神と名乗るもの
前回に引き続き投稿します。
よろしくお願いします。
達也が、異世界に転生することになった経緯を、皆さんに説明しましょう。
それは、地震により建物が倒壊し、達也が亡くなった時点から約二カ月が経った頃のことです。
―― ―― ――
そこは時と次元の間に創られた空間、達也達はそんな何もない空間で目を覚まします。
「うっ…… ん、はぁ…… あ、あれ? ここはどこだ? なにが起きた? こ、これは……」
達也は目を覚まし、自分の置かれた状態に気づく前に、たくさんの人達が宙に浮いた状態で集まっていることに気づきます。
(な、なんなんだ? 何が起きているんだ?)
そこには、たくさんの人達が白の衣をまとい、中にはぼろぼろのスーツ姿の人や、身体の一部がなくなっている人達も、かなりの人数で存在しています。
中には学生らしき若者や、小さな子供とその母親らしき人も居るし、泣き叫びながら母親を探している子供たちの声も聞こえてきます。
「そ、そうか、地震が起きたんだったな。 お、俺は、し、死んだんだな……」
達也がそう呟くと、周りにいる人々もその事に気づき始めるのでした。
薄暗く、どこまでも白く天井や床すらない、そんな場所に集められた人々の目が覚めてから、どれ程の時が経ったのでしょう。
達也を含め、たくさんの人達は一頻り騒ぎ、嘆き哀しみ泣く人達ですら、次第に沈黙へと変わっていきました。
すると、そんな静寂のなかを何処からともなく若い男の声が響きます。
『はーい、はいはいはーい。 そろそろいいかな?』
(なんだ?! だ、誰の声だ?)
一瞬にして静寂を打ち破り、人々は得体のしれない声に恐れおののきます。
『あー、あー、静粛に。
えー、まずは自己紹介をしようかな、ボクはとても優秀な神様で、名をゼ〇〇…… ゼ、〇〇ス…… ちっ、まあいいか。 とにかく偉くて、優秀でカッコいい神様ということだ』
(ん? ゼウスって言いたいのか? なんか、ピーで規制されてるんだけど)
ピーという音で自己紹介を邪魔され、若干苛立つ神を自称する男であったが、達也は名乗りたかったであろう名前は、全能の神として有名であったと記憶していました。
(嘘をつくと伝わらないとかなのか? いや、ゼウスの名を語ろうとしたからかな? 威厳もないし、こんな軽薄な言動だしな、偉い神様がくるとか、あり得ないよな)
達也もだが、ここに集められた大人たち全てが、この自称神と名乗る男を信用出来ないと思い始めているのでした。
『さて、ここからが本題なんだけど、気付いてる人も多いと思うんだよね。 そう、君たちは全員死んでしまったんだ』
神を自称する男は、事の大きさに配慮もせず語り始めます。
『実に残念だ。 他所さまの世界とはいえ、あまりにも突然に命を失ってしまったのだからね。 うん、実に残念だ』
神と名乗る男からの無配慮な物言いに、人々から不穏な空気が漂ってきます。
『ああ、だからといって不安にならなくても大丈夫だよ。 そんな君たちに、ボクは朗報をもってきたんだよ』
神は、人々の不安が増大した空気を読んだのか、明るい口調でさらに話し始めます。
『なんと、今回の災害で亡くなってしまった君たちに、ボクの権限を使って再度生きるチャンスを与える事となったのでーす! はい、拍手ー』
パチパチパチパチーと、なんとも場違いな盛り上げ方で、さらなる不安が場を支配していきます。
『あれ〜? ボクの言葉が信じられないのかな? でも安心していいよ。 ボクは優秀で、優しい神様だからね。 分からないことは何でも説明するし、多少のわがままも我慢してあげるからね』
微妙な空気のなかで神がそういうと、人々は顔を見合わせて手を上げて質問を投げ掛けていきます。
自分達がなぜ死んだのか、原因やその詳細、遺された家族やその生死など、大まかな原因はその場で語られ、個人情報に関してはこの後の面談で詳細な資料を渡すと言うことで、話しは進められていきます。
だが、誰もが納得できる死を迎えた訳でもなく、誰しもが生き返るチャンスがあるのなら、そのチャンスを手にしたいと思うのですが、誰しもがある質問をする勇気がありませんでした。
そして、最後となる質問で達也がその手を挙げるのでした。
『はい、ではそこの君、質問はなにかな? そろそろボクも疲れてきたからね、手短にお願いするよ』
「あ、はい。 では手短に…… えっと、生き返るのは元の世界で、という事でしょうか?」
達也のその質問は、誰しもがしたかった質問であり、最後の希望であったのですが、誰しもが言葉に出来ずに飲み込んだ質問でした。
そして、神は待ってましたとばかりに、思わせぶりな態度で話し始めます。
『ふむ、やっとその質問がでたね。 君は勇気があるね〜 だけどー、残念〜 生きるチャンスとは言っても、生き返るとは言ってないし、そもそも死んだはずの君たちが、元の世界に戻るなんて無理なんだよね〜』
誰もが願い、だけど聞けなかった質問の答えは、なんとも無慈悲な答えであり、皆を再度絶望させるだけの言葉となって返ってきたのでした。
次回もプロローグとなり、その後本編の予定です。
一話あたり、二千文字前後ぐらいでの更新予定です。
誤字報告受付中です。
よろしくお願いします。