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三代目魔王の眷族

作者: 高菜わさび

「リームさん!」

ユキが息を切らしながらも、訪ねた先はダンジョンは俺の庭と豪語するレンジャーのリームだった。

「お願いします、助けてください」

「よし、案内しろ、話は途中で聞く」

談笑中にユキの仲間であるテルが倒れて、意識をそのまま失ってしまった。

毒などを疑ったが、自分達では原因がわからないのでリームに頼ることにしたのだ。

「ああ、これはリーム様わざわざありがとうございます」

「いや、いいってことさ、こういうのも仕事のうちだからな…毒でもないな、こんな浅い層でいつくらったかわからない毒を使うやつはいたいし」

「うちは毒でしたらわかりますから」

にゃーん

「そっかここはビーストマスターいるからな、…でもこれは俺よりも」

にゃーん

「うちの子じゃない」

ひょこ

そこに現れたのは猫一匹、魔獣のような大きい猫ではなく、イエネコである。

「いい機会だから覚えておけ、ハチワレは魔女の猫だ」

「魔女ですか?このダンジョンで魔女というと」

「ピンポン、正解だ」

「倒錯の魔女ハル様ですね」

「その言い方はやめてよ」

「なんだ呼びに行く前に来るってことは、わかってて待ってたのか?」

「正解だけど、早く解決したいから今は許してあげるわよ」

「こんな言い方はするが基本は善人だから、んで兄ちゃんはどうなんだ?」

「私を誰だと思ってるの?」

「ダンジョン唯一の魔女」

「猫好き」

「漆黒の翼を持つ番人と天空をかける馬車の所有者、その二つはそういう名前がついてる本なんですけど、禁書にしていされてますね、私ファンなんですよ、むしろ心の中では師匠って呼んでて、初めて人にそういうこと言いました!ルシムの商家に生まれましたが…」

「お~よかったな、ファンがいて」

「あれはファンというのは節穴じゃないかしら」

「お前は本当に神経質だな、もう少し人生楽しむといいんじゃないかな」

「これからは師匠って呼ばせてもらいます」

『話が進まないから黙れ』

魔女の威圧により、今から12時間ダンジョン内の魔物の行動が阻害される。

「すいませんでした」

「でも反省は体に毒なのでしません」

アイラはすごく楽しそうだ。

「そうですね、でもテルさんのことも忘れてませんよ」

「あなたたちはこれをどう言うことが起きてると思ってるの?」

アイラとビュークがユキに目で合図をする。

「テルは異世界から召喚されたので、これは魔王になる兆候ではないかと思ってます」

「ぶーはずれね、この子はもう抜かれているわ」

「何?サキュバスにでも?俺も出会いたいな」

ベシ!

