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最強!カルテット

作者: 黒崎 苑

素人、内容は深くないので考え込んだりしたらダメ。かっるい読み物です。究極な暇つぶし。これでも読んでやるよって人はどうぞよろしくお願いします。

「はじめまして!んでもって、どうぞよろしく!君たちを心から歓迎します!」


桜舞う入学式を終え、ぎこちなくも一緒に行動する存在ができ始めたころ。

とても面白いことが始まった気がした。




高校。

一般的に中学校という義務教育が終わった後に始まる教育施設。

よっぽどな理由がない限り、そんなことは誰だって知っている。

私が通うことになった高校は、家からそう遠くもない、それなりに頭のいい学校だった。

だが、あくまでそれなり。

レベルで言えば上の下。何か有名で誇れることがあるかと言われれば、そんなものもない。

そんな普通の学校。

第一志望に落ちてしまった故に通うことになった学校なので、何かに期待することもなく、ぶっちゃけ不貞腐れていた私。

そんな私を吹き飛ばすあの衝撃は、半年を少し過ぎた今も忘れそうにない。





学校に入学するとなんだかんだと式典が続く。

別に私たち一年が出なくてもいいんじゃないかっていう式典もある。

そんな数ある式典の一つだった。


『新入生歓迎会』


2,3年生である先輩たちが、新入生をもてなす会…と、いう名の部活動紹介。

メジャーな部活動からマイナーな部活動まで、新入部員獲得の為に様々なアプローチをステージの上で繰り広げている。

部活動などには興味もないので、顔をステージに向けつつも、話は右から左へと流していた。

いい加減飽き飽きしてきてしまい、他の1年生はひそひそ話し始める子たちも出始めた。

各言う私も、あくびを我慢するのもつらくなってきたところだった。


それまで空きっぱなしだったステージにカーテンが引かれた。

すると、カーテンの手前に5人ほどの生徒が現れる。

前2人が長机を運びステージ中央に設置すると机の上に布を敷き、残りに三人がもってきたものをその上に並べ始めた。

それは、たくさんのベル。

前置きや、説明もなしにそれは始まった。


ハンドベル演奏


曲は、海外でも日本でも爆発的にブームになり有名になった、とある外国のアニメーション映画のテーマソングだった。

すぐさま曲に反応する1年諸君。

ざわついた体育館内は、しかしすぐに静まり返る、その美しい音色に。

一生懸命に真剣に、そしてなにより楽しそうに演奏する5人の生徒たちに自然と視線が集まる。

5人の生徒が息を合わせ、意気揚々とベルを打ち鳴らす。

カラァン…と余韻が体育館の隅々に響きわたり、演奏が終わると拍手が上がった。

ぺこりとお辞儀をした生徒たちはすぐにステージから退場する。

もちろん、何も言わず。

退場するとともに今度はカーテンが、ゆっくりと開いていく。


現れたのは、それぞれの楽器を持った4人の生徒たちだった。

ドラム、トランペット、サックスフォン、トロンボーン

それ以外にも、ピアノやチューバやクラリネットなど、ステージの上には他の楽器も置かれていたが、生徒は4人のみ。

ずいぶん人数が少ないな、と思ったが他の生徒たちが出てくる様子はない。


そうして始まった4人の演奏。


全部で3曲、彼らはたったの4人で演奏しきった。

しかも、それぞれがそこに置かれている様々な楽器をかわるがわる持ち替えて。


一曲目は、人気で有名なテーマパークのポップス

二曲目は、思わず聞き入ってしまうしっとりと美しい旋律のクラシック

最後は、かっこよくてノリのいいジャズ


引き込まれる、心をつかむ、そういうことを初めて経験したと思う。

三つの異なる曲調に流されて飲まれる感覚がする。

素人である私ですら『素晴らしい演奏』なんだとわかる、彼らが只者ではないということも。

四人という少人数の演奏では、各々の実力が嫌と言うほどわかったからだ。

それなのにここまで引っ張られる、体育館の中は美しい旋律が支配していた。


不貞腐れてそっぽを向いていた私の頭をガツンッと殴られた様な衝撃。


漫画や小説で使われる、ドキドキやわくわくと言った感情を強く感じた。

心臓がさっきからドクドクと激しく動いているのがわかる。


(すごい…すごいっ…本当にすごい!!)


