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シシリーの好みと本日最後の氷配り。

書くだけ書いたらちょっと長くなりました。

気に入っていただければ良いのですが……

そんなこんなで色んな家やお店に氷を配っていく。

配るでいいのかな?作っていく……?まあいいや。

とにかく配っていく。


そして移動中にシシリーと会話を少し挟みながらどんどんどんどんこなしていく。


「へぇ、シシリーはうさぎが好きなんだ?」

「はい、可愛いじゃないですか!ふわふわもこもこで、円な瞳でヒクヒク動く鼻とか!」

「うーん、確かに、うさぎは僕も可愛いとは思うけど……たまに家の食卓にも上がるからなぁ……」

「うっ、それを言わないで下さい……私も美味しいけど悲しいんですから……」

「あ、ごめんね。気遣いが足りなかったね。無神経でごめん」

「いえ、アリューゼ様が悪い訳ではありませんし……」

「うん、ごめんね。それじゃあ気を取り直してうさぎの話の続きをしよっか」

「え?あ、はい……」

「シシリーはうさぎってモチーフになった小物とかぬいぐるみとかも好きなのかな?」

「?ぬいぐるみ……ですか?小物は好きですけどぬいぐるみってなんでしょう?」


おっと、この世界にぬいぐるみは無かったか。てことは、作ってあげれば喜びそうかな?


「ああ、いや、気にしないで。それじゃあうさぎのモチーフの小物だとどんなのがあるの?」

「そうですね……木で出来た櫛とか細工で彫られたアクセサリーとかですね」

「ふ〜ん、シシリーは何か持ってるの?」

「いえ、欲しいとは思っているのですが……お金が足りなくて」


苦笑いをしながら空笑いをするシシリー。

うちってそんなに給金低いっけ?

あ、そういやまだ見習いだもんね。


「そっか……いつか手に入ると良いね」

「はい!あと少しで櫛は買えそうなので、それを楽しみにしてます♪」


うん、好きな事話してると年相応の女の子だねぇ。おっちゃん、なんとかしてやりたいけど、それをするのはルシエル兄上の仕事だ。帰ったらちゃんと情報提供しないとね。


「さて、今日はここで最後かな?」

「そうですね……もうそろそろ日が沈みますし……」

「それじゃ、すぱっと終わらせて帰りましょうか?」

「はい、そうしましょう」


そして、俺達は扉をノックする。


「あのー、すみませーん!ケイオス子爵家の者ですが、どなたかいらっしゃいませんか?」


シシリーが代表して声をかける。

俺がしても良いんだけど、シシリーがそれは駄目ですと言うので彼女に任せる事にしている。


すると中から慌ただしい音が聞こえながらも徐々に近づいてくる音と気配。


「はい、お待たせしました!」


中から出てきたのは髪の毛がボサボサながらも可愛らしい顔をした6歳くらいの女の子だった。


「あの、ご両親はいないんですか?」


シシリーが少女に向かって声を掛ける。


「あの、お父さんは畑に行ってて、お母さんは今寝てるの……」

「寝てる?何か病気なの?」


そう言うと、女の子は泣きそうになりながらコクリと首をふる。


「いつぐらいから寝てるのかな?」

「えっとね、1週間くらい前にね、森に野草や果物を採りに行ったらね、その時にね、蛇さんに噛まれちゃって……なんとかおうちに帰ってきてくれたんだけど、それから倒れちゃって、今は1日中寝てるの……」


遂に涙腺が崩壊してしまい、涙をぽろぽろと零してしまった女の子をシシリーが抱き締めて背中を撫でる。


「辛かったね、大変だったね、お医者様には診てもらったのかな?」

「ぐしゅっ、うん、あのね、毒素はもう抜けてるって言うんだけど熱病になってるんだって……」


なる程、毒の影響で抗体が残った毒素に過剰反応してるのだろう。何度も森に行ってる様だ下手をするとアナフィラキシーショックかもしれない……1週間もほぼ食べ物を食べてないんじゃそろそろ衰弱度もやばいかもしれない。

