リューネとデート1
遅くなりました!
ちょっと色々あって書くのが遅くなりましたが、あともう1話更新するのでお許し下さいm(_ _)m
「あ、見てみて!これ、美味しそうじゃない?」
「へえ……これは梨ですね。(まさかこの世界にも有るとは……)」
「ナシって言うの?アリューゼはこれ、食べた事あるの?」
「いえ、食べた事は有りませんが、知ってはいますよ。林檎に似てますが、林檎より柔らかく、瑞瑞しくとても甘い果物だと」
「そうなんだ。やっぱりアリューゼは博識ね。じゃあ、これ……ナシ……だっけ?買ってくるわね!」
そう言って、店主へと梨を持って買いに行くリューネ。
……2人だからか普段ののじゃ喋りじゃなくて、素を見せてくれるのは正直嬉しく思う。
てっきり外だからのじゃ喋りだと思ってたし。
「はい、お待たせ!じゃあ、そこのベンチに座って食べましょうか」
そう言って、紙袋に何個も入った梨を見せつつ俺の手を引いてベンチへと歩いていく。
……周りから見たら、良くて姉弟にしか見られてないんだろうな。
実際は婚約者扱いなんだけども。
そしてベンチへと座り、腰のポーチから果物ナイフを取り出し、皮を剥く。
すると、芳醇な瑞々しい香りが鼻を擽る。
(懐かしい匂いだな……)
そう、思ってしまう。
「はい、剥けたわよ。さあどうぞ♪」
「はい、ありがとうございます。リューネは器用なんですね……」
皮は見事に1本に綺麗に剝かれていて、手慣れているのが分かる。
「そう?エルフなら林檎の皮剥きとか誰でも出来るわよ?」
「いえ、それでも1回で剥けるのは凄いですよ。僕は出来ませんし」
そう言うと少し嬉しそうにする。
やっぱ、素直で良い娘だよね。
正直俺には勿体無いくらいの女性だと思う。
まだ少し幼げな風貌では有るが、くりっとした眼に、瑞々しい肌、艶々のワインレッドの髪に、細身だけれど靭やかな手脚。
とても俺には不釣り合いな美少女だと思う。
そんな彼女が俺の婚約者か……と思うとなんだか不思議な気持ちになる。
そして、差し出された梨に齧り付く。
すると、口内いっぱいに広がる果汁、そして甘味。
……正直日本のより少し甘味も足りなければ酸味も有る。
でも、それを差し引いてもこれは梨だ。
紛うこと無き梨である。
「……うん、甘くて美味しいですね」
少し日本を思い出して泣きそうになるが我慢する。
今の俺は本当に泣き虫だ。
ちょっとした事で前世を思い出して悲しくなったり、寂しくなったりしている。
自分では成熟した大人だと思っていたのだが、精神が身体に引っ張られてるのか喜怒哀楽がすぐ表に出てしまう。
その俺に気付いたのか、頭を撫でてくるリューネ。
「……アリューゼには何か……誰にも言えない秘密が有るみたいね……でも、今は聴かないわ。いつか貴方が言ってもいいと思った時に教えてくれるのを待つから……だから、無理はしないでね」
そう言って、頭を撫で続けてくれる。
やはり、俺の外見年齢に似つかわしくない知識にリューネは疑問を持っているようだ。
そりゃそうか。こんな小さな子供が知ってないような事をやっちまってるからなぁ……でも、言うまで待ってくれると言う。
本当に、俺になんて勿体無いくらいの良い女だよ。
頭を撫でられつつも、梨を「美味しいね」「そうね、甘くて美味しいわ。……もっと食べる?」なんてやり取りをしつつ、結局もう1個剥いてもらって食べる。
シャクシャクシャリシャリと食感と味を堪能し、お店に戻りお土産に人数分を買って、夕方までに泊まってる宿に運んでもらう様に手配しておく。
こんな美味しいの2人だけ食べたなんて知られたらキティがうるさそうだしね、と言って2人で笑う。
「それじゃあ次は何処へ行こうかしら?」
「そうだね……腹ごなしに少し散歩しようか。天気も良いし、知らない街を歩くのは楽しいからね」
