第五話:感動の再会
「・・・・ここが、主の屋敷か?」
「あぁ。朧谷夜って言われていて月が一番、綺麗に見える場所なんだぜ」
得意気に喋る飛天。
あれから色々な場所を回ってから童は飛天の屋敷に着いた。
屋敷の大きさは童が住んでいた屋敷よりも小さいが、それでも屋敷として申し分ない大きさと威厳を誇っていた。
「さぁ、中に入るぞ」
馬に乗ったまま屋敷の中に入ると桜と梅の花びらが童の髪に落ちた。
「・・・・・うわぁー」
年甲斐もなく幼子のような声を出して恥ずかしかったが出さずには要られなかった。
屋敷の中は四季彩りの花で埋め尽くされていた。
「どうだ?お前が好きだと思って準備したんだぜ?」
「童の、ため?」
「お前が見かけ倒しの引き篭りで花を眺めるのが好きだと聞いたからな」
「誰に聞いたのじゃ?」
その事を知っておるのは童と両親、姉上、後は童の身の回りの世話をしていた凜だけじゃ。
両親に叱られた幼い童を優しく慰めてくれた凜。
童より二百歳くらい年上で本当の母上や姉上よりも信頼できた。
じゃが、ある時を境に消えてしまった。
両親に尋ねても知らないと言われ途方に暮れた。
まさか、凜が飛天に教えたのでは・・・・・・・・・・
「お帰りなさいませ。旦那さま」
屋敷の玄関から女の声が聞こえた。
馬上から見下ろすと綺麗な緑色の着物を着た黒のセミロングの女じゃった。
その姿を童は覚えていた。
「・・・・・り、凛」
「はい。大きくなられましたね。姫様」
ニッコリと笑う笑顔は以前と変わらない笑顔だった。
「凛!!」
童は馬から飛び降りると凛に抱き付いた。
「お懐かしゅうございます。姫様」
凛は抱き付く童の背中を優しく撫でてくれた。
その仕草は童が子供の頃と変らなかった。
「りん、凛・・・・・・」
童は溢れ出す涙を抑える事ができなかった。
「そんなにお泣きにならないで下さいませ。せっかくのお顔が汚れてしまいますよ」
苦笑して童の頬を撫でる凛。
「やっぱり凛じゃったのか?この花は・・・・・・・・・」
凛は静かに首を横に振った。
「私はただ、旦那様に姫様は花が好きだと言っただけです。この花は旦那様が姫様を想い用意なされたのです」
後ろを振り返り馬から降りた飛天を見た。
「・・・本当か?」
「まぁ、何もないよりはマシだと思ってな」
頬を掻く飛天。
しかし、その頬は若干じゃが赤く染まっていた。
「さぁ、積もる話は屋敷に入ってからお話します」
そう言って童を屋敷の中に招く凛。