明日香の特訓ー1
今回は微量のグロ成分が含まれています苦手な方は注意してくださいm(__)m
二人はアリシア達に連れられ、屋敷の奥にある埃の被った二つの扉の前にいた。
「明日香、ここで少しの間お別れね」
「うん......修行が終わったら約束守ってよね!」
何かの約束をした明日香は、扉を開く。
すると、どこか別の空間に繋がっているのか先の景色が見えなかった。
「それじゃあ、行きますよ明日香さん」
明日香はアリシアと梓はマルモと二人組になって、それぞれ別の扉に入る。
扉を通り抜けると、そこには森林や砂漠、果ては火山とあらゆる地形が存在する不思議な場所に出た。
「ここが...私達が強くなるための場所...」
明日香は辺りを見回して、無意識にそう呟いていて。
「どうですか?ここが私達の特訓を行っていた場所なんですよ。ここは私達が捕まえた魔物もいますし練習相手には退屈―――」
アリシアがそう言いかけて、違和感を感じ振り向くと。
明日香の姿の代わりに、地面に何か書かれていて。
『森の方へ行ってくるね♪』
「.........どうして翠さんの家系はここまで自由なんでしょうか......?」
アリシアが頭を押さえながら大きなため息をつく。
「まあ、森というと相当奥の方にしか高位の魔物は居ない筈ですから、明日香さんの実力なら大丈夫なはずです...」
それでも、心配なのは変わらないのでアリシアは明日香を追うことにした。
そんな考えなど、知らないまま明日香は森の奥へと進む。そして、アリシアの考えを裏切るかのように森の奥から魔物が出てきたことなど、二人は気づくよしもなかった。
「すっご~い!!見たこともないような生き物が一杯いる!」
私がスライムさんに近づくと、スライムさんの方は本能的に力の差を感じ私から逃げちゃいます...
「やっぱり...私の力が怖いのかな......?」
前に住んでいた世界でも、私の力に怯えてた子がいたからもう慣れっこですけど、やっぱり傷ついちゃいますね。
私が落ち込んでいると、森の奥から声が聞こえてきて。
『貴様は我らの地を壊しに来たのか?』
その声の主は怒り気味だったので、急いで否定します。
「違うよ、私は不思議な力を感じたからこっちに来てみただけだよ。あなたたちは何か知ってる?」
『具体的な事を聞けば分かるかもしれんな』
「じゃあ、教えてほしいんだけど言いかな?」
私が、聞くと声はいきなり笑ったのでちょっと不愉快です。
『我らに答えろと?構わん、だが条件がある』
「条件?...え、えっちな事はダメだよ!!」
この世には、私みたいな小さい子が好きな『ろりこんさん』というのが居るらしいですが、お姉ちゃんによると小さい子はろりこんさんが『食べて』しまうので、近づいちゃダメらしいです。
だから、念のために聞いてみたら。
「安心しろ、我々にそのような趣味はない。我々に勝てばよいのだ」
「それなら良いよ。負けないから!」
私はここに入る前に凜から渡された指輪をつけて。
『顕現・双龍』
凜によると、この指輪には武器の情報を取り込んで、中に記録して好きなときに呼び出せるようにする物だそうです。
今、私の持っている武器はアリシアが、ここで修行するために必要になるだろうと前もって、指輪に記録しておいてくれた双剣なのです。
右手に蒼色の剣を、左手に紅色の剣を持って何処から来て良いように構えます。
すると、森の奥から鬼のような顔をした魔物さんたちがたくさん出てきました。
「全部で20......30......もっといそう、――――ふふ、楽しみ♪」
明日香は久しぶりに一対多の戦闘に、気分が昂っているようで何時来るのかと身体をソワソワさせている。
周りを完全に魔物が囲むと、明日香の目の前にリーダー格らしき魔物が現れた。
「久しぶりの戦いだ...我らは『シェルバオーガ』...がっかりさせてくれるなよ小娘!」
オーガが一斉に明日香に襲いかかる。常人ならば、それだけでも充分に恐ろしいが明日香はその様子を見て嗤う。
「これじゃあガッカリするのは私の方じゃない」
明日香は身体を軸に独楽のように回転する。
「御影流『絶風』」
オーガの群れは、明日香の『絶風』に巻き込まれ襲いかかったオーガは切り刻まれ、生き残ったものでも腕が一本無くなっていたりとただ済んだものは一匹足りともいなかった。
因みに、御影流は明日香のオリジナル(というか何となく閃いた)技に、「流派みたいな名前でもつけたらどうですか?」と凜が言っていたので、取り敢えず自分の名前を入れたら意外とはまったという適当極まりない理由だ。
「久し振りって言ってたし、手加減した方が良かったかな?」
一拍遅れて、切り刻まれたオーガの血や肉片が雨のように降り注ぐ。明日香の着ている白いワンピースは血の雨により、みるみる紅色に染まっていく。
そのなかで、子供の様に笑う明日香を見てオーガ達はこの少女とは戦うべきではない、と本能が叫んでいた。だが、オーガ達にも退けないプライドがあるのか恐怖を押し殺し。
「言ってくれるな小娘。我々はまだ真の力を見せていないぞ?」
そのセリフに明日香は。
(まさか、ここに自信満々で死亡フラグを踏む魔物がいるなんて思わなかったな......)
