方向性の違い
今週も、よろしくお願いします。
ダンジョンに挑む為の武具や、アイテムの補充とベースキャンプに持ち込む素材を買い込み、俺達はリユートの町をあとにした。
町の運営や人々のくらしには、極力触れませんでしたが、皆が暮らしていく上での仕事には、積極的に関与しました。
具体的には、うちの職人たちが使う、素材や食材の確保の依頼をだしたり、その成果の買取りをマリー商会だけではなく、商業組合に所属した商人たちにも販売することにしました。
いままで、マリー商会に預けっぱなしだった資金は、アイテムの販売だけではなく、運用益もかなりの額となっています。
そんな貯まるいっぽうのお金ですが、組合を通せば町の住人や商人に依頼をだせるので、ここぞとばかりに使うようにしました。
それでも、ベースキャンプで働くハンターたちや、職人たちがつくる様々な武具や道具、ダンジョンから大量に回収された素材の売却益に比べれば、微々たる出費に過ぎなかったことは、ご愛嬌でした。
そして、ベースキャンプに到着したあと、仲間たちと話しあってじっくりと戦略をねり、各自の準備に取り掛かります。
◇◆◇
「達也さんのそれって、新しい職業ですか?」
「うん、まあそうだね」
「つ、強そうなんだが……」
「なにか、騎士って感じがしますね」
俺が新たに取得した職業は『騎士』であります。
戦士系のスキル『槍術』と『楯』のレベルが上がったらしく、重戦士のような出で立ちの装備となりました。
ダンジョン内で戦う為に、丈の短めな槍と手頃な片手剣を用意しました。
防具もフルプレートアーマーとなり、この状態で武器と楯を装備すれば、見た目も騎士といった感じに仕上がっています。
なので、この装備で町中を歩くとガシャガシャと金属が擦り合う音がなりっ放しで、少し恥ずかしくありました。
「カッコいいです! 似合ってますよ!」
「お、俺も、カッコいいと思う。 ぐぬぬ…… これは選択を間違えたかもしれない」
「いやー、頼りがいのある出で立ちと、黒光りする鎧のデザインと相まって、歴戦の勇士といった感じですね」
お三方の言葉に俺は少し戸惑ったが、カッコいいと言われれば嬉しくもあった。
子供のころに読んだマンガにでてきた、黒金の騎士というキャラが頭に浮かび、デザインをまねて作った装備だ。
さすがに子供のころの記憶などは朧気で、まったく同じデザインという訳でもなく、イメージ以外のデザインはオリジナルの装飾を施しました。
正直、あれはどうだった、こうだった、ここはこれ、そこはこうだったと悩み、装飾はどうするかと考えた事が報われる言葉に、嬉しく思わない職人は居ないと思います。
「お、俺も騎士を目指そうかなぁ……」
「ど、どうしたの急に?」
「いや、カッコいいからとかじゃなくてな、ほらあれだよ、あれ……」
「はい? あれとかじゃ、分かんないですけどぉ」
「ふむ、もしかしてロマンとか言いたいのかな?」
「そそ、それそれ! ロマンだよ、ロマン! けっして蒼い鎧に鳥の紋章を付けてみたいな訳じゃないんだよ。 あははは」
「(じー……) 聞いてもいないことを聞かされたし、なにかを誤魔化された気がするよー」
「あっはっは。 徹くんはもしかして、ドラスレ派だったのかい? 私も学生時代にはよくRPGをプレイしていたんだよ。 オンラインだけは、さすがに仕事が忙しくて出来なかったけどね。 そっか、そっか……」
そんな会話をするなか、徹くんの職業についての議論は続きましたが、ダンジョンに到着とあって、その話の続きはまた後日となりました。
◇◆◇
ダンジョン前にある広場に達也たちが到着したころ、ダンジョンマスターである『尾形のりこ』と、『ダンジョンコア』がつくったNPCアバターのまりあに動きがありました。
「ご報告があります。 マスター」
「ん? なにかしら?」
