兄上に相談。そして旅の準備を。
屋敷の中を駆けていく。
1秒でも早くルシエル兄上へと相談しないと!!
早く。
早く!
早く!!
そして辿り着く兄上の部屋。
まだ呼吸も整わない内に逸る気持ちに身を任せてノックする。
『…ん?誰だ?』
何か作業していたのか、一瞬間があったがそんな事は気にせず返答する。
「アリューゼです!…はぁ、はぁ、あの!兄様!!その、折り入って相談が!!」
『ああ、入っていいぞ』
そう言われたので早速部屋に入る。
すると、バックパックを用意している兄上の姿が。
「その、兄上……そちらは?」
「うん?セルジュに言って用意してもらった。もう、皆限界なのでな……私が父様達を探しに行こうと思ってな」
そうだったのか……やはり、考えているのは同じ事だったのだな……嬉しくなる。
「あの、僕もその……父様達の捜索に向かおうと思ってまして……」
「アリューゼもか?しかし、どうやって………ああ、ギルド……だな?」
ニヤリと笑って俺を見て笑っている。
まあ、そのとおり何だけども……先読みするとは出来るようになったね、兄上。
「はい、知り合いの冒険者ギルドの方に護衛をお願いして捜索に向かおうかと思ってます」
「そうか。だが、それは私が行く。お前が態々危険を犯す必要は無いんだ」
それを言ったら跡目である兄上が行く事にも俺は納得できないけどね。
「お待ち下さい!兄様はこのケイオス領を継ぐ方!そんな無茶はいけません!」
「そうはいうがな、トニーやシャルには長旅は無理だ。だったら私しか居ないだろう?」
「ですが、もし兄様に何かあってはシシリーも悲しみます!どうか、お考え直し下さい……」
「それを言われると弱いな……だがどうする?アリューゼにだけ任せる訳にはいかんぞ?」
「でしたらお2人で向かっては如何ですか?」
唐突に割り込まれた声に俺達は扉の方に顔を向ける。
そこには荷物を持ったセルジュがいた。
「……なんだ、セルジュだったか」
「脅かさないでくださいセルジュさん……」
そんな俺達にニッコリ笑いながら荷物を部屋に置き、恭しく一礼して顔を上げる。
その顔はとても真剣だった。
「この際、どちらが、などと拘らずにお2人で捜索に向かわれた方が良いと具申します」
「セルジュ……お前はそう思うか?」
「はい。ルシエル様は人の使い方を、アリューゼ様は臨機応変な強い魔法の腕をお持ちです。そこに私の知り合いの冒険者を紹介しますので、その者たちと共に向かっては如何でしょう?」
そう言って、一通の封筒を兄上に渡す。
「これは…?」
「紹介状になります。こちらをギルドの受付に渡せばギルマスへと話は通るでしょう」
「えっ?ギルドマスターですか?……セルジュさんってうちに来る前はなにやってたの?」
「ほっほっほ。昔の名残りですよ、アリューゼ様。まあ、ギルマスとは旧知の仲、とだけ言っておきましょう」
ほへー。そりゃすごい!セルジュも只者ではないと思っていたけど、まさかギルマスと知り合いとはねぇ。
俺は数人の腕の立ちそうな冒険者を知ってるくらいだしなぁ……やっぱり相当凄かったんだろうなぁ。
兄上がこちらをちらと見て聞いてくる。
「セルジュがそこまで言うなら私は信じたいと思うが……アリューゼ、良いのか?旅というのはそう簡単なモノでは無いぞ?」
「いえ、兄様が付いてきてくださるなら安心です。是非、僕の力を活かして下さい」
そう言って、互いに頷き合い握手する。
俺達は10分後に玄関で集合を約束し、別れるのであった。




