吹っ飛ばされる主人公、そして登場、非現実超能力物語。
(なんなんだこの状況は・・・)
そう思った僕は西原さんを見た。複雑な顔をしている。
(何か事情がありそうだな・・・)
牧君の顔も見た。牧君は責任を感じているような顔をした。
(ええええええええええええええええ牧君もはこの状況理解できてんの!?もっと俺みたいになんだこの状況みたいな顔してよ!!俺だけ?理解できてないの俺だけ?まじ?)
「平野君、いったんここから離れよう。お騒がせしました。」
(えええええええええええええただ俺ら見学に来ただけだよね!?何ら迷惑かけてないよね!?というかいきなり奇行を見せつけてくるこいつらに謝る必要あるの?謝ってきたのは相手だよね?)
なぜか心の中が落ち着かなくなった僕は、牧君に普通ではありえないような突っ込みをかました後、、二人について部室を出た。
少し離れたところで、牧君になるべく心を落ち着かせた口調で聞いた。
「どういうことかな?」
そして牧君は話し始めた。
「小学校の頃の話だけどね、西原さんと僕は同じ学校だったんだ。そのころ西原さんは校区内では誰も知らない人がいないくらいの不良というか・・・いじめっ子だったんだ。誰も手がつけられないくらい荒れててね。僕はいじめられることはなかったけど、みんな被害にあってたんだ。で、ついたあだ名がデビルオーガ。鬼と悪魔なんて子供じみた名前なんだけど、今思い出しても、その名前に負けないほどに強かった。」
ここまで聞いて僕はここまで言われた西原さんの顔を伺ってみた。うつむいたまま顔を上げない。反論しないと言うことは、本当なのか?
牧君は続けた。
「そして、六年の夏だったかな。ある事件が起きた。ほかの校区の人にはあまり情報は回ってないかもしれないけど、西原さんはこの学校に乗り込んだんだ。理由は僕も聞いてないし、今も聞く必要はないと思っているけど、その事件でこの学校の負傷者が十数名出た。その時は学校から討伐隊がすぐさま派遣されて、被害は最小限で済んだけど、なかなかの衝撃が学校にはしった。さっきの生徒たちも、それを知っていたんじゃないかな。」
西原さんはまだ、うつむいている。
「その後、何かのきっかけから、西原さんは更生をして今のような温厚で優しい性格になったんだ。あんな事件を起こしたから、この学校に来ることは普通にはあり得ないことなんだけど・・・」
その時、西原さんがはじめて口を開いた
「ここの理事長が私に言ったの。うちに来て、今回の件の分しっかり償わないか、今までのこともあるし、そのまま地方の中学校に進むのはつらいだろうって。私は牧君が言った通り、荒んでいた。いじめてきた人には今でも謝って回りたいと思ってるし、この学校でも償いをしたいと思ってる。平野君、変なことに巻き込んじゃってごめんなさい。文学部、入りたかったんでしょ?」
俺はもうそんな気持ちを持っていなかった。あんなヘタレみたいなやつしかいないような部活なんて、入ったって意味がない。
「いや、もういいや。実際もう興味なくなったし。」
僕がそういった時、後ろで声がした。
「あら、あなたは・・・」
声のした方を見てみると、高校の先輩とみられる方が立っている。
その人は西原さんのほうを見ながら言った。
「去年学校に来てた人よね?最後は部長連に取り押さえられていたけど。」
「すいませんあなた誰ですか」
西原さん即答か。
「あら?私のこと覚えてないの去年は歴史記録部の部長をしていたし、あなたの討伐隊にも参加していたのだけど。」
ああ、歴史記録部の部長さんか。って、言ってた討伐隊って部長連で組まれてたんだな。部長連ってすげえ。
「部長連すごいでしょう?あなたも部活に入って部長になればこのくらいの権限を持てるのよ。」
え、俺声出してないんだけども。なぜばれたし。
「なぜばれたしとか思ったでしょう。」
このひと怖い。
「これが私の能力、観察眼。人のごくわずかな挙動から相手の心理を読み取るの。」
なんか俺、変な世界に迷い込んだような気がする。この人にはこういう感じの才能があるのだろう。
「西原さんも能力持ってるわよ。」
そんな馬鹿な。非現実すぎて笑えるんだが。(笑えねえ)
「ちなみに西原さんは何の能力を持ってるんですか。」
背中に衝撃が走ったかと思ったら、校舎の端まで吹っ飛ばされた。
次に気付いたら保健室で寝ていた。