第六話:捻くれた性格
「・・・・・そうじゃったのか」
屋敷の中に招かれ客室に案内され茶を出すと凜が屋敷を出て行った経緯を話してくれた。
飛天も傍にいて耳を済ませていた。
凜の話によれば童が部屋に引き篭るようになったのを様子に行かされ、童の態度を見て父上、母上に激怒して屋敷を出たそうじゃ。
それからは当てもなく旅していたのを飛天に拾われたらしい。
「姫様を一人にして申し訳ありませんでした」
凜は土下座して童に謝罪した。
「・・・良いのじゃ。凜」
童は凜の顔を上げさせた。
「また、こうして凜に会えた。童は、それでだけで満足じゃ」
「・・・・姫様」
「これから童はこの屋敷で暮らす。また、童の世話をしてくれるか?」
凜はすぐに頷いてくれた。
「はい。精一杯、お仕えさせて頂きますっ」
そんな凜を見て童は嬉しかった。
「話が終わったなら黒闇天に部屋を案内しろ。それから着物も選んでくれ」
煙管を蒸かしていた飛天が凛に命令した。
「畏まりました。旦那様」
凛は一礼すると童に立つ様に促した。
童も直ぐに立つと部屋へと案内された。
「綺麗に着飾って来いよ」
「ふんっ。見惚れるでないぞっ」
飛天の言葉に反論して部屋を出た。
「姫様ったら旦那様が好きなんですね」
客室を出て暫らく縁側の廊下を歩いていると凜がクスリと笑った。
「な、何じゃと!?」
童は狼狽した。
行き成り何を言い出すのじゃ!?
「わ、童は!飛天に、ほ、ほ、ほほ惚れてなど!?」
「では何故、結婚したのですか?」
「そ、それは・・・・・」
「姫様は昔から言っていたではありませんか」
口ごもる童に凜が笑いかけながら語り出した。
「“父上のように強くて格好良い男と結婚したい”と言ったではないですか?」
「旦那様は毘沙門天様より強くて格好良いですよ」
「じ、冗談じゃない!!」
「父上の方が飛天よりも強くて格好良いわ!?」
狼狽して嘘を言ってしまった。
本当は父上みたいに親面した偉ぶった男よりも飛天のように偉ぶらず飾らず気さくな男の方が童は格好良いと思う。
そう言おうとしたのに捻くれて嘘を吐いてしまった。
「父上の方が強くて格好良い!!父上の方が飛天より上じゃ!?」
思っているのとは逆の事を言い切ってしまった。
「ふふふふ。姫様は相変わらず嘘が下手ですね」
肩で息をする童を苦笑しながら見つめる凜。
「まぁ、この話はまた後でお話しましょう」
そう言って凛は先を歩き出した。
何だか性格が変わったような気がする。
そんな事を思いながら童は凛の後を追った。