他の部活動と変わらない時間のはずなのに、短すぎると思ってしまう程あっという間に終わってしまった演奏。

体育館全体から響く大きな拍手、もちろん私も力いっぱい手をたたく。

素晴らしい演奏に対しての称賛を贈るべく。


拍手が響く中、四人が前に出て一列に並び、その中で一番小柄な少女がマイクを持った。


「新入生の皆さん、入学おめでとうございますっ!ささやかですが、私たちから皆さんへの入学のお祝いにと演奏させていただきましたっ!これからの皆さんの学生生活を盛り上げる一環に活躍できたら幸いです!」


そうして、彼女はマイクを外し胸いっぱいに息を吸い込むと、満面の笑みで叫んだ。





「はじめまして!んでもって、どうぞよろしく!君たちを心から歓迎します!」





『以上、吹奏楽部のパフォーマンスでした』


新入部員勧誘のセリフやまどろっこしい説明なんて一切なく。

ただ新入生である私たちを歓迎することだけ、もてなすことだけをしてステージを降りて行った。


「かっこいぃ…」




その日の放課後から仮入部期間が始まった。

向かう先は、決まっている。

目的の教室をのぞいてみると、もうすでに何人もの生徒がいた。

入り口で様子をうかがっていた私に、中にいた先輩であろう人物の一人が気が付き近寄ってきた。


「あなた、一年生だよね?どうぞどうぞ、入って入って!」


彼女は、はじめに出てきた5人でも後に出てきた4人の中にもいなかった先輩だった。

少々びくびくしながら教室に入り、用意されていた椅子に座る。

周りを見渡して、一年の数と先輩の数を確認すると、一年生のほうはもうすでに10人は超えているだろうし、まだ教室に入ってくる人もいる。

先輩はざっと10人ほどで、その中にはハンドベル演奏をした5人もいた。

しかし、メインの演奏をした4人がいない。

疑問に思いながらも、おとなしく席についていると、学校の鐘が鳴った。

この鐘は部活動開始のチャイム。つまり、仮入部期間の開始である。

そして、そのチャイムが鳴り終わるころ、教室に入ってきたのは例の4人…と、おそらく顧問であろうもじゃ頭のおじさん先生だった。


「いやぁ~遅れてごめ…うほぉ!?」


教室に入るなり変な声を上げたのは、ステージで演奏し挨拶した小柄な女子生徒だった。


「何を変な声だしてんだよ、アホ」

「はっ!!え、や!びっくりして!こんなに来てくれたんだぁ…」

「しんみりしてないでプリントよこしなさいよ、配んなきゃいけないんだから」

「あっうん!ごめんごめん」


一人に突っ込まれ、一人に催促されながらも嬉しそうに微笑んでいる女子生徒は「それじゃあ…」と言ってから私たちの前に立った、それに他の生徒も続く。


「はじめまして!私は吹奏楽部部長の3年、織田おだ 神楽かぐらと言います!どうぞよろしく!今回は仮入部期間にわざわざ来てくれてありがとう!」


同い年…下手をすると年下にも見える外見の彼女は、なんと部長様だった。

なんとなくそんな気はしていたが、ステージで見てもまじかで見ても随分と小柄だ。

150㎝も…無いのではないだろうか…


「仮入部期間だから…全員の自己紹介は必要ないと思うけど、一応3年だけは挨拶しておこうかな」


このセリフに、疑問が浮かんだ。

前に出ている生徒はざっと数えるだけで20人はいるはずだが…3年だけでもそれなりにいるのではないのか?


「うんと、まずは副部長の結城ゆうき 奏志そうしくん、それから、音宮おとみや 林子りんこちゃんと飛弾ひだ 響也きょうやくんです!以上!」

『え?』


部長様こと織田先輩がきっぱりと言い切ると、1年から複数の疑問の声が上がった。

ちなみに、私は出してはいない。


「私たちは、3年生4人2年生18人の合計22人で活動しています。創部から3年目に突入した新設の部活ですが、よろしくね!」





なんでも、3年生たちが入学する1年前に廃部になり、それを先輩たちが復活もとい新しく創部させたのだとか。

そのせいと言うわけではないが(なんせこの学校部活動がたくさんあって、その種類は30を超すとか越さないとかでわざわざ潰れた部活を復活させるなんて考えないので)、3年生は4人と言う少人数になり、一生懸命そこから頑張って大きくしたのだとか。

