2話「城下炎上」
「ウィル、あれ!」
俺が指差した先には、炎に包まれたサンフォード城とその城下があった。
「急ぎましょう」
ウィルの言葉に頷き、城へと向かう。
日はすっかり落ち、夜闇に炎が明るく燃え上がる。
試練の洞窟近くで野営して、明るくなってから帰るつもりだったが、急いで帰ってきたため、ちょうど夜になってしまった。
「待って下さいアレク。あれを見て」
「あれは?」
「すごいモンスターの数だ。それに、鎧を着た人の姿もある」
「あれは隣国のヴァーラント帝国の兵士か」
「そのようですね」
「ヴァーラントはウィンドールと同盟国だろ。なんでいまさら。それにあのモンスターは?」
「わかりません。でも昼間のあのモンスター。何か関係があるのかも」
「関係って?」
「とにかく城下から戻るのはやめて、裏から戻りましょう。城内に行けば、何かわかるかもしれない」
ウィルに促され、城の裏手の方へと回る。
サンフォード城は、崖のように切り立った山を背に建てられ、その下に城下町がある。
一見すると城下町を通らないと城へはたどり着けないように見えるが、実は、サンフォード家の人間とそれに近しい者しか知らない秘密の抜け道があるのだ。
「扉に鍵が掛かってる。誰もここから脱出してないのか」
「わかりません。別の出口から出ている可能性も。とにかく中に入りましょう」
ウィルは剣を引き抜くと鍵を壊す。
そして中の隠し通路を抜け、外へと出る。
城のそばの庭園である。
「城まで燃えている。父上や母上、ミリアは無事なのか」
妹のミリアは今年で13になる。今日は父上、母上と共に城内にいるはずだ。
「行こうウィル。中にまだ残ってるかもしれない」
「やめましょうアレク」
「なんで!?」
「あの火の回りようです。今からじゃ危険ですよ」
「でも!」
「ダメです。私はあなたを危険にさらすわけには行きません」
そこに、甲高い鳴き声が響き渡る。
声の方へと目を向ける。
黒い人型に体に、コウモリのような羽の生えたモンスターが上空に現れた。数は三体もいる。
手には、槍を握り締め、こちらへと襲い掛かってくる。
「なんなんだこいつら」
彼らの攻撃を剣で防ぐ。
しかし防ぐだけで精一杯で、反撃しようにも、上空に飛ばれては手も足も出ない。
「アレク。お逃げください。こいつらは私が引き付けます」
「無理だよウィル。それじゃ、ウィルが」
二体がウィルに襲いかかる。残りの一体が俺の方へとやってくるのを、なんとか防ぐ。
ここで俺が逃げたら、その三体がウィルに襲いかかる。さすがにウィルでも、逃げることすらできないかもしれない。
そこへ、白い閃光が走り、一体のモンスターが撃ち落とされる。
「アレク様、ご無事でしたか!」
「ソフィア!」
そこにメイド長のソフィアが現れた。