第2話 泣く男
どうやって書いていたのか忘れてしまいました(笑)
一応ストーリーは考えたんですが、文にするのが難しいです!
ってことで、2話目どうぞ!
道に迷った僕は、花音に手を引かれながら目的地へと向かう。
来た道を多少ばかり戻り、電車に乗るために駅へと向かっている途中。
どうやら行き過ぎていたらしく、若干恥ずかしい。
超絶の美少女である花音に手を引かれる僕は、嫉妬と羨望の視線を向けられるが、むふんと胸を張り堂々と歩く。
歩くこと十分ちょっと。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ちょ、ちょっと花音……休憩しませんか?」
僕は息も絶え絶えに花音に言う。
手を繋いでいない右手を膝に付き、深く息を吐いて呼吸を整える。
「お兄様。もうすぐですよ」
「もうすぐって……あれ?」
そう言われ、目の前にある駅にしては豪華な建物を見る。そして周りを見渡し、違和感の正体に気付いた。
制服を着た少年少女しかいないのだ。
僕は花音に聞く。
「ここは?」
「駅ですよ?お兄様」
呆れたように僕を見ながら花音が言う。
「はあ……ちゃんと説明しましたよ?」
「何をです?」
「ここからは、専用の電車に乗って学校に行くんですよ?本当に覚えていないんですか?」
「あ、あー……聞いたような」
あはは、と花音から顔を背けながら笑う。
そんな僕に花音がため息を吐く。
花音がその話をしたのは、朝食の時だった気がする。ご飯を食べながら、スマートフォンを片手に、ゲームをしていたから、聞き流している可能性が高い。
それに学校なんて行きたくない。にもかかわらず、あのクソ親父のせいで……なんで、この僕が今更学校なんて行かなくてはならないのか。甚だ不本意である。
「おほん。それで花音。切符とか要らないんですか?」
花音がもう一度ため息を吐く。
呆れた様子が伝わってくる。
「それもお伝えしましたよ?学生証が切符の代わりになります。ほら、行きますよ」
「はーい」
生返事をしながら、再度腕を優しく引かれ、ゲートをくぐる。
少し経つと、緑色の電車が来た。
電車を待つ学生は、友人と話したり、スマホを弄ったりしている。僕は少しずつ気分が悪くなっているのを感じた。
「うぅ、人が多い。花音、帰りませんか?」
「ダメです」
♢ ♢ ♢
僕は花音の膝の上で熟睡している内にどうやら着いたようだった。
「でかっ!なにこれ?」
「学校です。お兄様。異能者育成学校です」
「それで、どこに向かえば?」
「校長先生に挨拶に行きますよ」
さっさと済ませたい一心で花音の言葉に逆らわず、校長室に向けて歩き出す。
「お兄様、こっちです」
「……」
まるでどこかの城のような建築物にうんざりとした表情をしたまま、校内を進む。
あまりに広すぎて、移動するのも一苦労だ。
校長室に向かっている最中、気になったことを聞いてみることにした。
「そう言えば、ここはどこにあるんです?」
「人工島です」
花音の話によると、異能者育成学校と言うのは、人工島の上にあるらしい。そもそも異能と言うのは、人によっては、大規模破壊が可能なため、街に隣接していると練習さえ迂闊に出来ない。そのため、人工島は色々と都合がいい。
それに、校舎だけでなく、他にも何に使うのか分からない建物も見えるし、森みたいなところも見える。
ただただ圧倒されながら、早く着かないかなあと思っていると、一際豪奢な扉が見え、『校長』とラベルが貼ってあった。
僕は軽くノックをして、しかし返事を待たずに扉を開け、中に入る。
「へ?」
そこには、一人の男性が深々と頭を下げながら跪いていた。
微かに肩が震えている。
扉を開けると、体を震わせた男性が跪いているとか、ホラーでしかない。ドン引きする僕に、その男性は話しかけてきた。
「ようこそ我が学園へぉぉおおっ……」
「な、なんです?」
「貴方様を迎え入れることが、で、出来て光栄ですぞ!!!」
どうやら、涙を流しながら感動しているみたいだ。
え、普通に気持ち悪いんだけど。父上やらこの男性やら、どうして僕の周りには泣く男が多いのか。
男の涙なんて鬱陶しくて気持ち悪いだけなのに……。
バッと顔を上げ、涙を豪快に流しながら、席を勧めてくる校長先生。
はて?この人どこかで……。
「私は真田重蔵と申します」
「あ!前にアメリカでお肉奢ってくれた人!」
「お兄様、そんなことされてたんですか?」
花音の呆れる声を聞きながら、どうにかこうにか記憶の中から探し出した。
ちょっとした用事があってアメリカに行った時、迷子になって、その時であったのがこのおじさんである。
向こうは僕のことを知っていたらしく、高級焼肉を奢ってくれた、とてもいいおじさんなのだ。
そして付け加えると、この国に六人しかいないSクラスの異能者なのだ。そんな彼がこの学園の創始者なのだ。国からの支援、そして本人の莫大な資産、実力をもって、若い異能力者のための学校を設立した偉い人なのだ。
「言っときますけど、僕は――」
「言われなくとも分かっております。貴方様がここにおられることは口外しない。そう言う契約です」
「結構。だけど、僕としては、あまり意味のあることだとは思わないけど、念のためにですが」
僕がここにいると知れば、ちょっくら行ってくるとコンビニに行くような気安さでテロられることがある。
実際、過去そう言ったことが何度かあった。
僕の言葉に、校長先生は苦笑しながらも否定しない。本当に力のある者たちは、情報をいくら規制してもどこからか手に入れてくることを知っているからだ。
「それで――」
何か話そうとした校長先生は、ノックの音を聞き、僕から視線を外し、入りなさいと一言言う。
扉を開けて入ってきたのは、二十歳程の若い女性だった。
「あなたが水篠零くんと花音さんね?それでは校長先生、二人を連れて行きますね」
「え、ちょ」
有無を言わさず、行動を起こす女教師に校長先生が慌てる。
ほら早く、と急かすような視線に、花音と視線を交差させ、同時に立ち上がる。
「それじゃあ、校長先生失礼します」
僕たちが立ち上がったのを確認すると、一人でさっさと出て行ってしまう。
「あ、あの……」
「はい?なんでしょう?」
「っ、お手柔らかにお願いします」
僕のにっこりした顔を見た校長先生は、頬を引き攣らせそうお願いしたのだった。