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死んで、そして生まれ変わって

初連載です。

色々未熟ですが暖かく見守っていただけると助かります。

 ……ここはどこだ?


 ああ、そうか。俺は死んだんだな。


 確か60も生きれず、鬱病、痛風、糖尿病と生活習慣病に罹り、35で働けなくなり生活保護を受けつつ病院通いで独り暮らし。

 最初の頃は、猫も飼っていたが最初に飼っていた子が死んだ事で次の子を飼おうとは思えず、日々病院通いとその日の食料の買い出しで精一杯。


 そんな生きてるんだか死んでるんだか分からないような日々。


 だけど、そんな日々からも遂に解放されたんだな。


 ただ…死因はなんだったか……老衰でぽっくりだったなら良いんだけど……うーん、記憶が混濁してて思い出せない。


 まあ、そんな事よりも、だ。ここはいったい何なんだ?

 死者の集う場所なら他にも人が居ると思うんだが、自分しか居ないようだ。

 とりあえず、行く宛も無し。前へ進んでみよう。




 …どれくらい歩いただろうか?

 少なくとも数時間は歩いたと思うが、一切景色が変わりもしないからこの方向で合ってるんだろうか?


 うん、考えてても仕方無いな。誰か他に人が居るところに向かわないと。

 このままはぐれて行き場が無くなっても困るしな。


 なんて考えていたら光が見えてきた。

 とにかくそこに行ってみよう。


 うっ……眩しい………が、先はなんとか見える。

 その光の先にはなんだか神々しい女神様が居るっぽい?

 いや、光が眩しいからシルエットしか浮かんでなくて、女性っぽいから女神様(仮)としておこう。

 ともかくそちらに向かって行くと光が晴れてきた。

 やはり、女神様だったようだ。

 プラチナブロンドのふわふわしたロングヘアーに真っ白な貫頭衣を羽織ってシンプルだけど質が良いのが分かる作りの椅子に腰掛けてこちらを眺めている。


 『どちら様かしら?』


 おっと、いきなり話しかけられてしまった。

 本来ならこちらから挨拶せねばならない所を初っ端からイニシアチブを取られてしまった……って、別に問題無いけどね。

 このまま話が進めば天国か地獄か判定する閻魔様の所へ案内してもらえるだろうし。


 『もし、聴こえていますか?』


 おっと、ちょっと考え事が長くなってしまった。

 早く話さねば!


 「これは失礼しました。女神様……で、よろしいでしょうか?」


 この返しに女神様は穏やかに微笑み、頷いてくれた。


 『はい、わたくしの名はアウラ。アルスラートの神です』

 「アルスラート……ですか?地球ではなく?」


 聴いたことない国(?)の名前が出てきた。

 地球の神様じゃないのかな?そう思ったらアウラ様が答えてくれた……ある意味予想通りの答えを。


 『はい、わたくしは地球ではなくアルスラートの神になります。貴方は地球の人間なのですか?』

 「はい。地球の日本人です」


 その俺の答えに対して嬉しそうにアウラ様が食い気味に話し始めた。


 『まあ!あの有名なニホンジンなのですね!ニホンの文化は凄いって各神界でも人気なのよ!!』


 …おおぅ、思った以上の食いつきだ!!


 「は、はい。よくネット小説やラノベなんかでもそうだって読んだ事有りましたが、本当にそうだったんですね……」

 『ええ!ニホンは文化、食事、サブカルチャーとどの分野においても人気が高いですね』

 「そうなのですか……それは元日本人としても嬉しいですね」


 自国を褒められて嬉しくない日本人は居ないだろう。俺も多分にもれずその一人だ。

 しかしそこでアウラ様が不思議そうに首を傾げた。


 『しかし……おかしいですね。もし地球の死者ならばここに来るはずは無いのですが……』

 「えっ?そうなのですか?」

 『はい。実はこの場所は各世界毎に区分けされていまして、本来なら渡る事は出来ないはずなのですよ』

 「本来なら、ですか?」

 『はい。貴方はどのようにしてこの場所に辿り着いたのですか?』


 …どのように、って言われてもなぁ……まっすぐ歩いてきただけだからなぁ……とにかくその様にアウラ様に伝えてみる。そうしたらアウラ様が凄く驚いた顔をなさった!!え?そんなに不思議な事なのか!?


