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異世界転生契約

引き続きプロローグとなります。

次回より本編となります。





『はいはーい、受付は空いているところからならんでね〜』


 神との質問タイムが終わり、現在は異世界に転生する為の説明と手続きをする為に、各所に設けられた施設のゲートに入る為の行列が出来ている。


 達也は、皆が施設に入って行くのをただ眺めていた。


(はあ…… なんでこんな事になったんだろ?)


 そんな事を思いつつ、行列を眺めているのであった。


『なんだい、まだ並んでないのかい? こんなところでぐずぐずしてても、良いことは起きないぞ、勇者くん』


(あんたに言われたくないんだが……)


 神は、落ち込んでいた達也に声をかけたのだが、それどころではないと俯くのだった。


 なぜ、こんなやり取りをしているのかというと、それは質問タイムが終わった後に聞かされた、転生先の世界の現状を聞いたからであった。



 剣と魔法の世界、アーストエルド


 人や獣人、魔人といった様々な種族、魔物や魔獣達が跋扈する世界であり、それぞれの生存をかけた戦いが繰り広げられている異世界なのだ。


『君は、なかなかに見どころのある人材だとボクは思ってるんだ。 神であるボクに意見を述べて、皆にやる気を起こさせる条件を勝ち取ったんだからねぇ』


 そうなのだ。 達也は、魔物や魔獣といったバケモノが蔓延る危険地帯、そんな危険な異世界になど誰が行きたいと思うのかと、神と名乗る男に食ってかかったのだ。


 だか、神はそんなことはお構いなしに、様々な用意はしていると、達也がとなえる異議を一蹴してしまう始末である。


 この神には何を行っても駄目だと、集められた人々は諦めの表情を浮かべたが、達也はそれでも食らいつき、神に譲歩を迫ったのであった。


 そんな、達也の熱意に神は関心を寄せ、その条件の幾つかは却下されながらも、神から譲歩を勝ち取ったのである。


1 異世界に、転生されたくない者、幼い子供は除外すること。

2 転生を受け入れた者には、生き残る為の能力を与え、本人の意思、選択肢を持たせること。

3 異世界に転生させる場所は、必ず本人の同意のもとで転生場所を選ばせること。

4 異世界において活躍した者には、本人の意思による報酬を与えること。

5 異世界で死亡した場合、本人の意思、同意がない場合はその異世界に転生させることは禁止すること。


 以上が、異世界転生において追加された条件となったのである。




 大半の人々が施設へと移動したあと、達也は行列の最後尾に並んだ。

 すると、並んだ直後に周りの人々からお礼を言われる。


「ありがとう、我々の言いたかった事をいってくれて」

「バケモノの彷徨う異世界に行かなくて済みそうだよ」

「遺された家族に何か出来るかもしれないんだ、頑張るぞ!」

「アイテムボックスとか、チートがあるなら僕にもチャンスはあるよね!」


 などと、達也が交渉により得た条件について、その場にいる人々が、達也の手を取り感謝したのである。

 特に、遺された家族や大切に思っていた人達への報酬の譲渡について、感謝の念で溢れていたことが達也にも予想外のことであった。


 達也は、遺してきてしまった家族に、なにか出来ることはないかと交渉しただけのことなのだが、それは自分だけの思いではなかったんだなと、涙を流して感謝を述べる同士と、その思いを分かちあえたのはすごく嬉しかった。

 そして、家族の為にも頑張ろうと新たに誓う達也であった。




 達也が施設に入り、異世界転生に関する説明を受ける為に、空いている受付へと向かうと、そこには神を自称する男が座っていた。


『やあ、いらっしゃい! やっときたね。 結局、君が最後になってしまったよ』

「えっと、すみません……」


『じゃあ、さっそく説明をしようか、そこに座って』

「はい、よろしくお願いします」


 着席を促された達也は、受付カウンターの前で一礼をして、設置されている椅子に座った。


 神と対面しながらの説明は気分的に緊張はしたが、その内容についてはシンプルであった。


 転生先の異世界は、魔神の使徒の侵攻によって一度は滅亡の危機に陥った。

 だが、神は自身の眷族と権能を使い、その侵攻を退ける事に成功。

 しかし、魔神の使徒たちの抵抗も激しく、ダンジョンの奥深くに封じ込める事しかできなかったのだと。


 現在、その封印も徐々に弱まり、魔物たちが溢れつつあるとのこと。

 そこで、現地の人々を使いその魔物たちを駆逐すべく神託を授けたのだが、魔物を封じたダンジョンが深過ぎて一進一退となっているとのこと。


 この情況を打開すべく考えていたところに、他の世界の大量の魂が天界にたどり着いたとの話を聞き、今回の異世界転生を決意したとのことだった。


 達也はその説明を聞き、なんとも安直で身勝手な考えであるなあと落胆した。

 でも、この神にしたら自分の眷族や権能を使い、なんとか自分の世界の人々を救うべく、強がってはいるが必死なんだろうと、達也は思うことにした。


『とまあ、大体の説明は終わったんだけど、もういいかな? いいよね!』

「はい?」


 神は不気味な笑みを浮かべ、達也の顔を覗き込むように話す。

 どこか楽しげな雰囲気なのだが、目が笑ってないことが不気味であった。


『まさかここに来て、いまさら不参加などと考えてたりしてないよね』

「え、ええ家族のこともありますし、それは……」


 神のその言葉の裏には『君だけは逃さないよ』と、達也にはそう聞こえたのである。


『そうかい、それを聞いて安心したよ。 勿論、君の活躍次第でだけど、君のご家族にも報酬は届けるつもりさ』

「あ、ありがとうございます……」


 神は、達也の異世界転生に異議がない事を確認し、安心したと言いつつも、その身から溢れ出す悪意が威圧感となって、達也の背中に悪寒が走る。


『それじゃあ、同意もとれたことだし、この書類にサインを貰えるかい?』

「は、はい……」


 達也は今更ながら、この神を自称する男に対して信用出来ない人物であったと、後悔するのであった。


『うん、これで契約は完了だね。 それじゃあ、いい旅になる様に、転生先を少しだけ良い場所にしておくから、頑張ってくれたまえ! フハハハハハハ!!』

「えっ!?」


 神は、書類にサインがされたことを確認すると、突如立ち上がり達也に手をかざすと、次の瞬間あたりは光に包まれ、そのまま有無を言わさずに、異世界転生が開始されたのであった。


 達也は最後の最後でしてやられたと思ったが後の祭り。 神の悪意に満ちた笑みと、その笑い声を聞きつつ異世界に旅立ったのである。




現在、書き溜めをしつつの投稿ですので、基本土日0時からの予約投稿をする形で更新しております。

毎週の予約投稿の話数によって量が変わると思いますが、よろしくお願い致します。

誤字報告も、よろしくお願いします。



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