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お見合いその1

はい、氷補充を先日に済ませて本日はもう姉上のお見合いの日だ。


遂に、この時が来てしまった……出来れば来てほしくなかったけど、時間は日々流れる物。


嫌だ嫌だと言っても仕事開始の月曜日は毎週来るし、夏休みの宿題に手を付けてなくても8月31日は必ずやってくるのだ。


だからこそ、嫌だでは済まさないように社会人ならリフレッシュに休日を使い、子供ならちゃんと宿題を日々やっていく。


この気持ちを前世に照らし合わせるとこんな気分なんだが……伝わるかね?


まあ、この件に関しては自分の力が通じないから回避しようが無いのだけども。


閑話休題。


さて、そんなこんなで姉上のご様子ではあるが、緊張はしてるが不安そうな表情では無い。

なんで分かるかって?隣の椅子に俺が座らされてるからさ。


……いや、なんでこうなった。

反対側には父上と母上も席に着いてるのだが、兄上達はここには居ない。


気にならないと言えば嘘になるが、まさかお見合いの場に俺が巻き込まれるのは予定外だった。


あともう時期で辺境伯親子が来る。


そう。『親子』

実はアウラ様から聞いてて、お見合いを申し込んだのは辺境伯の独断ではあるが、それは息子さんにとってのお見合いなのだ。


だから、俺は距離を取ってその子……確か10歳だったかな?の人となりを確認する為にハイドしようと思ってたらまさかの現場に招集。


まあ、これはこれでしっかりと見極められるからアリよりのアリ?

ちょっとポジティブに行こう。


そんな事をつらつら考えていたら遂に待ち人来たる。いや、本当は来てほしくなかったけど(本音)


そして、扉がセルジュによって開かれる。


「シュナイダル辺境伯様方のご来訪です」

「ああ、入ってもらってくれ」


父上が答える。それに対して「」セルジュは一礼して扉の外へ。

そして玄関扉が開かれる音がする。


絨毯を敷いてるはずなのになんか靴音が響く幻聴が聴こえてくる。

うおお、なんだこの覇気は………戦闘態勢に入ってなくてこれ?

いやマジで辺境伯いつもどんなのと闘ってんのよ。


これはマジモンやでぇ……!!


「ここか……」


渋いオッサンの声が響く。

腹の奥から響くような低音だ。

これは威厳があるね。


「久し振りだなリオル坊!」

「こ、こんにちは……本日はお日柄も良く……!!」


すると、予想以上にゴツい初老の男性と、少しおどおどしている様に見えるけど、細身ながら鍛えられてるのが良く分かる。ルシエル兄上より強いんじゃないかな?


俺?体術や剣術じゃ相手になんないよ。魔法有りならどうとでもなるけど。あ、ダニエル卿は別ね。あの人魔法斬れるらしいから範囲攻撃の集中砲火するしか抑えられないらしいし。そんな事を考えていたが父上が席を立って挨拶をする。


「ダニエル卿……坊は辞めてくださいといつも言ってるではないですか……それより、遠路遥々ようこそ、ケイオス領へ」

「ガッハッハッ!坊と呼ばれるのが不満なら儂から一本取ってみよ。そうしたら坊呼びを辞めてやるわ!!」

「御冗談を。ダニエル卿に勝てる人間は王立魔法軍の隊長殿か、近衛騎士団団長殿くらいでしょう」

「お主も本気で鍛えれば奴らくらいに育ちそうだったんだがな……すっかりヒョロくなりおって」


そう言って、少し残念そうにするダニエル卿。

やはり、基本脳筋的では有るが、悪い方では無いのだろう。

それにしても挨拶以降、プルプル震えてる彼は大丈夫なのかね?


