「お願いします、勇者パーティーに入ってくれませんか?」「断る」
ノリです。
「な、なぜです!」
とある森に、旅の装束を着た二人と、楽しそうにそこら辺の石に腰かけてる少女がいた。
それに膝をついて、最大限の懇願の体勢にいた四人―――世間では勇者パーティーと言われる、魔王討伐を目的としている1団がいた。
先程声を荒らげたのは、勇者パーティーであり、とある王国の姫様。国民からは聖女と呼ばれ、このパーティーの根幹にいる人物だ。
「あなたが―――――聖剣王がいれば!この勇者パーティーのランクアップも図れます。魔王の討伐だって可能です!それでも、なぜ頭を縦に振らないのですか!アーサー・ペンドラゴン様!」
「その名はやめろ。俺はもう、ただのアーサーだ」
聖剣の乙女に愛されしアーサー・ペンドラゴン。しかし、既に彼の国はもうこの世にはない。
蹂躙されたのだ。ただ一人の例外もない。命からがら、国民のおかげで逃げきれたアーサーと、従者であるモルドレッドだけが生き残り、彼の国、『キャメロット』は滅びの道を辿った。
「俺はもう、モルドレッド以外に何も残っていない。何故わざわざ命を失う可能性―――俺は生き残れたとしても、モルドレッドが死んでしまう運命を歩む必要はない」
断言。必ずそう起こると、アーサーは確信する。理由は、少し離れた場所に楽しそうに座っている少女が原因だ。
「し、しかし、祖国を失ったアーサー様も、魔族には復讐をしたいと思っているはずです!パーティーに入れば、国からも援助しますし、なんなら国の再興できるように手筈を―――――」
「おい、ナターリエ。もういいだろ」
はぁーーと長い溜息をついて立ち上がる赤髪の青年。彼こそが、今代の勇者であるシオンだ。
「そんな腰抜けに頼まずとも、俺と、レーヴァテインだったらやれるって」
「なっ―――バカを言っては行けません!勇者様!少なくとも、今のあなたよりも何倍も――――」
「―――キミが、今代の勇者か」
アーサーの双眸がシオンを捉える。
「名前は」
「シオンだ。シオン・ストラグル」
「シオンか。いい名前だな」
「王よ、そろそろお時間です」
彼のそばに控える美女――モルドレッドが彼に耳打ちをする。
「それに、若干彼女の様子が不機嫌です。恐らく、王に構われてないからかと」
ちらりとアーサーが視線を向けると、いかにも、『私、不機嫌です!』と言いたげな少女が頬を膨らませていた。
「それでは勇者殿と御一行。旅先が幸先であることを祈るよ」
「ま、待ってくださ――――――」
「……ねぇアーサー。私、そろそろ我慢出来なーい」
今まで黙っていた少女が、唐突に声を発した。アーサーに少し黙っていろと言われて黙っていたが、もう我慢の限界だったようだ。
「あなたも正直に言えばいいのに。今回の勇者は実力が雑魚だからアーサーの力が必要だーって!それでもアーサーは首を縦に振らないけどねー」
クスクスクス……と、それはもう楽しそうに嗤う。
「……っ」
「………あぁ?」
それを聞いて、焦るものと怒るもの。
「……おいガキ。今、俺の事をなんだって?」
「だからー、雑魚っていったの。分かる?あなた、腕前だけじゃなくておつむもよわよわなのかしら」
「殺す!」
レーヴァテインを素早く鞘から抜き、一瞬にして少女に近づくシオン。しかし、彼女は動く素振りすら見えない。
「死ねぇぇぇぇ!!」
「行けません!シオン!彼女は精霊―――――」
ガキン!と鉄と鉄が交差する音が森に響く。彼女の目の前には既に、モルドレッドが剣を滑らせていた。
「………この程度ですか」
「………っ!」
まさか止められるた思っていなかったシオンの顔に、モルドレッドの一言で怒りが浮かんだ。
「安心なさいモルドレッド。負けることは万に一つもないけれど、私がいる限り勝利以外の文字は存在しないわ」
「はい。心強いですよオスクロル様」
「どういつもいつも俺様をコケにしやがって………フン!」
「……!」
ガキン!ガキン!と二度ほど、金属音が響き、シオンが後ろへ下がる。
「……決めた、お前は屈服させて、大事な大事なご主人様を叩きのめしてから、目の前でぶち犯してやんよ」
「………気持ち悪いです。一生地獄で反省なさい」
「モルドレッド、オスクロル」
アーサーがとっとと終わらせろの意味を込め、二人の名前を呼ぶ。
「分かりました王よ」
「はいはーい!オスクロルちゃんにおまかせー!丁度あの剣の解析も終わったしねー!」
「ごちゃごちゃごちゃごちゃと………地獄の業火で一生反省してなぁ!」
レーヴァテインから炎が吹き出す。
「燃えしねぇぇぇぇぇ!!」
「オスクロル様!」
「まっかせてー!」
オスクロルがばっ!と手を掲げた瞬間、彼女の後ろに巨大な時計が現れた。
「世界を9回焼き滅ぼしたと言われる破滅の炎。その力は失われ、呪いの魔剣の糧となる!」
「………!炎が!」
レーヴァテインから出ていた炎は、オスクロルが何かを言った瞬間に、出なくなり、ただ普通の剣より切れ味が鋭いだけの鉄塊と貸した。
その代わり――――
「なるほど、これがレーヴァテインの焔ですか」
モルドレッドの剣、クラレントからその焔は吹き出していた。
「な、………なんでお前がその炎を―――」
「王を愚弄した罰です。吹き飛びなさい!」
クラレントが蛇腹剣のように伸び、シオンを剣部分ではなく、ワイヤーの部分で吹き飛ばした。
「……ま、まさかその精霊は」
「気づいたか。流石はナターリエだな」
彼女は精霊。それも、運命改変と歪曲ができるものすごく特殊な精霊である。
先程もレーヴァテインから炎が出るという運命を、炎は全てクラレントのものになるという運命に歪曲させたのだ。
「死にたくなければ、もっと勇者をこき使うことだ。レーヴァテインの能力は返しておく。もし俺を魔族討伐に参加させたいならナターリエ、今度は勇者パーティー抜きで俺に会いに来ることだ。行くぞ、モルドレッド、オスクロル」
「はい、それで、王の唯一の友よ。失礼致します」
「あなたはアーサーのお気に入りだからね。今回は見逃してあげるにゃー!」
「……アーサー様?」
「あぁ………そういえば、久しぶりに合ったから言うのを忘れていたよ。綺麗になったね、ナターリエ」
「…………………~~~~~っ!」