父上に魔法の件を話す
お昼は昨日撃ち抜いた鳥を調理したものだった。
まさか丸焼きで出てくるとは……回りにスパイスを振りかけてこんがりと焼かれた鳥のジューシーさにめちゃくちゃ驚いた。
風味が付いてたから香草焼きかな?
……オーブンでできたっけ?
まあいいや、気にしても仕方無い。とにかく今日のお昼はとても美味しかったです。
ごちそう様でした。
さて、お昼は終わったけどまずは父上に自分の魔法の事を伝えないとな。
……なにか言われるかなぁ……変人扱いされるのは勘弁なんだけど……と思いつつ、父上に話し掛ける。
「あの、父様……少々よろしいでしょうか?」
「うん?アリューゼから用事があるとはね。良いよ。何の用だい?」
「そのですね……実は僕、魔法が使えるのですが」
「へえ、もう既に魔法が使えるのか。凄いなぁアリューゼは」
そう言って頭を撫でてくる父上。力強い撫で方は少し乱暴な様な感じだけど、それが愛情から来てるのが分かるから心がもにょもにょする。むず痒い……と言ったほうが良いかな。意識しなくても嬉しくなって笑顔になってしまう。前世では、あまり撫でられた記憶無いしね。なんか新鮮。
「それで、なんの魔法が使えるんだい?火かい?それとも水?」
父上が嬉しそうに聞いてくるが、何故単属性……?ちょっと不安になった俺は父上を裏庭まで連れて行くことになった。
そして、裏庭に着いて午前中に作って埋めた穴の前にまで来る。氷が溶けて土がグシュグシュしてるねぇ。そう考えていると父上が聞いてくる。
「それで?食堂では話せないとの事だったから言われるまま付いてきたけれど……おや?ここは雑草が生い茂ってなかったかい?」
おお、流石父上。よく覚えてらっしゃる。
とりあえず、説明するより見せた方が早いかな?
「父様、これから僕が魔法を使いますが、驚かないで下さいね……」
「うん?ここで無いと出来ないのかい?」
「はい。午前中にここで魔法を使っていましたので」
「そうか。では、見せてくれるかい?」
「はい、まずは邪魔な泥部分を退かします」
土魔法を使って泥部分を移動させる。
場所は……物置の側でいいか。
「おお、泥を操れるなんて……それも無詠唱で……ん?下から何か出てきてるね……これは、氷かい?」
「はい、氷ですよ」
「まさか、アリューゼは氷魔法も使えるのかい?」
「はい。正確には火、水、土、風、光、闇、氷と無属性ですね。この泥の移動をスマートにする為に無属性のサイキックも同時発動しています」
「え?並列魔法を?その年でもう使えるのかい?」
おお、あの父上が驚いておられる。
やっぱり驚くような事なんだろうか?
「はい、ずっと魔力を感じる事が出来る様になってから毎日欠かさず魔力操作と魔力循環をしていたら出来る様になってました」
「……と言う事は、まだ赤ん坊だった時の魔力の波動はアリューゼ、君だったのかい?」
おっと、流石にそこはボカしておかないとマズいか。
「え?そんな事があったんですか?……ああ、だから物心付いた時には魔力を感じられた訳ですね!」
「……さすがに赤ん坊の頃は記憶は無いか。となるとあの時点で魔力を操作できていたのか……」
「分かりません。ですが、実際魔法は僕のすぐ近くにずっと有りました。なので、今これだけの種類が使えるのだと思います」
「そうか、教えてくれてありがとう、アリューゼ」
「いえ、そもそも僕はこの事が普通と思っていたのですが、シシリーが教えてくれたのです。普通では無い、と」
「そうだったのかい?」
「はい、なのでまずは父様に、と思いまして」
「そうか。基本4属性に上位属性を3種類も……アリューゼ、君は魔法の才能に恵まれているのかもしれないね」
「そう、なのでしょうか?」
実際俺は大した事が無いレベルだと思っている。よく言えばオールマイティー、悪く言えば器用貧乏。これでは実践派出来ても実戦では使い道が限られると思ってる。
だが、それでも父上は嬉しそうに褒めてくれる。
「ああ!我が家系からここまでの属性を使える者は出てきたことが無い!アリューゼ、お前が何処まで成長できるか分からないが、その才能は希少だ。好きに伸ばしていくんだ」
希少……ね。世界的にはどうか分からないが、ウチの家系ではここまでの属性持ちは居なかった、と。だったら俺が頑張って全属性使える様に努力しようじゃないか!
「分かりました!これからも精進します!!」
そう言うと、父上は嬉しそうに笑って
「でも、無理はしないようにね?お前はまだ小さいのだから」
「はい。分かりました父様」
と、ここで話が終わるかと思ったんだが何やらちょっと悪そうな顔をする父上。
「ところでものは相談なんだが……氷魔法はどのくらい使えるんだい?」
「えっと、この穴が満タンになるくらいまでなら普通に。限界が来る前に穴が埋まってしまったのでなんとも」
「そうか!それではアリューゼ、君に使命を与える事にする。明日からシシリーを連れて行く事を条件とするが領内を巡り各家庭に夏を越せる様に氷を沢山作ってきてくれないかい?何やら今年は気温が上がるのが少し早く感じるからね。早目に夏に向けて領内に氷を融通したいんだ」
「分かりました。それでは明日の朝ご飯を食べたあとにシシリーを連れて領内全体を視察しつつ氷を配って参ります!」
このチャンスを逃す手はないよね。
これで領内を大手を振って散策出来るぞー!!
降って湧いた望外の事柄に嬉しくなっていた俺は、これが数日掛かりになるある意味『はじめてのおつかい』である事を知るのは次の日になってからだった。
本当に、周り終わるのに数日掛かるとは……その時の俺は気が付かなかったのだった。




