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雨の桜  作者: ドラキュラ
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逸話:両親揃ってヒステリック

「ここが姫様の部屋になります」


「おぉ!?」


凛に案内された部屋に驚きの声を上げる童。


案内された部屋は前いた部屋(3LDK)の軽く三倍はあった。


巨大な姿見に綺麗な文机に立派な畳、一流の職人が作ったと一目で分かる楽器などが無数に置かれていた。


「姉上や母上が使用している位の大きさじゃな」


「気に入りましたか?旦那様が姫様の為に一晩で用意した部屋です」


一晩で用意するとは何とも言えない。


「うむっ。気に入った!」


童は大きく頷いた。


「それは良かったです。では次に着物を仕立てましょう」


凛は大量の着物と帯、簪かんざし)、髪飾り、首飾り、耳飾りの山を何処からともなく出してきた。


「ご安心下さい。姫様が嫌がるような飾りはありません」


童の考えを読んだのか凛が安心するように笑った。


「うむっ。頼むぞ。凛」


「お任せ下さい」


不敵に笑って童に近づく凛。














それから二時間が経過した。


「如何ですか?姫様」


姿見で見た自分の姿に驚く。


「これが、童か・・・・・・・?」


「はい。とてもお美しいですよ。姫様」


凛が満足そうに笑った。


姿見に映った童。


腰まで伸びた紫の髪は櫛で梳かされて下ろされたままで少し唇には紅が塗られ少し上品な大人になった。


着物は青色で十二単のような堅苦しさはなく動き易かった。


飾りは翡翠の耳飾りを付けただけ。


誰も童とは思わないじゃろう。


「さぁ、旦那様に見せに行きましょう」


童の手を引いて喜々とした感じで部屋を出る凜。


飛天は童の姿を見て喜ぶじゃろうか?


童は少し不安な気持ちじゃった。














飛天のいる客室に近づくに連れ会話が聞こえてきた。


「・・・・・・りません」


「・・・・を申すな!!」


「・・・・・・・・・」


「・・・・・っさま!!」

何やら揉めている様子じゃった。


この声は・・・・・・


「毘沙門天様の声ですね」


凛が真剣な態度をした。


「姫様を連れ戻しに来たのではないでしょうか?」


「童を・・・・・・」


有り得る考えじゃな。


家名に泥を塗ったとか言って童を叱り付けそうじゃ。


だが、もう童は戻る気はない。


今こそ父上に物申してみせる。


決意を固めると踏み出そうとした。


しかし、凜に止められた。


「ここは私に任せ下さいませんか?姫様」


何か良い案がありそうな感じだったので頷いた。


「では、ここで待っていて下さい」


笑顔で童の頭を撫でる凜はどこか凛々しかった。


凜が客室に行き童は会話に聴覚を研ぎ澄ませた。













「お久しぶりですね。毘沙門天様」


凜が父上に挨拶をした。


「凜!!」


父上は驚きの声を出した。


「当屋敷にご用でしょうか?」


「先ほどから私の仕えている主人に怒鳴っていたようですが?」


「貴様の主人がわしの娘を誘拐したからだ!?」


何となく理解できた。


あの状態なら傍から見てもあれは誘拐同然じゃな。


まぁ、童が納得したから問題ないはずじゃが・・・・・・・・・・・


どうやら父上は納得しなかったようじゃな。


「誘拐とは失礼な。ちゃんと姫様に求婚して姫様も承諾したんですよ」


「まだ千八百歳だぞ!?」


父上の怒鳴り声が耳に響く。


煩すぎるぞ。父上。


「千八百歳ならもう立派な大人。結婚もできる歳ですし自己責任感もあります」


「毘沙門天様が思っている以上に姫様は責任感がある立派な女性です」


父上の怒鳴り声にまったく怯まず反論する凛。


「まだ子供だ!!碌に琴も弾けぬ娘が結婚など・・・・・・」


「別に琴が上手く弾けるのが結婚の決まりではありません。姫様は琵琶が得意です。親なのに知らなかったのですか?」


「知っていた!!」


「それは私が教えたから知っていたのでしょ?」


「ぐっ・・・・・・・・」


父上が押し黙った。


大方は検討していたがやはり傷つくの。


「姫様が花が好きなのを知っていましたか?姫様がどんなに悲しい思いをしたか知っていましたか?」


凛は父上に質問攻めをした。


「姫様の事を蔑ろにしたのに今さら親面しないで下さいませんか?」


「・・・・・・・・・」


「・・・また出直して来る」


怒りを抑えて言葉を吐く父上の様子が目に浮かんだ。


恐らく今日あたり、屋敷が崩壊するじゃろうな。


最早、屋敷を出た童には関係ないが・・・・・・・・


「姫様。どうぞ此方に」


父上が帰ったのを確認して凛が客室に招き入れた。


飛天は煙管を蒸かしながらぐったりしていた。


「お前の両親は揃ってヒステリックだ」


「・・・・まったくじゃ」


あそこまでヒステリックだと恥ずかしい。


「あの様子ですと三日置きに来ますね」


凛が憂鬱な溜息を吐いた。


「勘弁してくれ」


飛天は紫煙を吐きながら頭を抱えた。


「ただでさえ扱いが面倒なのに三日置きとか・・・・・・・・・・」


はぁ、と三人で同時にため息を漏らした。



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