サバイバル開始
本編の始まりです。
よろしくお願い致します。
俺の名は、前島 達也。
年齢23歳独身、身長174センチ体重62キロと、何処にでも居そうな男というのが、俺だ。
そして、ただいま現在進行形で大ピンチである。
前回までのお話を読んで貰えていたら分かると思うのだが、あえてもう一度いわせてもらおう、大ピンチなのである。
「くそー、なんもねぇじゃねえかよ!」
異世界に転生した場所は、ただの草原。 どこにでも在りそうな草原かといえば、全力で否定させて貰おう。
こんな怪しげな草原など、ゲームかアニメの中にしか俺の記憶にはないのだ。
と、取り敢えず落ち着こう。
見渡す限り草原だし、すぐにどうこう危険と向きあうことは無いはずだ。
「そ、そうだ。 まずは何が出来るか調べよう」
俺は声に出しつつ、己に言い聞かせる。
えっと、『ステータス』だっけか?
達也は、ゲームでお馴染みのコマンドを思い出して念じてみる。
すると、ピロンと電子音が頭の中で聞こえて、目の前にステータス欄とコマンドが現れた。
「おお! 懐かしいな、おい!」
達也にとって、目の前に現れた表示は、子供の頃友達の家で遊んだ家庭用ゲーム機のゲーム内の表記であり、十数年ぶりに見た表示であった。
なにせ、貧乏な家庭で育った達也にとって、ゲーム機など無かったからである。
勿論、自身でお金を稼ぐようになってからも、ゲーム機やゲーム自体を買おうと思った事はないし、プレイする機会すら無かった為である。
「えーっと、話す、アイテム、調べる、オプション? んー…… なんだこれ? まんまゲームじゃないか。 どうなってるんだ?」
これってドラスレだよな? んー、取り敢えず片っ端から調べるか。
などと思いつつ、達也はコマンドを押して何が出来るかを調べだした。
ステータス画面から、各コマンドに対応した画面へと切り替わるが、今のところ出来る事はなかった。
話すコマンドは相手が居ませんと表示されるし、アイテムコマンドは持ち物が無いので空欄しか表示されない上に、調べるに至ってはブブーと電子音が鳴るだけであった。
最後の希望と思いつつ、唾を飲み込みオプションを押してみた。
「おお…… おお! 多くね?」
オプションを押してみると、そこには各種設定のコマンドと図鑑なるものが表示されていた。
いったいどれ程の情報量があるのか見当がつかないくらい、細かな設定項目が出てきたのである。
スマートフォンのようにスライドさせて調べても、かなりの量なので必要と思われる項目を調べまくった。
約五分ほどかけて様々な項目を流し見した後、取り敢えず必要なコマンドは理解した。
まず現時点で必要そうな、職業、技能、魔法、作成など使えそうなものを選択して、さらに出来そうな事を洗い出して行くことにする。
まずは職業だが、武器や装備が無いので選択する意味がないようだった。
戦士や武闘家、僧侶魔法使いなど選択しても何も変わらず、技能に至っては職業ごとに選択肢が別れていて、使用できそうなものはなかった。
要するに、現時点においては殆ど選択肢が無かったのである。
あと図鑑のにおいては、タルタキア草原とかいう現在地の名称が載っていただけである。
「こりゃ、まいったな。 どうするか……」
その後、色々とコマンドを選択して何かないかと探したところ、初歩の魔法と作成コマンドを使える事が分かったくらいである。
◇◆◇
俺が、この異世界に転生してから五日が経過した。
現在、俺は草原を南下した地に川を発見して、その川を下流へと移動中である。
なんとか人里に辿り着けないかと思ってはいるのだが、かれこれ三日間の移動をしているので、不安と焦りで疲労がハンパない状況である。
食料と水に関しては、初歩の魔法に生活魔法があったので、川の近くで採れる野草や木の実を取ったりと、なんとか凌げてはいた。
とくに生活魔法の飲料水精製や着火などは、非常にありがたい魔法であった。
いやあ、魔法って便利だね。 出来れば鍋とかの道具があれば、キャンプも出来そうな気がする。
あれから、他にも判明したことがある。
なんと、野草や食べられる木の実などが図鑑に乗っていたのである。
その効果は絶大で、草花や木の実を手に入れ、調べるコマンドを使い調べるだけで、その詳細な情報を図鑑が表示してくれたのである。
当初は、なんともしょっぱい機能だなと高を括っていたのだが、川を発見してから二日目の終わりに何気なく図鑑を覗いてみると、なんと川の名称と周辺で手に取った事のあるアイテムの名が、図鑑に載っていたのであった。
それからは、試行錯誤を経て手当たり次第に手に取って調べまくり、食べられる物をかき集めては、それ迄の空腹を満たす為に食べまくるのだった。
そして、図鑑の偉大さを知ったことで、俺の中では調べるコマンドと図鑑は、先生となっていったのであった。
――――――
前島 達也(23)
HP 100/100
MP 20/20
職業 なし Lv1
技能 なし
魔法 生活魔法Lv1
装備 布の服、布のズボン、革の靴、麻の袋
アイテム 石ころ×15個、野草×6束、木の実×2個