リームにハチワレの猫が猫パンチ。

「三代目魔王の眷族ですか?」

「名前はわかっていても、現状までは把握できなかったようね、この子は五臓六腑を抜かれそうになったんだけど、下手だったので生き残ったって感じね」

「そこまで見えるんですか?」

「あなたは見えないの?ああそうか、見たいとは思いながらも、心の中でブレーキは一応は踏んでたのね」

「助かりますか?」

「あなたはずいぶんと冷静ね、勇者様」

「私は助かりますか?と聞いています」

「助かるわ、でもこの先がイバラの道よ」

「あなたは聡明な魔女だ、支払いのできない取引はしない」

「なかなか払いきれるまで行く人はいないものよ」

「もうさ、腹の探りあいとかやめてさ、とりあえず助けてやれよ、話がややこしくなるし」

リームが話をまとめあげようとしてくれる。

「あら、それだと相手をよくわからないまま約束することになってしまうわ、後で嫌な思いをすることになったら、あなたが責任をとるの?」

「それでもだ、俺の基本方針は変わらねえよ、助けれるなら助けるだ」

「わかったわ、でも私は運命を変えるけど、そこで救われるわけではないのよ、それは別問題」

「う~ん」

「テル!」

「テルさん」

「呼吸も安定してるな」

「今はさすがに寝かせておきなさい」

「やっぱり魔女はすげえな、一発だな」

「ありがとうございます、ありがとうございます、それではお支払はいくらでしょうか?」

「そうね、どうしようかしら」

「そっかとりあえず助けたってことになってるから、決まってないのか」

「サービスで痛みを無くしておいたわ」

「さすがはハル、お前らも良かったな」

「今ここで聞くのは失礼だと思いますが、おそらく魔女であるあなたに会えるであろう回数を考えると、聞いておきたいのですがよろしいですか?」

「何かしら?」

「このダンジョンは何なのですか?聖地とされてますが、あまりにも中の様子が理と違う」

「ああ、それはだな、ダンジョンっていってるが、これは封印された神の腹の中みたいなもんだから、外とは世界そのものが違うわけだ」

「違う世界?ここは異世界?それはもう神話の世界の話ではないかと」

「身近な異世界ってことだ、下層にいる連中の中にはその仕組みを証明してみせるっていってるやつもいるな」

「ということは大分確信があるんですね」

「何いってるのよ、それはあなたたちもでしょう、だからグリッターダフォディルという名前にしたんでしょ?」

顔色が変わったのは二人だ。

「ユキ?アイラ?」

「私は昔ダンジョンの考察を読んだからです、…その本は許可がなければ読めないものですが、その時に花の絵をみました、だからテルさんからいただいた手帳の表紙にそれと同じ花がデザインされていたとき、あの考察は当たっていて、あの花は実際にあるのだなと思いました」

「勇者様の方はどうなの?」

「このダンジョンの一番奥には輝く水仙が咲いている、実際にダンジョンにいったことがある人から聞きました」

「ん?もしかしてそれは剥奪されたバカか?」

「同じ国だし、身内かしら?」

「私が剣を握るきっかけです」

「へぇ~あいつって勇者らしいことは色々してんだな」

「リームはそのバカのバカ仲間よ」

「!?ダンジョンにまさかいるんですか?」

「いや、今は外で鏡の迷宮ってところを攻略してる」

「生きていたんですか」

「あいつはそう簡単にはくだばらんだろう」

「そうは思いましたが、自信はありませんでした」

「あの~そして今、外って言いましたがここから出れるんですか?どうやって悪魔の掌、霧の国とも呼ばれるここから出れるんですか?青銅の門と壁、そして見張りの目をごまかすんですか?」

「そいつは一個で考えているから出れないんだよ、俺らはこのダンジョンにやってきて一ヶ月ぐらいで、ダンジョンからの脱出方法を見つけてるんだわ、で、まあ、そっからなんだけど」

「あれ、これは聞いたら自分の国に戻れないような話ではないですかね?」

「戻れた場合、居場所はあるのか?」

「ありませんね、向こうからしたら、なんでダンジョンで死ななかったんだろうっていうような存在ですよ」

「だろうな、今はダンジョンから出た後に、隠れ住む里があってだな、そこに案内されるやつもいる」

「そんなこと聞いて、媚びのために告げ口しても、後から殺されるパターンになるやつですね」

「秘密は守った方が得だな」

「守りますから禁書読ませてください」

「あなたはそんなんだから国許で上手くいかなかったのよ」

「ひどいですよ、師匠!でも大好き!」

「私はあなたを弟子にした覚えはありません!」

どこまでも続く冒険も素敵だろうけども。

「じゃあ、みなさん、必ず生き残りましょうね!」

「そうだね」

ここからとりあえず私たちは色々変わるようだ。


もしも…魔女が介入をしなかったら…


魔法を使うものならば今の異常さがよくわかる。

ざわつくのだ。

本来魔王として降臨するための能力は、心身ともに異常な強化とされるが、これはそうじゃない、欠けてしまったものを取り戻すように暴れ理を曲げている。

「げふ」

最初に悲鳴をあげたのは内臓である。

(音でも操ってるのか?)

戦いの最中、そこまで集中できてないのは無理はないだろう、今熱と水分が奪われ続けているのだ。

これがもしも五臓六腑を奪われたままでも、魔王であろうとするテルに起きうる末路の一つ。

彼は仲間の命を奪ったあと、ダンジョンそのものを食らい世界を新しく産み出すところであった。

忘れ去られたものの死より世界が這い出し、そうして物語は終わるところであった。

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