新たな強敵
お待たせして、申し訳ありません。
ダンジョン関連の雇用が始まり、必要な武具や道具の製作に二週間が掛かりました。
必要な武具もそろい、ダンジョン内でのハンター育成を始め、ダンジョン外での狩りや採集といった仕事も始まりました。
これまでとは違い、ハンターでない人たちもダンジョン関連の仕事をするにあたって、護衛を付けるか議論もでたが、現状のダンジョン周辺には魔物の類がいないこともあって、少しずつですが雇用が生まれていきました。
当初の懸念も、実際の仕事が始まったことで、その従事者からの話が町に広まるにつれて、人々の認識も変わって行きました。
ある程度の仕事が安定して行われていく中で、俺たちの仕事も終わりを迎えました。
「うーん、やっとこれで開放されるのかあ。 長かったなあ」
「ふふ、お兄ちゃんも、珍しくがんばってたもんね。 お疲れさまぁ」
今回の鍛冶仕事で大活躍した徹くんは、これでもかと背伸びをして全身のコリを伸ばし、理恵ちゃんからもその働きぶりを労われていました。
そんな田上兄妹をながめつつ、今後の予定を話します。
「みなさん、お疲れさまでした。 今後のダンジョンの探索ですが、来週から始める予定なので、それまではゆっくりしましょう」
「ほう、それは有り難い。 新しく作れるようになった装備を試したいですしね」
「あ、わたしも色々つくれる物が増えたんですよ! 新装備のお披露目、楽しみにしてて下さいね」
「お、俺は休ませてもらうから。 とうぶん鍛冶はしたくないぜ……」
といった感じで、生産職のレベルもあがって、それぞれが自分の武具を揃えるのだとかを話して、来週までの数日間を過ごしました。
◇◆◇
数日の休みを消火した後、俺たちはダンジョンの探索を再開します。
前回、三階の後半まで進めていた探索ですが、ダンジョンの構造が変わったこともあり、改めて三階層からの探索となります。
なので今回の探索は、三階層の全容を調べるとともに、ある程度そだった職業の底上げをする為に、それぞれが必要なステータスにそって、まだレベルの低い職業へジョブチェンジします。
まず、打撃武器から槍へと持ち替えた徹くんが騎士へとクラスアップしたことにより、俺はレンジャーへと変わり、理恵ちゃんはより魔導の道を進める為にも、木村さんとのジョブチェンジを行いました。
現状、魔導師までに至った理恵ちゃんですが、その先にある『賢者』となる為に僧侶に。
そして、木村さんは僧侶の先にある『神官』となる為に、魔力を高める修行の一環で魔術師となりました。
前回までとは違い、火力は落ちますが、この先の成長を見越しての修行と割り切り、このパーティー編成となった次第です。
まあ、ダンジョンの構成が変わったことで、内部での立ち回りで動きやすくもなったという理由もあります。
「このプレートメイル、思ったより動けるよ。 さすが経験者がつくる物は違うよね」
「うん、まあ色々と改良は進めてたし、実際の着心地は動いて確かめた方が確実だよね」
徹くんが装備するプレートメイルは、かつて俺が着込んでいたフルプレートメイルとは違い、動きやすさを重視したプレートメイルとなっています。
「わたしのこのローブはどうです? MP増強、回復力アップ仕様に仕立てたんですよ」
「私も、理恵ちゃんに負けないようにと、魔力増強、火属性アップに付与をもってみました」
また、理恵ちゃんは木村さんから渡された僧侶用の杖を装備して、自作した白のローブを披露しています。
木村さんも、杖を理恵ちゃんに預けたことで、自分用の魔術師装備を掲げて、誇らしげに微笑みました。
◇◆◇
三階入り口の階段まえで、俺たちは装備を整えます。
一、二階とブロックの通路を足早に通り、ほぼ手ぶらで到達したので、仕舞っていた細かな装備品をインベントリから渡し、最終確認をする為です。
三階層には大蛇がいる可能性も高いので、かさばる例のパイプは俺が持つとして、一応打撃武器を徹くんに渡しておきます。
「うーん。 やっぱ、大蛇は出るのかな?」
「そこは、これから調べるんだし、なんとも言えないわね」
「アイスバレットくらいしか出来ませんが、頑張りますね」
何時もの会話もどことなく緊張をはらみ、新しく生まれ変わったダンジョンの探索が始まります。
「まあ、大蛇が出たとしても、対処方法は変わらないので、なんとかなるでしょう」
「そうかなあ……?」
「そうだといいね」
「き、緊張してきました」
実際、一、二階に出現するモンスターは変わらず、難易度も変わってないので、あまり心配はしてなかったのですが、レベルが低い職業なので、それぞれの不安は致し方ないといえました。
その後、三階層の探索は順調に進み、マップを作成しながら経験値を稼ぎ、レベルもしっかり上がって行きました。
結論からいうと、三階層に居た大蛇はいなくなり、代わりに黒猫が現れ、あれだけ居たネズミたちが、何処にも居なくなっていました。
「はあ、カワイイのに……」
「どこがだよ! いててて……」
「ははは。 徹くんは、引っ掻かれ続けてましたからね」
大蛇は大蛇で苦戦してましたが、新しく出現した黒猫は黒猫で、やはり苦戦となりました。
「いやあ、あそこまですばしっこいと、中々当たらないよね」
「「「たしかに」」」
暗がりからすっと現れては、しゅたたたっと走りまわり、黒い体毛が保護色となって襲ってくるので、魔力感知での発見も徒労におわり、わずか数体しか捕捉出来ませんでした。
探索の結果、三階層の構造は石の壁と床が半分に、中盤からは少し広めの通路が洞窟タイプへと変わり、手前のエリア南東部に石炭の採掘現場を数カ所見つけ、その日の探索を切り上げました。
そんな帰り道に、我々の頭上に黒い影がせまり、とんとんとんと、軽い衝撃が奔りました。
そして、通路に佇む黒い影は我々を背にして、首だけをまわして鳴き声をあげます。
『にゃ〜あ〜ぉ〜!』
どうやら、我々を待ち伏せしていた様子で、『まだまだだな、おまいら!』と言わんばかりの雰囲気を醸し出していました。
「や〜ん! かわいいよぉ!」
「くっ!! ぬおおおーー!」
「「あははは……」」
とまあ、帰り道でも暗闇から現れては、田上兄妹を翻弄する黒猫は我々の前を悠々と通り過ぎ、徹くんを煙に巻いて立ち去って行くのでした。
色々と忙しく、体調をくずしたりと、大分あいだをあけてしまいました。
その合間で、今後の展開や筋書きを見直したり、終盤にすすむ道筋を考えたりとしていました。
まだ暫くはこのまま続きますが、本年中には終わらせるつもりでいますので、よろしくお願いします。
次回作も……(以下略