こんな事を聞いて放ってはおけないな。

俺は女の子に笑いかけながら


「ごめんなさい、僕はアリューゼ。アリューゼ・ケイオス。ケイオス子爵家の3男なんだ。もしかしたら僕なら君のお母さんを助けられるかもしれない。ちょっと家に上げてもらってもいいかな?」


突然話し掛けられた年下の男の子からケイオス子爵家と聞いてビックリしてる女の子だったが、「お願いします!」と頭を下げて俺の手を引いて家の中に入っていく。


そのまま2階に登り、夕陽に照らされた室内に置かれたベッドの上に顔を赤くして寝苦しそうに唸っている女性の姿が。

ベッドの脇に洗面器みたいなのが置いてあり、女性の額にタオルが置いてあることから彼女が看病していたのかもしれない。


洗面器?に入ってる水の温度を見る為に指を入れると温い……やはりこの家も氷が尽きてるみたいだね。ここは早く処置して安心してもらってから氷をあげないとね。


すると、シシリーが僕に話し掛けてきた


「あの……なんとかなるんでしょうか?」


毒素は抜けてるって話だし、身体に活力を与えて氷水で頭を冷やしてれば大丈夫かな?


「うん、多分体力が落ちて衰弱してるのが問題だと思うから、治癒魔法でなんとかなると思う」


その事を聞いた女の子が僕へ掴みかかりながらお願いして来る


「お願いします!お母さんを助けて下さい!!失礼なのは十分承知です!!ですが、このままだとお母さんが……お母さんが……!!」


うん、確かに残された時間は少ないだろう……今日来れて本当に良かった。

領民から死人が出るなんて俺も嫌だし。助けられるかもしれない生命なら尚更だ!!


彼女に向けてニッコリ笑ってから


「うん、僕に任せて。必ず君のお母さんは助けてみせるから」

「……!?あ……はい、お願いします………それと、失礼しました、急に掴みかかっちゃって……」


恥ずかしそうに俺から距離を取る女の子。

母親の生命が掛かってるんだし、そんな事気にしないんだけどなあ。


「ううん、気にしなくていいよ。君も必死だったんだしね……それじゃ、やろうか」


俺は女性の手を取り、心の裡から『この女性を癒やしたい』と必死に祈りながら魔力を放出する。


すると、女性の全身を緑の魔力が覆う。全身に治癒魔法を覆うとは、かなりヤバかったのかもしれない。


俺は集中力を途切れさせないようにずっとずっと魔力を流し続ける……すると途中で『治癒魔法のLV.が2に上がりました』との脳内アナウンス。よし、ダメ押しにもっと魔力を流す!!更に強く光り輝く治癒魔法の魔力。


そのまま1分、2分、3分と経った頃、ようやく光が落ち着いてきた。


そして、完全に治癒魔法の光が消え去る頃には女性の赤味がかった皮膚の色は赤味が引いて、普通の肌の色になっていた。

一応額に手を当てると……うん、ちゃんと熱は下がっているね。よし、成功かな?