主に織田先輩が主導で吹奏楽部が始まり、残りの3人はそれに引っ張られたのだとか。

ちなみに、4人は幼馴染で、その腐れ縁は幼稚園から続くのだとか。

勉強も忙しくレベルの高いクラスにいるにも関わらず成績は4人とも常に上位をキープし、そんな面倒で大変なこに付き合ったのも、そんな理由が大きいらしい。

「そのおかげで断り切れなかったんだよ」と、まんざらでもない様子の飛弾先輩がどこか懐かしそうに言っていた。

「でも、私たちも音楽をやっていたかったからよかった」と、ちょっと照れくさそうに笑ったのは音宮先輩。

「大変なことは多かったけど、それ以上に楽しかったからね」と、柔らかく優しく微笑んだ結城先輩は本当に楽しそうだった。


先輩たちは良い人たちばかりで、3年生たちはもちろん2年生の先輩たちも仲がいい。

喧嘩したこともいがみ合ったこともいじめっぽいことも起こったらしいが、そのたびに3年生の連係プレーや説教により乗り越えてきたんだとか。

そんな先輩たちの人柄に触れながら、1か月が過ぎ2か月が過ぎ…半年が過ぎた今。


大きな大会も終わって3年生は引退した。


今私たちは冬にあるアンサンブルの大会を目指して頑張っている。

3年の先輩たちが去年金賞を受賞した大会である。

その雄姿をDVDで見たとき、改めてこの人たちのすごさと憧れを感じ、もっと早く出会いたかったとやはり思う。

あんな風な仲間がほしいと思う、あんな風に演奏したいと思う、私の憧れる彼ら。

不貞腐れてやる気がなかった学生生活ががらりと180度向きを変えたきっかけをくれたのは、

最強な4人組だった。


-------------------------

おまけ~と言う名の本編~


『新入生歓迎会直後』


神楽(以下『楽』「ああああああああああああぁぁぁぁぁああああ!!!」


響也(以下『響』「うるせーよ」


楽「うわぁぁぁああああああああああん!!!」


林子(以下『林』「うるさいってば」


楽「やっちまったぁ…やっちまったよぉぉぉぉおおお!!」


奏志(以下『奏』「少し落ち着きな、神楽」


楽「なんだよ…なんだよ『君たちを心から歓迎します』とかっ!!はずっ!!はずかしぃぃいい!!上から目線はずかしぃぃいい!!ちょっとキザな感じが穴に入りたいぐらいはずかしぃぃぞぉぉ!!しかも勧誘のセリフ忘れてた…言い忘れたっ!!頭の中から全部飛んだし!!吹奏楽部であることすら言ってねぇ!!おめぇら誰だよって思ってる、突然何やりだしてんだてめぇらとか思ってるんだ!!しかも曲も…危うく楽器交換間違うところだったし、本当あの時のアシストありがとぉねソウちゃぁぁぁぁああん!!」


奏「はいはい、わかったから。落ち着いて、はい、深呼吸~」


美緒(以下『美』「せんぱぁーい!」


楽「あ、美緒ちゃんお疲れ様、ハンドベル演奏すごかったよ!とってもきれいだった!息もぴったりでいい笑顔だった!」


美「えへへ、ありがとうございます、神楽先輩!先輩たちの演奏も相変わらずすごかったですよ!」


楽「いやいや、それほどでも、でもありがとう!」


美「はい!あ、楽器の片づけ終わりました!」


楽「うん、了解しました!ありがとう!」


美「はーい、それじゃあ!」


楽「うん!」


響・林・奏「「「…」」」


楽「…ぐっはぁぁぁああ!!気を使われてしまった!!なんていい子なんだ!!でも、不甲斐ないっなんて不甲斐ないんだよぉ!!私のミスがぁぁぁぁ!!私のイタイセリフがぁぁぁぁ!!ああああ!!はずかしい!!うわぁぁぁん!」


