帰り道
都会に比べて少し劣る田舎町があるのはご存知だろうか?田舎と言っても森や川で囲まれた田舎ではなく、スーパーや飲食店等が充実しているやや都会よりの田舎のことである。そんな所で起こった都市伝説じみたことが今、噂になっている。
ある1人の高校生が夜、学校から帰って来るのが遅くなってしまっていた。その少年は、いつもの帰路ではなく、普段は使わない近道を知っていた。その道というのは、夜になると人気がない。また、街灯もなく草花が鬱蒼としていて、木の高さはビル三階分に相当する。そんな道を通るのだから、暗いのは当たり前のはずなのであるがその日に限って満月が低い位置にあった。そのため、比較的薄明るかった。天気は、晴れではなく曇で灰色の絵の具をぶちまけたような気分が悪くなる。そんな空であった。
急いで家に帰りたい少年は、歩いていたのだが、目を奪われるような光景を目の前にして立ち止まった。その光景というのは、水たまりに普段は映りこまない満月が、綺麗に反射している光景であった。少年はすぐに片手に携帯を取り出し、カメラを使ってその光景を撮っていた。
すると、後ろの方からブロォォォン!と勢いよく車のエンジンの音が聞こえてきた。ただでさえ狭いこの一本道は、人と車と入れ違うことができない道路である。急ぎ足で歩いていたが、車の方が早いと感じた少年は脇道にそれて車を先に行かせてやり過ごそうとした。すると、ライトをつけた車がやってきた。車が来たのを確認しようとすると、ライトが眩しく目くらましを食らってしまた。しかし、本当に恐ろしいのはそのあとである。
車には、何と乗車しているはずの運転手がおらず無人で走って行く車を目撃した。目で追える範囲で追ってはみたが、車は運転手を乗せているかのように走り去っていた。その時、少年は唖然としたが気を取り直して、近道をやめ戻ろうとすると来た道が濃霧に覆われていた。濃霧の先に赤い色の光が見えていた。少年は今まで見たえいなかったが、その光の方へ足を進めようとした。その時である、
『グヘヘ、今日はついてるぜぇ。1000人目の記念にガキの肉をいただけるとはよぉ〜♪』
とくぐもった声が聞こえてきた。それに続けてこうも言っていた。
『今回は俺が狩る順番!なんだから好きな部位は俺が頂くぜ〜♪』
と声のする方から金属を引きずる鈍い音が聞こえてきた。ザァーザァーという音ともに赤色の光も濃くなっていく。何かは、わからないが近付いてくる者から逃げようと本能的に少年は思い一目散に逃げた。しかし、本来なら既についているはずの家がない。むしろ、どこにいるのかもわからない。すると、さっき霧がかかっていた場所から人が出てくるのを確認した。そちらに行って助けを求めようとしたが、姿を見るなり恐怖心にかられた。霧から出てきたのは、人の姿はしているものの黒いローブを被り、手には大きな鎌をひきづっている。眼光が、赤色であることに気づいた。あれは、赤色の光ではなく瞳の色であったと言う事。
『やっとこの目で拝むことができたぜぇ♪本当に久しぶりの肉だわ』と上機嫌にそいつは言う。その姿は、おぞましいものであった。そして、ゆっくりと確実に猟師が獲物を仕留めるように一歩、一歩を踏み出してこっちに向かってきた。恐怖で足がすくみ、動けなくなってしまった。しかし、勇気を振り絞り震える足で懸命に逃げた。少年は、逃げる最中後ろを確認しながら、走っていったがどうやら追い掛けてくる様子は伺えなかった。それでも少年は走り続け、やっとの思いで見覚えのある光景の場所まできた。そこでやっと少年は安堵し、落ち着きを取り戻した。時計を確認するとあれから5分位しか経っていなかった。まるで、さっき起こったことが嘘のようであった。今までのことを親に話そうと家の玄関の扉を開けた。
すると、そこにはあの黒いローブを着たあいつが立っていた。近くで見る姿は、死神そのものようであった。『よぉう、やっと帰ってきたかぁ〜。待ちわびたぞ、何たって俺らのディナーだもんなぁ♪とりあえず調理にでもかかるかぁ〜』と言って、大きな鎌を振り上げた。少年は目には、涙が溜まっていたが瞳の色は黒く染まり輝きを失い。少年の周りには、綺麗な真っ赤な花を咲かせていた。
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