半分呆れ気味に、もう半分は生で死亡フラグを聞けたことに驚きながら。
「じゃあ、その真の力ってやつを見せてよ」
オーガ達は、さながら軍隊のような動きで森の中を縦横無尽に動き回る。
明日香は、オーガの死亡フラグにわざわざ付き合っているわけだが最初の一回で確信していた。
(あなた達じゃ私の相手にならない)
理由は簡単だ。明日香は攻撃系の魔法は得意ではないが自分や他人を強化する魔法だけは人並みには使えるのだ。
そして、今明日香は強化魔法を一度も使わずにこの状況を生み出した。それでも明日香はこの魔物と戦闘を続ける。
たとえ、それが既に虐殺と名前を変えていても。
僅かな時間差で明日香を攻めるオーガ達は、この方法なら先程の技は使えないと踏んだのだろう。実際、明日香の絶風は360°全ての方向への攻撃を可能にする技だが、そのデメリットとして高速回転するとき明日香の身体にも負担がかかるため使えて1、2秒が今の限界だった。
だが、それに気づいた所で虐殺が戦いに変わるわけがない。
「御影流『華蝶楓月』」
双龍から斬戟が飛びオーガの肉を切り裂く音、骨が砕ける音、オーガの苦しむ声がまるで楽器のように次々と鳴り響く。
斬戟が飛ぶたび、周りの木もまとめて倒れていくが明日香は気にしない。
「アハハッ!もっと私と遊ぼうよ!」
明日香は無邪気な笑顔でオーガの群れに向かって走り出した。
「ねぇ?これで終わりなの?」
数分後、明日香の足元にはオーガとオーガだったモノが散乱していた。
探しに来たアリシアは血の臭いを感じ、その方向に向かうとオーガの屍を前に狂気的に笑っている明日香の姿があり。
(――――ッ!?これ全部明日香さんが......!?)
アリシアに気づき、明日香はいつもと同じ様子で話しかけてくる。ただ、ここに来た時に着ていた白のワンピースは紅く、明日香の美しい黒髪は血の雨にうたれ鉄臭い。
「うふふ、これ全部私がやったんだよ?やっぱりゲームと違って本物の魔物って迫力が違ったな~」
真に驚いたのは、明日香がこのオーガ全てを倒した事ではなく、ゲーム感覚でこの量の魔物を虐殺出来たことだ。
常人ならば、魔物を恐れることが普通だ。ましてや、異世界に来たばかりの明日香がここまで簡単に魔物を殺すなど誰も思わないだろう。
(流石、と言うべきか...やはりと言うべきか翠さんの娘さんですね......魔物を殺すことに全く躊躇いがない)
アリシアは明日香がやはり翠の娘だということを心の中で再認識した。
今回初めて視点を変えてみましたがいかがだったでしょうか?
正直結構つらかったです……今回から章で区切ろうと思います。
読んで下さる方はこれからもよろしくお願いしますm(__)m