「ダニエル卿。所でそちらのお子さんは?」


それを聞いてニヤリと笑い、少年の背中を『バンッ!』と叩いて前に押しやり名前を伝える。


「この子は儂の末息子でな。アレンじゃ」

「あ、アレン・シュナイダルです!本日はよろしくお願いします!」


おお、あのオッサンの張り手を食らっても前に少し出るだけか……これはかなり鍛えられてるのが分かるね。

すると父上はアレン君に向きやり


「そうか。お初にお目に掛かる。ケイオス子爵家当主、リオル・ケイオスだ。総緊張しなくても構わないよ」

「は…はひ……」

「あらアナタ……アレン君が怯えていますわよ?」

「おや?これは失敬。ダニエル卿の覇気に触発されてしまったかな?すまないなアレン君」

「ガッハッハッハッハ!やはりまだまだ現役ではないか!どうだ?このあと一本……」

「遠慮しておきます。子供達に不甲斐ない父親の姿は見せたくないので」

「なんじゃ、張り合いの無い……」


そう言ってブチブチ文句を言ってるダニエル卿。

そろそろ俺達………特に姉上は挨拶したほうがいいんじゃないかな?相手さんは名乗ったんだし。

なので、姉上の手をギュッと握って合図を送る。このタイミングなら大丈夫だろう。


「ダニエル辺境伯様、アレン殿。はじめまして。シャルロット・ケイオスで御座います。こちらの隣に居るのは末弟のアリューゼです」

「アリューゼ・ケイオスです。どうぞよろしくお願い致します」


俺は無難に、姉上はカーテシーをして挨拶をする。

そして母上の挨拶も済み、其々が席に着き会話を開始する。


と言っても基本父上とダニエル卿の話なんだがね。


「いや、しかしまさか……閣下にそんな小さな御子息がいらっしゃるとは存じ上げませんでした」

「フッフッフ。アレンは中々2筋が良くな。今まで鍛錬でパーティーだなんだとめんどくさいのは控えておったのだがな……」

「ほほう、それで前回お会いした時もお連れでは無かったのですね?」

「いや、連れては来ていたぞ。ただ、あまりの人の多さに驚いてしまってな。壁際をチョロチョロとしておったのよ。初めてのパーティーじゃ。仕方なかろう」

「そうだったのですね………で、それで、何故ウチのシャルロットを?」

「フム。それはだな………」

「あ、お父様!後生です!言わないで下さい!!」


あらあら。暴露されそうになって恥ずかしがってるのを見ると、年相応だねぇ。

だけど、そんなアレン君の話は聞かずにダニエル卿は暴露してしまう。


「その時壁際からパーティーを見ていたらとても美しく、可憐な娘を見たと聞いてな。その娘の特徴を聞くとリオル坊の娘のシャルロット嬢の容姿にそっくりでな。確認したらシャルロット嬢だったので奥手な息子の為に儂が一肌脱いだ、と言う訳よ」


なるほどな。パーティーで遠目に姉上を見て一目惚れしちゃった……と。

うん、目の付け所は良いんじゃないかな。

ただし、それに見合う物を見せてもらえないと婚約は認めないけどな!!


っと、決めるのは俺じゃない。姉上の気持ちと父上の決定だ。

つまるところ、アレン君が有用で姉上を任せられると思ったらとりあえず婚約だ。


「という訳でどうじゃ?アレンはシャルロット嬢には合わんか?」

「……如何に閣下からの推薦とはいえ、娘の将来です。私が決める訳には行きません……個人的には閣下と家の繋がりが太くなるのは歓迎ですがね」

「ふっ!言いよるわい。ならどうする?お主がアレンと模擬戦でもするか?」

「いえ、前途有望な若い芽を潰しかねないのでそれはよしておきましょう」

「ふむ。それもそうじゃな。ではどうする?」

「そうですね……アリューゼ」


おっと、いきなり呼ばれたよ。どうしたらいいんだ?

とりあえず返事返事。


「はい。父様」

「シャルとアレン君を連れてお前の部屋でお話してきなさい。まずはお互いに人となりを知らなければならないだろう?」


まあ、そうね。妥当な話だわ。

外だったら「後はお若い者たちで…」とか言えるが、うちに来ちゃってるからなぁ。

姉上の部屋は……如何に年若いとは言え、淑女の部屋を男性が訪れるのは問題があるからか。なるほど、だから俺が付き添ってたのね。りょーかいりょーかい。


「分かりました父様。では……セルジュ!僕の部屋に3人分の椅子とテーブルをセッティングお願いね!」


壁際に立ち、こちらを窺っていたセルジュに命令。こう言わないとね。他家の前だし。


「畏まりました。それでは人をやりますので少々お待ち下さいませ」


一礼してメイドに仕事を振りに行くセルジュを見送る。


「………あーちゃん」


姉上が不安そうにしている。俺はニッコリ笑って手をギュッと握る。大丈夫だよ。僕が付いてるよって気持ちを込めて。

すると安堵した表情になる姉上。


よし。ミッションコンプリート。


そうこうする内に準備が整ったのかメイドがやって来て俺たちを案内する。


ちなみに父上達はこれから面倒くさそうな政治や隣国の進行だとかきな臭い話をするっぽい。そんな訳で、子供は子供同士、大人は大人同士で、別れることになるのであった。

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