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所変わって桐葉政府。世間一般からは《紫の霧》をばらまき、化け物を連れてやって来る絶対的な悪人だとされているが。実際はそんなこと無い。寧ろ、化け物と闘っている側だ。
『桐葉政府は絶対的な悪人集団なのです。我々は彼らを…』
ぴこん、と音をたてて、焦茶の髪をポニーテールに結った少女__柊鎖はテレビの電源を落とした。顔にはまさに不満であるとでも言いたげな表情が貼り付いている。
「私たちが悪なのではないのに。」
「お。珍しく柊鎖が怒ってる~。そんなに櫻政府嫌いなんだ。」
憮然として言う柊鎖に赤髪の青年は意地悪そうに言う。テレビでやっていたのは櫻政府の総督__櫻 空梨羽の会見。
「当たり前だよ紅璃!私たちは何も悪いことしてないし!寧ろ悪者は櫻政府!」
「まぁまぁ。落ち着きなよ柊鎖。仕方の無いことさ。だから今は悪人を気取って、好機を伺っているんだろう?あ、そうだ。前の時に捜査した家、あったろ?1件目の。」
「どうしたの?あの家…櫻政府の研究者の家でしょ?」
柊鎖は訝しげな表情を浮かべ、紅璃の方に向き直る。
「否、彼処にあった写真に写ってた子供、昔何処かで見たことあるなぁって。」
「?櫻政府の研究者の子供と?見間違いじゃない?」
「そう、かな。嗚呼、そうかもしれない。」
紅璃のその言葉は柊鎖に向けられたものと言うよりは、自分に言い聞かせたもののように聞こえた。