ダンジョンマスターが待機している最下層のとある部屋で、ダンジョンの主とそれに仕えるメイドがテーブルを挟んで対峙していました。
テーブルの上には、ティーカップとお菓子が複数ならんでおり、のりこはティータイムを楽しんでいました。
「はい。 先程、地上にて強い個体が複数現れたもようです。 反応のあった場所を確認したところ、以前ダンジョンに巣食ったネズミどもを退けた個体であると判明いたしました」
「……えっ!? ホントなの? どこどこ? いま、どこら辺にいるの?」
お茶のはいったカップをソーサーに置くと、まりあは報告書を読み上げるような仕草で半透明なパネルを持ち、それを読み上げました。
その報告を受けたのりこは、内容の重要性に気づくまでに少し時間が掛かりましたが、すぐに再起動します。
そして、まりあの持つ半透明のパネルを奪いとり、のりこは自身の目でその内容を確認しました。
「やった! やっと来てくれたのね。 これで助かるわよ、きっと」
報告が書かれたパネルを抱きしめて、のりこは右手を握りしめて小さくガッツポーズを取ります。
「はい、マスター。 ですが、彼らがこの階層まで来るには、時間が必要となるでしょう。 ここは防衛に力をまわし、彼らに資源を与えつつ、外敵たちを倒して貰いましょう」
ダンジョンコアのまりあは、そんな可愛らしくポーズをとる主人に、ダンジョンマスターのお仕事について促します。
「そ、そうよね。 ダンジョンマスターのあたしが頑張らないとダメよね。 よーし、この二年間の勉強の成果を見せないとね。 と、その前にちょっとだけ、どんな人たちか見たいわね……」
ダンジョンマスターはダンジョンの状況を把握して、ダンジョンの方向性を決めるのが仕事でしたが、ダンジョンの細かな設定をできるのはマスターにしか出来ません。
現在は、ダンジョン防衛をダンジョンコアであるまりあに指示を出しているので、侵入者に対してモンスターをけしかけたり、また再配置したりと、ダンジョンの雑務はすべてまりあが執り行っています。
ダンジョンに配置するモンスターを、どの様な種を使い、またどのエリアに置くか、また配置したモンスターの強さをどこまで上げるかは、マスターの仕事であり、またダンジョンのどこに資源や罠を配置するかなど、その細かな内容のすべてがダンジョンマスターである、のりこのお仕事でした。
そんなのりこは、ついこの前に獲得したばかりの機能『監視』の中からカメラを選択して、地上にいる筈の人間たちを観察し始めます。
「……あれ?」
「どうか致しましたか? マスター」
監視用のパネルに映し出された人物に、のりこは息を飲みました。
「も、もしかして、あの人たちは…… たぶんそうよ! あの時の人だ! あの人なら、私たちを助けてくれるはずよ! やったわね、まりあ!」
「は、はい、マスター。 神が遣わした使徒たちは、必ずや外敵たちを排除してくれるでしょう」
主の興奮にまりあは首を傾げるも、その発言を肯定するまりあであったが、当ののりこはまりあを無視するかの様に、監視用のパネルを食い入る様に見つめていました。
のりこが持つパネルの中には、騎士風のプレートメイルを着込む、達也が映し出されています。
「はあ、カッコいいなぁ…… わたしを救いだしてくれる、王子さまだったりして…… キャッ」
自分の発した言葉に頬を染めてモジモジするのりこですが、その側に控えていたまりあは空気を読んでか、一礼したのちに退室して行きました。
まだ夢見がちな主を支える為に、まりあは最善の行動を考え、自身の出来る仕事を今日も行います。
すべてはダンジョンを創造した、神の導きのままに……
ダンジョンマスターの性別?をというか、口調を女子口調へと統一致しました。
ボクっ子路線のことを、すっかり忘れていた作者のせいです。
申し訳ありません。(土下座
以後、気お付けます。




