初めての作成
今週の更新は、今回までとなります。
サバイバル 6日目
雑草や低木の枝を集めて作ったキャンプ地を片付けて、今日も活動し始める。
「よし、今日こそ何かしらの発見をするぞー!」
まだ薄明かりしかない川辺で気合をいれ、最終確認をした後、川沿いを歩きだす。
川沿いには少しずつだが、低木が生えていて木の実がちらほらとなっている。
俺はその実を回収しては、麻の袋へと入れていく。
野草はそこら中に生えているので、回収はせずに歩き続けた。
初日もそうだが、ここ数日の疲れもあってか頑張って歩いても、正直10キロメートル歩いているかもあやしいくらいの移動距離である。
川を見つけた時は嬉しくて思わず走ってしまったのだが、それまでは辺りを警戒しつつの移動であったし、現在も同様に警戒しつつの移動であるからだ。
朝日を背に受けながら移動し、そろそろ辺りも明るくなって、先が見通せるようになって来たところで異変に気づく。
「ん? あれは、森か? はぁ、これは詰んだかもな……」
達也の目線のその先には、川が森の中へと続いている光景であった。
前途は多難であるなと、ぽつりと弱音を漏らしてしまった。
森へと続く川辺を進んで、やがて達也は森へと辿り着いた。
若干やるせない気持ちではあるが、ここは新たな可能性を試すチャンスだと、達也は思うことにした。
ここには川や森がある。 当然、目の前には有り余る素材が存在しているのである。
木や石が大量にあるし、森であるからには少なくとも食材となる物も、今迄よりは調達出来るだろうと期待を膨らませるのだった。
ということで、達也は早速素材の物色を始める。
まずは手頃な石を探そう。 なにせ何の道具もないし、身を守る武器すら石ころしか無いのだ。
達也が向かうのは川辺。 徐に川に入り適当な石を河原へと運び、幾つかの大きめな石に同じ大きさの石を叩きつけ始める。
「ぬおー! これでもくらえー!!」
達也は、段々とその作業にのめり込み、やがて無言となっていく。
なんどもなんども石を叩きつけていると、ゴシャッと石が割れてめり込む音と共に、ハァハァと息をきらせる達也は、そのまま河原へとへたり込んだ。
「ああー!! やっと、割れたー!」
憎っくきあんちくしょうの顔を思い出しては投げつけていたので、夢中になっていた分達成感が心地よかったのであった。
水分補給をしながら休憩し、ひと息ついてから割れた石を物色する。
大きな石はどかして、小さく割れた石の中から、使えそうな鋭角な石の欠片が数十個回収できた。
「結構、いい感じに取れたな。 次は、柄になる木材と植物のツルだな」
ぶつぶつと呟きながら、さらなる素材を求めて森へと向かう。
森の中は思ったよりヒンヤリとしていて、今着ている布の服だと肌寒く感じた。
「んー、こりゃ何かしら着ないと寒くて進めないかもしれん」
川の近くを歩く予定も考えて、防具も視野に入れて何かしら作れないかと、必要な素材を探すことにした。
森の中を歩き回り、薪も含めて木材を担いで森の外へと運び出す。
「ふう、思ったより集まったな。 これだけあれば何とかなるだろう」
森を出た場所から川辺へ向かい、集めてきた木材を河原におろして汗を拭う。
空を見上げると、日もだいぶ傾いているのか薄暗くなってきていた。
「そういえば、飯も食ってなかったな。 今日はこの辺にしとくかな」
あいも変わらず曇り空で、薄暗い日中になれて来たとはいえ、暗くなった森には入るのは流石にないなと判断したのであった。
ちゃんとした寝床が欲しいが、今は腹ごしらえをする為にも先ずは焚き火の用意をしようと、集めてきた木材の中から薪を選びだし火起こしの準備をする。
河原の石を使って焚き火を囲む様に積み上げ、簡易的な竈をつくってみる。
うまく出来るか、ドキドキしながら薪を並べて焚き火を開始する。
「おお! あったけー。 これなら、もう凍えることはないな」
これまでは、燃えそうな低木の枯れ枝や枯れ草を集めて暖を取っていたのだが、簡易的な竈は予想を超えた暖かさを与えてくれたのでホッとした。
「燃やすものに困らないというのも、有り難いことだったんだな」
異世界に転生して、現代社会の文明の有り難さを、存分に実感する日々であった。
帰る家があったり、暖かな部屋や食事、待ってくれていた家族、仕事で疲れていようが心休まる暮らしを送れる事が、どれの程贅沢であったのかを思い知る日々でもあったのだ。
「さてと、作って見るかな」
達也はオプションコマンドを実行し、作成コマンドにて道具作成を選択する。
「えっと、確かツールだったかな? お、あったあった」
作成コマンドの道具作成欄には、ツール作成があって、そこには様々な工具のレシピが表示されていた。
達也が選んだのは、石のレシピ。 その中の石のピッケルと石のオノである。
レシピにある素材である、石の欠片と木材、それと森の中で見つけた植物のツタを用意して、作成コマンドを実行する。
「おお! マジか……」
作成コマンドを実行した直後、用意した素材どうしがみるみると形を変えつつ、やがて一つの形となっていった。
「やべえ、なんだこの謎技術!? まるっきりゲームじゃないか! 魔法もだが、便利すぎんだろこれ!」
さっきまで、現代社会の文明や暮らしの有り難みに、しんみりしていたのがまるで嘘のように、テンションがバク上げとなる達也であった。
――――――
前島 達也(23)
HP 100/100
MP 20/20
職業 なし Lv1
技能 なし
魔法 生活魔法Lv1
装備 布の服、布のズボン、革の靴、麻の袋
アイテム 石ころ×20個、野草×10束、木の実×12個
素材 石の欠片×25個、木材×15本、植物のツタ×6本
道具 石のピッケル、石のオノ
次回の更新は、25日の0時となります。
次週も、よろしくお願い致します。
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