4話「気が付けば女子寮」
気づけば、見慣れぬ天井があった。
狭い部屋だ。
大人ひとりでも小さいくらいのベッドに小さな机と椅子しかない。しかもそれだけでいっぱいいっぱいの部屋。
「ここは?」
部屋のわりに窓は大きい。外は、広い平原に小川が流れている。その先には森。その森の木々から建物の屋根が覗いている。
自分の身体を見る。
依然、少女のままの姿だ。年齢にして8歳から10歳くらいだろうか。
ボロボロの布切れを羽織っただけの姿をしている。
その下は、切り傷とアザだらけの身体だ。
城を抜け出したあと、隣町まで走って行き、そこで疲れきって座り込んでいるところを、老夫婦に助けてもらった。
そのあと、その老夫婦が街の役人に自分のことを話しているのを聞き、そこで助けを求めようとも考えたが、それはしなかった。
隣町・ウインドミルでも、すでにサンフォードの城が謎の敵によって陥落したことは知れ渡っていて、この街にも攻め込んでくるのではないかと、厳戒態勢が敷かれていた。
今ここで、役人の世話になっても、どこかの病院に入れられ、そのまま放置されるのがオチだ。
そして本当に、サンフォードを攻めた敵がウインドミルまでやってくれば、自分もそのまま殺されてしまう可能性が高い。
俺は、一応逃げ出す時に財布だけは持ってきていた。
少しばかりのお金をテーブルの上に置くと、老夫婦の家を抜け出す。
そしてさらに隣の街まで行くという行商の馬車を捕まえると、それに乗せてもらった。
しかしそれが失敗だった。
その男、あまり良い人間ではなかったようで、街にはいかず、近くの森の中に入ると、俺の財布を奪って、置き去りにしようとしたのだ。
ボロボロの服を着た少女が、それなりの大金が入った財布を持っていれば、そう考えるのもおかしくないのかもしれないが。
俺は、男の隙をついて馬車を抜け出す。
そこからは歩きだ。
川を見つけては水を飲み、果実を見つけてはそれを食べる。
その辺に生えている果実は、食べるところも少なく、苦いものも多かったが。
そして何日歩いたか。
疲れ果てたのか、気を失って、気づいたら今の状況だ。
野犬や、モンスターに襲われて天国行きってことになってなさそうなのが、唯一の救いか。
そんなことを考えていたら、部屋に一つだけの扉が開いた。
入ってきた少女は驚きの表情を見せる。
「良かった。気がついたのね」
「ここは?」
「メイドを育てる学校ソーンブリムの寮の一つ、プリムローズよ」
「ソーンブリムにたどり着いたのか、、、」
人知れず、涙がこぼれた。