表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨の桜  作者: ドラキュラ
18/35

逸話:姉との再会

父上を追い払ってから三日以上が経過した。


その間、父上は屋敷に現れずに童は拍子抜けしてしまった。


父上ならあの程度で諦めるなどしないと思っていたからじゃ。


それを飛天に話したら


『娘にキツイ一言を言われると父親は傷つくものだ』


と言われた。


そういうものなのか?


どうしても気になって仕方がなかった。


「・・・・・様子を見に行くか」


凜に言えば答えは分かり切っている。


『姫様が行く必要などありません!?』


などと言って猛反対されるに決まっている。


「・・・・・はぁ」


童は中庭に植えてある花を眺めながら、ため息を吐いた。


「年寄りみたいなため息なんか吐いてどうした?」


「ひゃあ!?」


童は突然、後ろから声を掛けられてびっくりして足を滑らして縁に落ちた。


「何をやってるんだ?お前は・・・・・・」


呆れた声を洩らす飛天。


「お主が後ろから声を掛けるのが悪いのじゃ!?」


童は強く打った尻を摩りながら飛天を睨んだ。


「そいつは悪かった。まぁ、そんな事より何ふさぎ込んでんだ?」


「そ、それは・・・・・・」


父上の事が心配だとは言えなかった。


「毘沙門天殿のことだろ?」


「・・・・・・・・・」


図星を指されて何も言えなかった。


「俺の予想ではかなり傷ついたか、仕事で動けないか、または作戦だな」


飛天の出した三つの予想を思い浮かべる。


一番、考えられるのは二つ目の仕事で動けないじゃな。


童が怪我をしても仕事をしていたからな。


もっとも姉上の時は掠り傷ひとつで飛んで来たが・・・・・・・・


「そんなに思っているなら遠目で見て来れば良いじゃないか?」


「えっ?」


童は顔を上げた。


「せっかく連れ去ったのに元気がないんじゃ俺も目覚めが悪いからな」


どうする?


と童を見る飛天。


「・・・・行って来る」


自分の口から信じられない言葉が出てきた。


「よし。それじゃ、行ッて来い」


童に手を差し出した飛天。


「・・・・うむ」


差し出された手を掴んで立ち上がった。


それから凛に外出すると伝えて屋敷を出て行った。














徒歩で屋敷まで行きどうしようか迷っていたが結局は屋敷の使用人に父上の在宅を尋ねたが答えは


「留守?」


童は首を傾げた。


父上がこのような時間に留守など珍しかった。


いや、殆ど部屋の中に引き籠っていた童は父上の行動が分からなかっただけの事で仕事に行っているのかも知れない。


父上が居ないならここに居る必要もない。


「・・・帰るか」


屋敷を後にしようとした時だった。


「・・・あら?誰かと思えば黒闇天じゃないの」


ぴくっ


童は凍りついた。


この声は・・・・・・・・


童はちらりと振り返った。


高級な牛車の中から出て来たのは腰まで伸びた金の髪、海を思わせる澄んだ瞳を持つ童と同じ歳の娘。


童とは違い父上と母上の容姿を色濃く受け継いだ姿。


「ちゃんと振り返りなさい。失礼よ」


厳しい声に童は渋々ながら振り返った。


「・・・・・姉上」


童は、目の前にいる女性・・・・姉上を見つめた。


「本当に久し振りね?黒闇天」


姉上は孔雀の羽根で作られた高級扇であおいぎながら童に近づいてきた。


「・・・・姉上もお元気そうで何よりです」


童は慇懃に頭を下げた。


「内に何か用かしら?」


「・・・・いえ。ただ通り過ぎただけです」


童は一礼して去ろうとした。


「待ちなさい」


姉上に呼び止められた。


「・・・何か?」


「せっかく会ったんだもの。お茶くらいしてったら?」


「いえ。用事があるので・・・・・・」


「“命令”よ。屋敷に上がりなさい」


「・・・・・・・」


「聞こえなかったかしら?“命令”って言ったのよ。屋敷に上がりなさい」


「・・・・はい」


姉上の“命令”に逆らえずに屋敷の中に入った。


昔と同じだ。


姉上の“命令”に童は決して逆らう事ができない。


童は覚悟を決めるように腰に差した扇を握った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