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8話「プリムローズというところ」

「見えてきましたよ。アレがプリムローズです」


 ドヤ顔で指をさしているハナに、朝いたんだから知ってるよとツッこむ元気はなかった。

 なぜなら、、、


「と、遠くないですか?」

「ですよねぇ。うちの寮、遠いんですよ」


 朝も感じたが、本当にこの寮、遠い。校舎まで歩いて、軽く30分はかかる。

 というか、校舎と寮の間に森があるという時点で、どう考えてもおかしい。

 元の身体ならまだしも、少女の体では十分に疲れる距離だ。


 古いレンガの家は、森に囲まれた、空き地というか丘のような場所に、ポツンと一軒立っている。

 外壁に蔦が這っているのが、その古さを物語っている。

 正面にある重く大きな木の扉を開けると、広いリビングがある。

 その椅子に腰掛けると、一息つく。


「疲れましたよね」


 そう言って、ハナは一杯の水を差し出してくれる。

 それを一気に飲み干す。


「ありがとうございます。それにしても、なんでこんなに遠いんですか?」

「なんでこんなに離れた場所に、寮を建てたのかは知らないんですけど、この寮は、昔からあって」

 

 まぁ確かにずいぶんと古そうではある。


「罰ゲームなんですよね」

「罰ゲーム?」

「校舎の近くに、大きな寮がいくつかあったでしょ? 最初はあそこにみんな入るんです。でも、定期試験の結果によって、その度に部屋が変わるんです」

「そんなシステムが」

「成績上位者は、大きな個室。その下が小さな個室で、下位者は二人部屋や四人部屋になります。そして、、、」

「そして?」

「なにか、問題のある生徒は、このプリムローズに送り込まれます。通称「雑草寮」って呼ばれてます」

「雑草寮、ずいぶんひどいですね。せっかくプリムローズなんて可愛い名前もあるのに」

「プリムローズって、ローズって言ってるくせに、バラじゃないですからね?」

「バラじゃないんですか?」

「そうです。ソーンブリムの生徒は、大きく立派なバラの花を守り影で支える荊棘のようなメイドを目指して勉強します。でもここに入れられた私たちは、その荊棘にもなれない、隅っこに咲く、小さな花くらいにしか思われてないんですよ」

「そうなんですね」


 だから、ハナがヒックス先生にあんなに邪険にされていたり、ハナが俺を引き取りたいと言った時に、あれほど驚いていたのか。

 ここに来るって選択は、もしかしたら間違えたかもしれない。


「じゃあ、ハナさんは何か問題があるんですか?」

「ハナでいいですよ、クレアさん。そうですね、成績が悪いのと、遅刻グセですかね」


 あぁ、全部じゃないか。

 というか、こんなに遠くの寮に入れられたら、更生どころか、さらに遅刻グセが悪化しそうだが。俺なら不登校になる自信がある。


「私のことも、クレアでいいですよ。では、ここでどうやって生活してるんですか?」

「まぁ、お休みの日以外は毎日学校には行ってますからね。食料は、その時に受け取ります。それでここで調理して食べますよ」

「食堂とかないんですね」

「えぇ、ここには寮母さんもいないですからね。全部みんな1人でやります。でも、向こうの寮でもだいたいのことは自分でやってるみたいですよ。なにせ、みんなメイドを目指していますから。大抵のことは、1人でできる人ばかりですよ」


 なるほど。そういうものなのか。しかし、メイドを目指す学校。まずそこがピンとこない。

 メイドって目指すものなのか?


「それでは、私はそろそろ夕食の支度をしますので、クレアはここで待っていて下さい」

「私も手伝いますよ。これからここの住人になりますし。少しは覚えないと」

「そうですか。じゃあお願いします」

 

 そして俺とハナは厨房へと向かった。


時間や距離などの単位は、現実世界のモノと共通にすることにしました。新しい単位を考えようかとも思いましたが、書きたいのはそこではないので、わかりやすさ重視にします。

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