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3話「逃走」

 撃ち落とされたモンスターを、ウィルがトドメを刺す。

 さらに、ソフィアは呪文を唱えはじめると、指先から白い光線を出して、また別のモンスターを打ち落とす。

 ソフィアとウィルであっという間に、三体のモンスターを倒してしまった。


「大丈夫ですかアレク様」


 駆け寄ってくるソフィアは、メイド服に身を包んでいるが、そのいつもは白く美しいエプロンは血や泥で染まっている。


「よかったソフィアも無事だったんだね」

「はい、なんとか」

「父上や母上、ミリアは無事なのか?」

「いえ、それが、、、」

「違うのですか?」


 横からウィルが聞く。


「いえ、なんとか私や兵たちでモンスターを引きつけ、お逃げ頂いたのですが、敵の侵攻があまりに早く、無事逃げられたかどうか。私も今、それを探す為に城内を回っていたところなのです」

「そうか、なら一緒に」

「なりません」

「なんで!?」

「私と共に戦っていた兵士たちは皆やられてしまいました。それほどまでにこの敵は強大なのです」

「あいらはなんなんだ?」

「それもわかりません。ヴァーラントの手の者と言われていますが、定かではありません。それに今見られたように、見たこともないモンスターが多数います。まだ何かを隠している可能性もあります」

「そんな」

「ですから、アレク様は今すぐにお逃げください」

「じゃあ、ウィルもソフィアも一緒に逃げよう」

「出来ません」

「なんで!」

「先ほども申しましたとおり、敵の侵攻はあまりにも早い。我々が引きつけている間にお逃げください。いいですねウィル」

「無論、そのつもりです」

「ウィル!」


 ウィルは剣を地面に突き立てると、俺の両肩に手を置く。


「今、あなたはサンフォード伯爵家の生き残りなのです。あなたは無事生き延びて、ウィンドール王都まで行き、国王にそのことを伝える義務があります。そして私たちには、あなたを無事に逃がす義務がある」

「そんな、、、」


 ウィルと代わり今度は、ソフィアがやってくる。

 ソフィアは汚れたエプロンを少しずらす。下に着ている黒い服が、夜でよくわからないが少し濡れているようにも見える。


「先ほど、やられてしまいまして。私にはもう、あなたを王都までお連れする体力は残っていないのです」

「ソフィア、、、」


 ソフィアは胸元からネックレスを取り出す。先には、赤い宝石に棘のあるツタが絡まったようなデザインのペンダントが付いてる。

 そのペンダントを握り締めると、長い呪文を紡ぎ始める。

 握り締めた手の、指の隙間から赤い光が放たれる。

 そしてソフィアは、片方の手を俺の額に当てた。

 身体が燃えるように熱くなる。ちょっと苦しいくらいだ。

 そして自分でも眩しいくらいに、光に覆われる。

 そして、目の前のソフィアとウィルが巨大化する。

 いや違う。俺が縮んだのか。


「これは?」

「驚いた。アレクが少女の姿に、、、」


 ウィルが驚いたように目を丸くしている。


「あなたに禁断の呪文をかけました。姿を変える呪文です。あなたを少女の姿に変えました。この姿で王都まで行くのは大変かもしれませんが、敵に狙われづらくなるはずです」


 俺も驚きのあまり声を失う。手足を見ると、服がかなり大きくなって、袖から手が出ない。


「まずは、私が通っていたメイド学園、ソーンブリムに向かってください。そこに行けば助けてもらえるはずです」


 ソフィアの通っていたメイド学園。どんなところなのか。

 

「これを預けます。これがあれば、わかってくれるはずです」


 そう言ってソフィアは、ネックレスを外すと俺の首に掛けた。ペンダントを見ると、ツタの中にあった赤い宝石がなくなっていた。


「ソフィアさん!」


 ウィルの声に目を向けると、先ほどと同じようなモンスターがまた数体現れた。


「行ってくださいアレク様」

「しかしソフィア。ウィル!」

「いけ、アレク!」


 ウィルの叫び声に、俺は俯き、そして振り向き走りだした。

 靴もズボンも脱げ、それでも俺は振り返らずに、先ほど出てきた隠し通路へと向かった。


「「ご無事で」」


 後ろで、二人のそんな声が聞こえた気がした。


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