 『そう…でしたか。だとしたら、貴方はわたくしの管理する世界と相性が良いのかもしれませんね。そうした《縁》によってこの場所に導かれたのやもしれません』

 「えっと、話が見えないのですが…天国や地獄行きという訳ではなく、その…アウラ様が管理されているアルスラートと言う世界へ転生するという事なのでしょうか?」

 『貴方が望むのでしたら。もし、望まないのであればわたくしの権限において地球の死者の集う場所へお送りする事も可能です。ですが、もし貴方がわたくしの世界へ行ってみたいとお思いならば貴方の記憶を保持したままアルスラートへ転生する事が出来ます……あの、どうして泣いているのですか?』


 俺は、自身では気付かない内に涙を流していたようだ。

 もう、このまま死後の勤めを果たした後にまっさらな魂となり、今の自分とは別の自分として転生するものだとばかり思っていたのに、まさか別世界で生まれ変わる事が出来るなんて思わなかった。

 この俺に。

 ほぼほぼどん底だった人生を送った俺に。

 また新しく人生をやり直せる機会があったなんて!!

 前世では両親や兄弟にも恵まれず趣味に生きていたけど鬱病のせいでその趣味も上手く楽しめずに死んだ。

 それをやり直せるだなんて!!

 俺は、止め処なく流れる涙を拭い、少し詰まりながらも女神様へ俺の思いを伝える。


 「是非…是非っ!お願いします!!」


 そう言うとアウラ様は慈愛のこもった眼差しで俺を見つめて


 『ええ、歓迎します。新たなわたくしの世界の住人よ。…ところで、なぜそんなにもアルスラートへの転生を望むのですか?貴方は地球での人生を全うしたのでしょう?何故、またすぐに人間になりたいと思ったのですか?』


 アウラ様へ、簡単に俺の過ごして来た前世を伝える。

 父親がどうしょうもなく酒乱で母に暴力を振るっていて、離婚して母親に兄弟全員で付いていって母子家庭で育った事。

 育っていく過程で兄2人がどうしょうもないクズになり、薬物に手を出して母親や俺、そして妹へとんでもなく迷惑を掛けていたこと、34の時に、母が突然亡くなり、葬式後に次男が母の保険金のほぼ全てを使い込んだ事、そしてその後にも色々迷惑を掛けられて心を壊してしまいまともな生活が送れなくなった事、死んだ事は納得しているがまだまだやりたい事が沢山あった事……全て包み隠さずにアウラ様に話した。


 『……そう、ですか。そのような生を送ったのならやり直せるならばやり直したくもなるでしょう。ですが、よろしいのですか?わたくしの管理する世界、アルスラートは地球ほど平和では有りませんよ。魔物も居るし、魔法も有ります。けして平和と言うわけではありません。それでも転生を望みますか?』


 アウラ様が神妙な顔で聴いてくるが俺の答えは変わらない。


 「はい!問題ありません!よろしくお願いします!!」


 アウラ様は暫し考えを纏めるように瞳を閉じて数巡悩まれたようだが


 『……分かりました。では、貴方をアルスラートへ転生させます。ですが、せっかくの異世界からの客人です。少しばかりわたくしの加護と比較的平和な場所で生まれ変われる様に因果を操作します。貴方の次の生が幸せな物で有りますように……』


 アウラ様が祈る様なポーズを取ると、俺の体がほんのりと発光した。


 「…アウラ様、これは……?」

 『これは、わたくしの加護。病気になりにくく、良縁に恵まれやすく、努力次第ですがその努力が報われやすくなる…そんなちょっとしたサービスです』


 アウラ様が少しいたずらっぽく笑いながら答えてくださった!!

 前世では病気になり、ダチは1人居たがそいつ以外とはろくな関わりを持てなかったから来世ではもっと楽しく過ごせそうだ。


 「…何から何まで、なんとお礼を言ったら」

 『いえ、せっかくの異世界からの客人なのです。わたくしの世界を是非楽しんでください』

 「はい!身の丈に合った幸せを堪能して行きたいと思います!!」

 『では、こちらへ……』


 アウラ様に招かれるままアウラ様の前へ。

 するとアウラ様が俺の頭に手を載せて尋ねる。


 『最後に、貴方の名前を聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?』


 …やばい。そういえば、名乗って無かった。タイミングが無かったって言い訳は……駄目だよな、やっぱ。

 なので、アウラ様へと視線をしっかりと向けて


 「光司です。長谷部光司」

 『そうですか……コウジよ、貴方の次の人生に幸多からん事を』

 「…勿体無いお言葉です。アウラ様の慈悲に感謝を」

 『では、そのまま瞳を閉じて……流れに身を任せて下さい。次に目が覚めたときは貴方の次の人生が始まっているはずです。……お元気で』

 「はい、ありがとうございます。無事健康に過ごし天寿を全うしたいと思います!」


 そうして、光が視界全てを覆い、体の感覚が一切無くなりーーーここで意識は途絶えた。

まずは転生する理由から。

こちらはプロローグ的なものとなります。

ちょっとくどかったと自分でも思いますが、主人公が『幸せな人生を送りたい』と言う理由を少しでも読んで理解していただければと思って書きました。

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