「そうね、何処にどんなお店があるのか歩き回って散策するのもたのしいわよね」
それから、暫く街を練り歩き、外で遊ぶ子供達や、井戸端会議をしてる女性達や、荷運び業者の男達の間を通り抜けて広場に出る。
「へえ……色んな露天商が居ますね」
「そうね。食べ物、布、宝石、飾り細工、壷、絵画……ぱっと見てもこれだけあるわ」
「それなら何か気に入るものもあるかも知れませんね、一軒一軒冷やかしてみましょう!」
そう言って、俺はリューネの手を引っ張って進む。
色んな露店を冷やかし、2人で練り歩く。
中には商売根性高く、壷や絵画なんかを押し売りされそうになるが、そのやり取りも楽しみつつ、色々と見ていく。
すると奥まった方の露店に気になるものが売られていた。
露店の主は少し歳の行った老人一歩手前くらいの男性で、フードを目深に被っている。怪しさ満載だが、売ってるものが気になったので話しかける。
「あの、すみません。こちらの腕輪、見せてもらっても良いですか?」
すると店主は億劫そうに顔をこちらに向け
「ん〜?なんだい坊主。その腕輪が気に入ったのか?おう、好きに見ていいぞ」
と言ってくれたので「ありがとうございます」とお礼を言ってじっくり見る。
……やっぱりだ。これは特殊な腕輪だ……銀色に輝き、装飾が施されて、真ん中に赤と青の石が埋まってる。
よく見ると、うっすらと切れ目が見えたので多分この腕輪は2つに分離するのだと思う。
買う前にそれを試す訳には行かないので、この腕輪の値段を尋ねると「1000リルだ」と言われたので素直に支払う。
「毎度あり」と言う店主の声もそこそこに俺はリューネを連れて露店から少し離れる。
店主の顔が見えなくなって少ししたくらいで止まり、噴水の縁に座り腕輪を捻る。
すると、やはりというか腕輪は分離し、赤い石の腕輪と青い石の腕輪に分かれた。
すると、リューネが驚いていたが俺は
「はい、リューネはどちらの色の腕輪がいいですか?」
と聴くと目をぱちくりと瞬かせて居たが
「えっと……それじゃあ貴方の瞳の色と同じ青い石の方で……」
と言うので手渡す。
「じゃあ、こちらはリューネの瞳の色と同じ赤い石の方を僕のにしますね」
「えっと……それで、これはなんなのかしら?」
「婚約の証……みたいな物です。ほら、2人でお揃いのを身に着けるってそんな感じがしませんか?」
と言うと、嬉しそうにリューネは自身の左手首に腕輪を嵌める。
それを確認した俺は右手に腕輪を着ける……ちょっとぶかぶかだけど構わない。
いずれ大きくなればぴったりになるだろうし。
そして、リューネの左手を取り手を合わせる。
「ほら、こうすればお揃いでしょう?」
「うん……そうね、ありがとう。アリューゼ……絶対に大事にするわね」
と、凄く嬉しそうに、大切そうに、自身の左手首を右手で触るリューネ。
まあ、せっかく婚約者になったのだから、指輪では俺の指には入らないだろうから腕輪だけど代用だ。
ここで1つのケジメと言うか、覚悟の形として腕輪を贈ったが、思ったより喜んでくれた様で良かった。
後に知る事になるのだが、婚約者だからとお揃いの物を身に着けるのはやり過ぎだった事を知る。
大抵結婚する時に揃いの小物を身につけるくらいで、婚約の時点でそこまでするのはもう結婚が確定した様な物だと父上から聴くことになる。
まあ、やり過ぎだろうと別に構わないけどね。
ただ、少し気恥ずかしくなるだけだ。実害は無いと気にしない事にするのだった……
それはこの後の話だ。今はまだデート中なのだから、他の店のウインドウショッピング(窓無いけど)を再開し、日が傾くまでこの街を堪能した。
「また明日も、違う所を散策しましょうね」
とリューネに言われて繋がれた手を少し強く握りつつ
「はい、明日もまた他の場所を散策しましょう」
と言い返し、西日で伸びる影を前にしながら宿に帰るまで手を繋ぎ続けていたのだった。




