胡蝶の夏
何なのかはわからない
ただ、授業中に夢を見る
見えるのは青い空と白く眩しい入道雲
そして、鮮やかな緑の山々
まるで絵を見ているようだ
とても現実にしか見えない、絵
太陽の光が目をさす
夏のツンとした匂いが鼻をついた
そこで僕は気付く
夏が、好きなのだと
けれども、僕が求める夏は、こない
現実の夏は、何かが違う
何なのかはわからない
教室から眺める空も山も、空ではないし、山ではない
本当の夏はどこにあるのだろう?
誰もいない、夏
つまり
僕もいない、夏
わかった
そこには、僕がいないのだ
僕がいない夏、もうすぐ来るのかな
来ないのかな
綺麗な夏が来るといいけれど
考えるのを止めて、黒板へ視線を向けた
この教室に、ここに、僕はいるのかな
小さな疑問だけが、残った