新たな職業
サバイバル 10日目
達也は、今日も朝早くから行動に移る。
今日の目標は、木工細工を上げつつ、新たな職業を獲得することである。
現在、道具を色々と作っては見たものの、それを扱う職業が取得出来ていないからである。
前にも、職業に就いても余り変わらないという事があったのだが、あれは間違った認識であった。
当初、設定した職業に就いた時には、その職業に必要なアイテム、または装備を所持していなかった為であり、剣士が槍を装備してもその力が発揮されないのと同様に、その職業に対応可能なアイテムを手にしてないと、力が発現されないのであった。
オノを手にした達也は、その時点では木こりにもなれるし、戦士にもなれた事になる。
石のオノを所持している時に、職業を木こりを設定していた事で、ステータスがその分だけ上昇していたという状態である。
試しに、石の剣を装備し戦士にして剣技のスキルを設定したところ、HPが20、力が15まで上昇している事が確認された。
この事からも分かる通り、達也は道具と武器を可能な限り作っていたのである。
そして、新たな職業を獲得するべく、素材を集めては多くの道具を作って、破棄を繰り返すのだった。
いわゆるレベル上げである。
道具や武器を作れば、それぞれの職人のレベルが上がるし、レベルが上がればそれぞれの上位職や、関連の職業が派生して行くので、取り敢えず拠点と職業を得るための道具を作成する事が最重要となっていったのである。
「えっと、次は大工だが…… あー、ノコギリやカンナ、あとハンマーとかノミも必要か。 忙しいな、おい!」
そんな独り言をだだ漏れにする達也は、実に楽しそうであった。
現在までに作れたものは、以下のようになる。
石製のオノ、ナタ、ピッケル、ツルハシ、剣、槍、ナイフ
木製の桶、うつわ、皿、コップ、スプーン、フォーク、箸などである。
その他にも、拠点となる場所と小屋用の木材を置く為の土地は整地済みの状態になっているので、あとは建物を建てる大工の職業待ちといったところである。
サバイバル 12日目
あれから試行錯誤しながら、様々な道具と武具を作ったが、結局得られる素材が足りない為に大工の職業は得られなかった。
理由としては、鉄の入手が困難であったからだ。
石のノコギリやノミは作れたのだが、石ではカンナのレシピすら現れず、お手上げとなったのである。
「やっぱ、鉄は山とか行かないと無いよなぁ」
などと呟きながら、達也は完成した小屋の中で作業中である。
この小屋はなぜ完成したのかは、木材を加工するだけなら、木工職人で板を作れたからである。
ただ、大工ではないのでしっかりした建物ではない。
いわゆる掘っ立て小屋である。
雨風を防げる様になっただけでも十分かなと、達也は満足している。
で、その掘っ立て小屋の中で何をしているのかというと、床に座ってごりごりとある物をすり潰している。
達也の現在の職業は薬師で、森の中で見つけた薬草を、回復薬へと加工している最中である。
先日、ダメージを負ったのに回復する手段がなかった達也は、森の中での活動中に色んな植物を調べて、薬草を発見していたのである。
他にも植物で有用な物はないかと探しては、毒消しや薬品の材料となるキノコや苔なども回収済できたのであった。
体力だけを回復するなら、薬草を食べるだけで回復はするらしいが、HPを回復させるには薬草を加工するしかないという事実に直面した。
達也は必死に考えた。 ゲームでの生産とかも経験がなければ、実際の薬品がどう作られているのかも、分からなかった。
そこで思い出せた事は、理解の実験とかで使った事のある、乳鉢や試験管であった。
取り敢えず作ってみるかと思い、石で作ってみた乳鉢と乳棒を手に取り職業欄を探してみたところ、薬師の職業が選択可能となったのである。
それからは、乳鉢で作れる薬品のレシピを調べて、森の中で素材をかき集め、ひたすら薬品を製造中なのであった。
「んー、草臭いけど我慢だ我慢。 回復薬があれば、狩りに行けるぞ! 肉が待ってるぜー!」
そして、小屋の中が草のニオイが充満する程に、薬草や毒消し草をすり潰していくのだった。
回復薬と解毒薬を作り終えたあと、達也は再び森へと向かう。
そして、がさがさと何かをを探しだす。 手に取ったのは食用の野草であった。
乳鉢をつくった際、ついでに作った石のナベで煮てみようと思ったからである。
そして、小屋の中の箱にしまっていた芋を取り出して、野草と芋を持って河原へと向かう。
河原には、石を加工して積み上げたかまどがある。
達也は、そのかまどに薪と枯れ草を突っ込み火を起こす準備をする。
着火の魔法も、すんなりと使えるようになったのでお手の物であった。
薪に火がついたことを確認した達也は、かまどの上に石のナベを設置する為の石の板を置いた。
石の板に問題がないかを確認できたので、そこに石のナベを設置して飲料水精製の魔法でナベを満たし、そこへ芋を投入。
ナベの状態を眺めつつ、薪を追加しながら湯が沸くのをまった。
しばらくすると、沸々と湯が沸いてきたので、火加減を調節しながらじっくりと芋を茹でる。
そして、十分以上茹でたところで芋を器へと移し、野草を湯掻く準備をする。
芋を茹でたお湯だが、野草の色が変わる程度に湯掻くだけなので問題はないはずだ。
芋を茹でる合間に野草はすでに水にさらしてあるので、水をきってから湯掻くだけである。
水切りをした野草を右手に持ち、石ナベの左ふちから右へと、野草が煮立つ湯の中へ泳がせるように葉をなびかせていく。 そして、野草が色鮮やかな色に変わったところでナベから上げて、用意された皿の上へとのせる。
一枚二枚と野草を湯がいて皿へと盛っていき、ある程度湯がいたところで実食である。
まだかまどの火はパチパチと燃えてはいるが、すでに薪も外した状態なので、その様子を見ながらの食事となる。
達也は両手に器を抱え、河原の大きな石の上に、芋と野草の乗った食器を置くと、そのとなりへと座る。
まずは野草からいただく事にする。
湯がきたての野草はすでに冷めているみたいだったので、さっそく頂くことにした。
達也は手をあわせ『いただきます』と呟き口へと湯がいた野草を運ぶ。
「ん? うめぇ、青臭さが抜けて美味いぞ! やっぱ調理は大事だよな〜 うまうま……」
そう、石のナベとナイフを装備することで、調理人の職業が選択可能になったのだ。
その日の食事から、野草や芋を調理出来るようになって、サバイバル生活がまたひとつ、快適になったなと思う達也であった。
――――――
前島 達也(23)
HP 103/103
MP 14/20
職業 調理人 Lv1
技能 調理
魔法 生活魔法Lv1
装備 石のナベ、石のナイフ、布の服、布のズボン、革の靴、麻の袋
アイテム 石ころ×24個、木の実×6個
素材 野草×2束、芋×8個
料理 湯がいた野草、茹でた芋
今回は2750文字ほどになり、書き上げるのに一日掛かりました。
筆が遅い私ですが、早く書けたので良いかなと思いました。
次回も頑張って書きますので、よろしくお願い致します。