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雨の桜  作者: ドラキュラ
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第十九話:将来設計

「・・・・うー、やはり着なければならないのか」


憂鬱な溜息を洩らしながら童は凛に手伝ってもらいながら大嫌いな十二単を着ていた。


「我慢して下さい。姫様」


憐れむ声で凛が言った。


飛天に宴に行く事を伝えると十二単を着るように言われた。


『宴に招待されるんだ。それなりの正装に行かないと失礼だろ?』


変に律儀な言葉を言う飛天に驚いたが言っている事が正しいので従う事にした。


「飛天は一人で着れるのか?」


父上も着替えは数人の女房が手伝っているのを思い出し凛に尋ねた。


「旦那様は一人で出来る事は一人でやるように心がけているのです」


袴の帯を結びながら答える凛。


「・・・ふぅん」


適当に相槌を打つ。


「さぁ、後は重ねて着る色選びですね」


気を引き締めた表情で童を見る凛に少し引いた。


「姫様の外見は紫の髪に瑠璃色の瞳と少し大人しい色です」


童の髪を撫でる凛。


「ですから、この外見を更に引き立てる色を選びましょう!!」


何処から出したのか大量の着物の山を出し吟味し始める凛。


それから数十分くらいは着せ替えをさせられる羽目になった。


「・・・・完璧です」


凜は自信満々に頷き童の着た十二単の色を見た。


先ず最初に黒の着物を着せて、その上に黄色、黄緑の着物を最後に橙色の着物を着せて完成した。


「飾り物は何になさいますか?」


色々な飾り物がある中で目に入ったのは紫陽花の花飾りだった。


「・・・・これが良い」


無意識に選んでいた。


「畏まりました」


直ぐに童の髪の左上に差した。


そして仕上げに腰まである髪を少し上で結んで残りの髪は垂れ下げたままの髪型の完成。


「後は、少々の紅を唇に塗ってと・・・・・・・」


桜色に染まった唇に薄い紅を塗って童の身支度は終わった。


「・・・・やれやれ。やっと終わったか」


背後から声がして振り向くと襖に背を預け煙草を蒸かしていた飛天がいた。


服装は初めて会った時と同じ紺色の狩衣の姿だった。


違う所と言えば黒漆の太刀ではなく少し豪華な太刀を付けていた所だった。


「飛天!!」


「何時から居ましたの?」


凛は慣れているのか冷静に尋ねた。


「お前が着物を選んでいる時からだ」


ほとんど最初からではないか!?


童の心の叫びなど知らずに飛天は近づくと花飾りに視線を向けた。


「紫陽花か。お前が選んだのか?」


「うむ。無意識に選んでいた」


驚いた表情をする飛天。


しかし、直ぐに表情を戻すと含みのある顔をして口を開いた。


「紫陽花の花言葉を知っているか?」


首を傾げてる童。


「移り気、心変わりって意味の他に一家だんらん、家族の結びつきって意味もあるんだぜ」


「!!」


一家だんらん、家族の結びつきじゃと?


「たまに無意識に自分が本当に欲しい物を選ぶ時があるもんだ」


童が本当に欲しい物。


幼い頃から虐げられた“家族”を欲しいと願っているのか?


「つまり姫様は家族が欲しいという事ですか?」


「そうなんじゃねぇの?」


自分で言っておきながら無責任な態度を取る飛天。


「家族が欲しいのでしたら旦那様に願えば良いのですよ姫様」


嬉しそうな表情で童を見る凜。


飛天に願う?


「旦那様と褥を共して子を作れば良いんですよ」


凛の爆弾とも言える発言に童は大声を出せずには入られなかった。


「し、褥を共にするじゃと!?」


「はい。旦那様と褥を共にすれば子宝がきっと得られますよ」


「私としては姫様のように可愛らしい女の子が欲しいですが・・・・・・・・」


将来のことを考えて嬉しそうにはしゃぐ飛天。飛天と褥を共にする・・・・・・・


という事は・・・・・・・・・・・


ボボボンッ!!


今までにない位に顔が真っ赤になった。


「まだお子様には早かったかな?」


飛天が意地悪な笑みを浮かべた。


「・・・旦那様。姫様は立派な大人です。ただ内気で初心なだけです」


凛が怒った口調で飛天を睨んだ。


「そうか?まぁ、褥を共にする前に宴が先だな」


飛天は背を向けて部屋を出て行き童も凛に促されて袴を踏まないように気を付けながら部屋を出た。


部屋を出た飛天は何時の間にか用意した牛車の傍で立っていた。


何処から用意したのじゃ?


頭に疑問が浮かんだが、直ぐに消す事にした。


「早く乗れ」


童の姿を見ると催促してきた。


「主は乗らんのか?」


飛天に乗る様子を見せないので尋ねた。


「俺は歩くから良い」


飛天を意識し始めたから好都合だが、一緒に牛車の中に居られない事に少し残念に思う気持ちもあった。


「・・・・姫様。くれぐれも気を付けて下さいね」


神妙な凜に童は安心させるように頷いた。


「それでは気を付けて行ってらっしゃいませ」


童の様子を見て安心した顔をする凜。


凛に見送られ童を乗せた牛車は飛天と一緒に父上と母上、そして姉上の待っている屋敷へと向かった。


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