響「外面と内面の切り替え相変らずだな」


林「頭が良くて明るく人当たりもよくて気遣いができて…って?本性はただのヘタレだけどね」


奏「ことあるごとにうじうじもだもだ悩んでへこたれちゃうしね」


楽「幼馴染が止めを刺しに来ているぅ!!よってたかってきているぅぅぅ!!」


響「はいはい」


楽「適当すぎるよ!!対応が適当すぎやぁしないかいキョウちゃんや!!」


林「いい加減うるさいわよ、ちょっとは静かにできないの?あぁ、できないわね」


楽「ぐふっひっひどい…相変わらずの毒舌だねリンちゃん…まさに、ツンデレの醍醐味…」


林「誰がツンデレか」


奏「さ、本当にいつまでもこんなことしてないで行かないと、次の部活もあるし後輩も待ってるんだから」


響・林「そうだな」そうね」


楽「こんなこと…私の羞恥はこんなこと…」


奏「ほら、行くよ神楽」


響「後輩の前でそんな情けない面すんなよ、心配ないと思うけどな」


楽「ううぅ…うん、行く」



『仮入部1日目終了後の放課後』


楽「…」


林「今年は大収穫ね、23人も来てくれたわ、初日なのに」


響「なかなかいい結果だな」


奏「ここからどう転がるかわからないけど、ひとまず安心かな。2年生たちもしっかりやってくれたしね」


楽「…」


林「どのパートが人手不足だったけ?」


響「ホルンとか…ユーフォとか…あとは、低音組か」


奏「そこも入れとかなきゃいけないけど、俺たちもパートにも何人か入れないと、今年引退だしね」


楽「…」


響「あぁ、そうか引退だな。速いもんだな」


林「まだしんみりするのは早いわよ、まだ半年はあるんだから」


響「それもそうだ」


奏「さてと、お~い神楽、しっかり~」


楽「…ぅ…」



楽「…ぅぅうううわああぁぁあああいっうぐっ!!!!」


響「うるせぇ」


楽「ふむー!!!ふむむうぅうううーーー!!!」


響「タオルでも噛んでろ」


林「なんてアホ面」


楽「うぐぅ!?」


奏「さ、俺たちも片づけて帰ろう。また明日もあるし」


楽「うぐぐーーーー!!!!」



『部活引退後』


楽「ふむぅ…終わっちゃったぁ…勉強つまんなー」


林「ちょっと、そんなダレてないでよね。今日のノルマはどうしたのよ」


楽「終わったぁ~」


林「は!?終わった!??まだ、午前中よ?」


響「ほんと、なんで中身こんなアホなのに勉強も演奏もできるんだか…」


奏「世界は不思議なことであふれてるからなぁ」


響「そうだな、本当そう思うわ」


林「やんなっちゃうわよ、これが学年校内総合一位とか…」


担任の先生(以下『先生』「いや、お前らも相当だからな?必ず5位以内キープとか、しかもそのノルマだってなんでこなせるわけ?」


奏「神楽に合わせてると自然とそうなるんですよ、それにほっとくと何しでかすかわからないし」


響「まさに珍獣」


先生「珍獣ってなぁ」


林「はぁ、私たちもさっさと終わらせちゃいましょ。あまりに暇すぎると逃亡されるわ」


響「そうだなぁ」


先生「逃亡って…て…あれ…?織田がいなくなってる…?」


「「「「…」」」」




楽「ふんふふ~ん、どこ行こっかな、屋上がいいかな~」




終わり

人物紹介


本編主人公

1年生、女の子、名無しのやる気なし子ちゃん。やる気なかったが演奏に惚れてこの先は吹奏楽にのめりこむ予定。


<カルテットの指す人物>

織田 神楽

部長、3年、トランペットパート

外面はしっかりした明るい良い先輩、中身はただのヘタレ。さらに泣き虫で努力家。頭も演奏技術も、もともとセンスはあったがそれを更に磨いたことで天才的になっちゃった人。愛すべきアホ。幼馴染大好き。


結城 奏志

副部長、3年、ホルンパート

優しく穏やかで面倒見のいいオカン。苦労性。怒らせると一番怖い。勉強・演奏については神楽と一緒にいたらハイスペックに。


飛弾 響也

演奏技術担当、3年、打楽器パート

やや乱暴な物言いだが、面倒見は良い。なんだかんだと兄貴分。勉強・演奏(以下同文)


音宮 林子

事務(雑務)担当、3年、サックスフォンパート

ハッキリした物言いから冷たい印象があるが、一番乙女で繊細な女の子。勉強・演奏(以下同文)


<その他>

美緒

二年、フルートパート、ハンドベル演奏した一人。神楽になついている。

先生

3年4人のクラスの担任。割と若い。



本当は恋愛にしたかった(4人の)けど、短編なら~でこうなった。

仲が良くてなんだかんだとお互いを理解しあってる様子が描きたかった。

楽しかったです、ありがとうございました!

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