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雨の桜  作者: ドラキュラ
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第九話:父との決別

「・・・・・・ふぅ」


湯殿に入り湯に浸かりながら童はため息を吐いた。


まったく父上も困ったものだ。


あんな朝早くから乗り込んで来るとは・・・・・・


近所迷惑も良い事じゃ。


「・・・・・もう、帰ったか?」


そろそろ帰ったと思い湯殿から出た。


客室に向かうと


「黒闇天に会わせろ!?」


「お帰り下さい」


まだ二人の口喧嘩が聞こえてきた。


「・・・・・・」


童は無言で慎重に後ろ脚で後退した。


しかし、背中に何か当たった。


「・・・・・・朝っぱらから煩いな」


飛天の声。


振り向こうとしたが後ろから抱き締められた。


「ひ、飛天っ」


思わず大声を出してしまった。


「黒闇天!?」


童の悲鳴を聞き客室から飛び出してきた父上と鉢合わせした。


「・・・・・・・」


「・・・・・・・」


暫く父上と見つめ合った。


「・・・・黒闇天!?」


屋敷中に父上の声が響き渡った。













「・・・・・・・」


「・・・・・・・」


童は和風の客室で父上と対峙していた。


あの後、怒り狂う父上を宥めた凛に促されて父上と二人だけで対峙する事になった。


勿論、寝間着からちゃんと着物に着替えてからじゃ。


「・・・・・・・・・」


父上はじっと童を見ていた。


見ていたと言うよりは睨んでいたと言った方が良いか?


「・・・黒闇天」


父上が童の名を呼んだ。


「・・・何でしょうか?」


「・・・・なぜ家を出た」


「・・・・・・・・」


言葉に詰まった。


飛天に求婚されたから、と言っても信じて貰えないじゃろう。


じゃが、このままでは飛天の立場が危うい。


・・・・・さて、どうしたものか。


童は答える代りに扇で顔を扇いだ。


「・・・なぜ答えない」


父上の声に苛立ちが入ってきた。


「・・・先ほども申しましたでしょう?童にはもう関わらないで下さいと」


「ふざけるな!?」


父上が畳を力任せに叩いて湯呑みから茶が零れた。


「わしはお前の父親だ。娘の心配をするのが、親の義務だ!?」


「もう千八百歳です。自分の事くらい自分で管理できます。それに父上は言ったではありませんか」


ここで童は取って置きの切り札を出した。


“お前などわしの娘ではない”


それを聞いて父上は凍りついた。


「父上・・・いえ、毘沙門天殿は童の父親ではありません。他人が童の人生に口を挟まないで下さい」


わざと父上と呼ばずに名前で冷たく言い放った。


「・・・・・・・・」


父上は童を一瞬、見たが直ぐに視線を逸らすと客室から出て行った。


一人になった童は暫くの間じっとしていた。


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