法書には書かれてませんでした……それに、そこに込められた魔力の精緻さと量……あんなのを放ったらこの屋敷なんて一瞬で消えてしまいます!」
「!?そんなに……かい?」
「あーちゃん!めっ!よ!早くナイナイしちゃって!」
と、姉上に言われたので素直に消し去る。
実際維持するのも大変だったので助かる。
「ふう……これで良かったですか?」
「ああ、すまなかったね。疲れたかい?」
「ええ、少し。白まで持っていくと魔力消費がかなり増えてしまうので……」
「休むかい?」
「いえ、それほどでは有りませんので」
そのやり取りを見ていた姉上が俺にも抱き着いて来たのでそのまま受け止める。
「あーちゃん、おかえり〜。さっきはごめんねぇ?」
「いえ、姉様に止めていただけてちょうど良かったです」
「くんくん……ん?誰か知らない人の匂いがする……?」
あ、そうだった。2人にも説明しないと……と思ったら父上が2人に伝える。
「ああ、そう言えばアリューゼには婚約者が出来たんだよ」
「「えっ?」」
「とても良く出来たお嬢さんでね。エルフの少女なのだけど……」
「「エルフ?」」
頭が混乱しているのが見て取れる。
あーあ。もっと落ち着いてからでもいいと思ったのに……まあ、言われちゃったなら仕方無い。
「そうですね……その護衛パーティーの1人でリューネと言う女性なのですが……」
そう言いかけると姉上が「ハッ!?」となって俺の肩を掴み
「あーちゃんあーちゃん!どんな子なのぉ!?可愛いの?強いの?」
と、聴いてくる。
そりゃまあ、気になるか……
「そうですね……身長は姉様より少し高く、スラッとしてワインレッドの綺麗な髪に、くりっとした大きな赤い瞳が素敵な魔法使いの女性ですね……」
こんなものかな?……うん、こんなもんだろう。
「へぇ……そうなんだぁ……あーちゃんまだ6歳なのに……もう婚約者が……うぅ……」
泣いてもうた!?なんで!?何があかんかった!??
「ね、姉様!どうしたのですか?何処か痛いのですか?」
そう尋ねると
「ううん、あーちゃんも、いつまでもわたし達のあーちゃんじゃあ無いんだなぁって思ったらちょっとね………少し、寂しいなって思ったのぉ」
涙を拭きながらそう言ってくる姉上。
まあ、そりゃそうだよな。弟が2週間ぶりに帰ってきたと思ったら婚約者が出来てるなんて思わんもんなあ……俺も思わんかったわい。
「ふふ。大丈夫よ、シャルちゃん。リューネちゃんはとっても良い子よ?」
「そうなのお?……うん、おかあさまが言うのなら信じるわぁ」
「うん♪シャルちゃんも良い子良い子♪」
「うふふ、おかあさま、くすぐったいわよぉ♪」
と、俺から離れて母上とじゃれ合う姉上なのであった。
帰ってきて早々、なんか疲れたなぁ………そして、丁度良く戻って来たシシリーとも合流して、皆で久し振りの屋敷へと帰るのだった。
皆、ただいま!なんつって。




