突然の旅立ち
この物語は、別作品『とあるダンジョンの探索記』と同じ世界でのエピソードをもとにしております。
長くなりそうなので、プロローグ部分を3話の予定です。
この物語は、とある世界から一人の男が、異世界へと現れるところから始まります。
名前は、前島 達也 23歳
身長174センチ、体重62キロ
やや痩せ型で、黒髪黒目の日本人らしき男である。
「くそー、なんなんだよここは…… マジで異世界なのか……」
男が現れた場所は、あたり一面に草がしげった草原である。
一通り辺りを見渡すと、ここがかつて男が住んでいた世界とはべつの世界であると認識できる。
空はやや暗い曇天であり、遠くの空には赤みがかった色で薄気味悪い色をしているし、足元をうめる草はどう見ても正常ではない色合いであった。
―― ―― ――
数時間前まで、達也は会社での仕事が終わらず、残業をさせられていた。
達也が勤める会社は、大手でもなければ有名企業でもないが、ある分野では実績のある会社であった。
毎年、年末になると売れるある物をつくり、それを全国の販売店へと卸す会社である。
他にも、お祭りやイベント関連などで必要な物品も扱っていたり、様々な零細企業の製品を商う、地味に必要な会社でもあった。
社会における近年の人手不足もそうだが、達也が勤める会社は元々人手不足の傾向にあり、現在では社員の高齢化により深刻な状況である。
会社としても様々な取り組みは勿論、福利厚生や賃金の見直しなど手厚くしたりと頑張ったのだが、地味な会社ゆえかまったく人気がなく、面接に来てもらえたにも関わらず辞退される有様であった。
まあ面接に来て、昭和感あふれる社屋でおじいちゃん達が面接するものだから、将来性を危ぶんでも致し方ない事といえよう。
達也がこの会社に入社したのも実家が貧しく、大学進学の金どころか高校の無償化がなければ、高卒の学歴すら貰えなかったからであり、その頃からこの会社でアルバイトをしながら勉強をしてきた事が、正式社員へとなるきっかけであったからだ。
そんなこんなで入社5年目となる達也は、学生時代からも含め色々と良くしてもらい、会社に必要とされていた事もあって、今の現状は本人としても有難く思うからこそ、残業も致し方ないと思っていたのであった。
だが、残業をこなし夜の帳が降りる頃、突如として社屋の窓からびりびりと音が鳴りだし、パソコンのキーボードから手をはなして辺りを見渡したところで、ギシッという音と同時に会社の建物ごと大きく揺れだしたのである。
「「あわわわわ?!」」
「なっ?! で、でかい!!」
「「ひいっ!!」」
「つ、机の下に隠れるんだ!」
突き上げるような揺れと、建物から様々な軋む音と轟音が聞こえてくる中、達也は腰砕けになり机にしがみついて驚愕の叫びをあげたのだが、それが彼の最後の言葉となったのであった。
こうして、達也は異世界へと旅立ったのである。
一話あたり、二千文字前後ぐらいの更新予定です。
今回は切よく千文字となりましたが、次回は二千文字となってます。
誤字報告受付中です。
引き続き、よろしくお願いします。