第八話:悪夢と無意識
『この馬鹿娘が!!』
童を罵倒する父上。
『少しは白明天を見習いなさい』
何かと姉上と比べる母上。
『貴方と姉妹なんて吐き気がするわ』
極めつけが姉上の言葉。
・・・・・うるさい。
童は、童じゃ。
姉上ではない。
何度言っても聞き入られなかった。
『貴様は一族の恥だ!?』
うるさい。うるさい。うるさい!!
『貴様など私達の娘ではない!!』
「うるさい!!黙れ!?」
大声を上げながら童は眼を覚ました。
「・・・・また、夢か」
汗を掻きながら童は傍に置いてあった扇であおいだ。
屋敷を引っ越しても同じ夢を見るとは・・・・・・・
「・・・最悪じゃ」
全身、汗だくの童は布団から出て浴室に向かった。
こんな汗だらけでは飛天に嫌われてしまう。
無意識に思いながら湯殿に行くと客室から声が聞こえてきた。
「黒闇天に会わせろ!?」
「日を改めて下さい。まだ旦那様もお休み中です」
「黙れ!?」
この声は父上、か。
昨日、凛に手酷く言われて追い返されたのに来るとは・・・・・・・・・・
童は湯殿に向かおうとしていた足を客室に向けた。
「・・・・・朝から騒がしいですよ。父上」
客室に入ると父上が怒鳴り散らしていた。
「黒闇天!!」
父上は童の姿を見ると唖然とした。
しかし、すぐに正気に戻り
「何だ!その格好は?!」
言われて自分の姿を見る。
着崩れた紫の寝間着姿。
「・・・この格好がどうかしましたか?」
別に怒るまでもないじゃろうに・・・・・・・・
「何か?ではない!!夜叉王丸に何かされたのか?!」
童に近づこうとする父上を凛が間に入った。
「姫様はまだ寝起きです。あまり近づかないで下さい」
「黙れ!?答えろ!黒闇天っ」
煩い父上じゃ。
夢の事もあり童は苛立ち気に言った。
「・・・・童が飛天と何をしようと父上には関係ないです」
「なっ・・・・・・・」
「童は汗を掻いたので湯に浸かって参ります。それと、童の事は放っておいて下さい」
要件だけを言って童は客室を出て行った。
後ろから
「黒闇天!?」
と呼ぶ声が聞こえたが無視して湯殿に向かった。
まったく朝から煩い父上じゃ。
母上もよく父上のような男と結婚したものじゃな。
童には父上のどこが良いのか理解できん。
そんな事を思いながら湯殿に向かった。