「…………うん、多分これで大丈夫だよ。熱は下がったからお母さんが目が覚めたらしっかりと栄養をつけさせてあげてね」


ホッとしたのか涙を浮かべて安堵する女の子をシシリーが抱き締めて頭を撫でている。


そして、女の子が落ち着いた頃、下から声が掛かる


『ただいま〜!お〜い!ミア、居ないのか?』


おっと、家主さんが帰ってきたみたいだね。


「あ!お父さん!あのね!お母さん、治ったって!!」

『えっ!?なんだって!今行く!!』


階段をどんどん登ってくる音が近付いてくる。


「ミア!母さんが治ったって本当……かい?あの、どちら様で?」


おっと、挨拶はしなくちゃね。するとシシリーが先に会釈して


「どうも、お邪魔しております私はケイオス子爵家メイド見習いシシリーと申します。こちらは御令息のアリューゼ様です」

「お初にお目にかかります、ケイオス子爵家3男、アリューゼと申します。お邪魔させてもらってます」

「あ、はぁ……それで何故子爵家のお坊ちゃまがわざわざウチに来ていらっしゃるので?」

「それはですね……」


シシリーがこの家に来た経緯と何故女性を治していたのかの説明をしてくれる。

説明してくれるのはありがたいなー。楽だ。


説明を聞き終わり、感謝なのか、感激なのか分からないが涙を浮かべて俺の手をガッシリと握るマッチョな兄ちゃん。

うん、別に俺だから良いけど兄上とかにはやらんでね?多分あっちは礼儀にうるさいから。


シシリーも少し怒りそうな顔をしてるが、状況が分かってるからか何も言わないみたいだ。


「ありがとうございます……本当にありがとうございます……!!なんとお礼を言ったら………」

「いえ、袖すり合うも他生の縁と言いますし、これも何かの縁です。お助けすることが出来てこちらも嬉しいですよ」


後ろで女の子……ミアとシシリーが「袖すり……?」とか言ってるが、この慣用句は無いのか。まあ、意味は通じるだろう。その証拠に兄ちゃんが


「ほんっとうにありがとうございます!!このお礼は必ずや!」


とか言ってくる。別に礼とか良いけど、その気持ちは有難いよね。


そこで、何かに気付いたらしいシシリーが声を上げる。


「あれ?よく見たらお屋敷にお野菜を届けて下さってる方では…?」


それに気付いた兄ちゃんはシシリーを見て


「あっ、よく見たらたまに見かけるメイドのお嬢ちゃんか。よく気付いたね週替りで配送役は変わってるけど、お屋敷に野菜を届けに行ってるよ。あ、自己紹介がまだだったね……お、いや、私はマークです。いつもうちらの育てた野菜を食べてくれてありがとうございます」


ほーう、ウチに野菜を届けてくれてる人か。だったら尚の事良かった。家族に何かあったら畑仕事どこじゃないもんなあ。


「いえ、本当に何事もなく良かったです。これからもウチに野菜をお願いしますね?」

「へえ!もちろんです!今後とも誠心誠意旨い野菜を育てます!」


そう言って、頭を下げてくるマーク兄ちゃん。いや、本当に兄ちゃんなんだよ。どう見たって20くらいにしか見えないし。とても6歳くらいの娘が居ると思えない。母親の方は少し窶れてるけど、それでもよく見ればまだ20行ってない様にも見える。

若夫婦なのかね?


それより、と要件を伝えて氷の補充を済ませ、マーク兄ちゃんの家をあとにする。

マーク兄ちゃんとミアが手を振りながら俺達を見送ってくれた。


俺はやりきった気持ちで屋敷に向かう。

その顔を横からシシリーが覗いていたので


「何か顔に付いてるかな?」

「いえ、とても清々しい顔をなさってるなぁって」

「まあ、疲れたけどお昼は凄く美味しいご飯を食べて、街の皆から喜んでもらって、最後は人助け出来たし……ね」


これほど頑張ったのは今世では初めてだ。

心地良い疲れと共に眠気が襲ってくる。

だが、あと少しで橋に着く。

もう少しがま……


「ふあ〜〜〜ぁふぅ」

「くすくす、アリューゼ様、よければお屋敷までおぶりましょうか?」


なんとも魅力的な申し出だ……もう、今にも寝たい………今回はお言葉に甘えるとしよう。


「うん……ごめんね、シシリー……お願い出来る?」

「はい、どうぞおぶさって下さい」


シシリーの背中に覆いかぶさって彼女の耳元で囁く


「うん。ありがとう……シシリー……」

「いいえ、それではアリューゼ様。お屋敷に着くまでおやすみなさいませ」


その彼女の言葉を最後に、俺の意識は落ちていくのだった。

本日の更新は以上となります。

また夜の投稿をお待ち下さい!


本日の話も気に入っていただければ幸いです!

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