終わりを告げる日常ー3
無駄に長かったプロローグもこれで最後です。
爪を受け止めた少女が梓達を知っているようで、後ろに慎が爪で少女を攻撃しているが、まるで何もないかのように話しかける。
「ま、私に任せておいて」
少女はそう言って慎に向き合うと、少女が全身から鋭い殺気を放つ。耐性の無い梓はその殺気に当てられ地面にペタンと座り込む。
「この程度で、僕が気圧されると思ったんですか?」
「別に、そういうことは考えて無いわ。ただ、マスターの『お願い』を守るだけよ」
「そんなことで調子に乗らないでくださいよ!」
慎が今までで一番速く爪で攻撃する。だが、それさえも少女はつまらなさそうに見て躱す。そして槍を取りだし。
「遅いよ、さよなら。黒羽流『霞時雨』」
刹那、慎の身体に無数の穴に穿たれた。そして慎を見て一つの疑問が浮かぶ。
「よく考えたら、あなた私の名前知らないの?もしそうならただの雇われの中でも相当下なのか、私のことすら知らない辺境世界から来たってことよね」
「どういう...事ですか?」
慎は少女の事を知らなければ何か問題なのだろうか分かっていなかったようで、少女が答える。
「私はアリシア・エルダンティアあなた達には『双槍使い』の方が名前が通っているかしら?」
アリシアが自分の名前を言うと慎は納得がいったようで、梓と明日香を傷だらけの体で見つめ。
「成る程......これでも結構自信はあったんですけど、『虹の七姫』の赤色にすら勝てませんか」
慎の身体が突然光に包まれ、そして次の瞬間、慎の姿はまるで初めから居なかったかのように消えていた。
アリシアは明日香に近づこうとすると梓が。
「明日香をどうするつもりなの...?」
まだ、満足に動けない身体で明日香の前にいく。
「安心してください。私達はさっき言った通りあなた達の味方です」
アリシアが出来るだけ梓を警戒させないように接する。
「二人には、私たちの今住んでいる場所へ来てもらうけど良いですか?」
梓が明日香を守る様な位置取りで聞いていると、後ろから明日香が小さな声で。
「アリシアは...ほんとのことをいってる...ゲホッゲホッ!」
「明日香、無理しないで...!」
明日香は「大丈夫...」何て言っているが、まだ顔色も良くない。
「大丈夫です。私たちの場所には設備も整っていますので安心してください」
梓は明日香の言葉を信じ、アリシアに着いていくことを決めた。
「分かった、だけど明日香は絶対助けて!」
「分かりました。アリシア・エルダンティアの名に懸けて明日香さんは必ず助けます」
アリシアが答える。すると、後ろにいたマルモが魔方陣か何かを作り上げていた。
「こっちの用意はできたから。行くなら早くして」
マルモは短くそれだけ言うと、また作ったものに目を向けた。
梓は明日香をおぶってその魔方陣のようなモノの中に入る。続けてアリシア達も中に入り。
「じゃあ、飛ぶわよ」
次の瞬間、視界が黒く染まり一瞬意識が飛ぶ。視界が戻って梓が見た景色は、澄みきった空と目の前にある古びた屋敷のような家だった。
「ん......ここ、どこ...?」
明日香は周りを見るが、見覚えがなく自分の知っている場所ではない。明日香が人を探しにいこうと立ち上がると。
「あ、お目覚めですか?」
扉が開きアリシアが入ってくる。明日香は一度見たが、意識がはっきりしていない時だったので明日香は。
「あなたは一体だ―――」
「あ~す~か~!やっと目を覚ましたの?2日も寝てたから私心配したんだよ!?」
梓が明日香にいつものように飛びつこうとすると。
「きゃあっ!?」
「うわっ!?ちょっ、明日香!いきなりハイキックは私でも危ないから止めて!?」
アリシアは「じゃあ、いきなりじゃなければいいんでしょうか...?」と考えると、後ろからマルモが梓の頭に向けて本を降り下ろした。
もちろん、不意打ちに梓が対応できるはずもなく簡単に床に沈んだ。
「お、驚かせてごめんなさい...」
アリシアが梓がいきなり明日香に飛び付いてきた事を謝ると明日香は苦笑しながら。
「そんな事ないよ。梓お姉ちゃんってどんな時でも私を狙ってくるからね...というか、まだあなた達の名前を教えてもらってないから教えてもらっていいかな?」
「もちろんです。私はアリシア・エルダンティアです」
続いてマルモが。
「マルモ・ルーディエ、よろしく」
「うん、よろしくね」
自己紹介を済ませ、明日香は今の自分がどこにいるか等を聞く。
「あ、まだ話して無かったね。ここは空間の間に貴女達のお母さんが作った私達の家ってところかな」
「アリシア達って私達のお母さんが知ってるの!?......あれ、私たちの...?」
明日香が混乱していると、アリシアが。
「明日香と梓は私たちの『ギルド』のリーダーの子どもなの」
「そんなにスゴいのなら、何でその事を覚えていなかったの?」
アリシアは「それは...」と一瞬戸惑うようなそぶりを見せた。
明日香は気にしないでいいよ。と言うと。
「...分かりました。明日香さんと梓さんには記憶制御の魔法をかけて、私たちと梓さんに関する全ての記憶を書き換えさせてもらったんです」
「梓お姉ちゃんは...本当のお姉ちゃんっていうこと...?」
アリシアは頭を下げて。
「はい、今まであなた達がいた世界は仮の世界。あなた達のお母様風城 翠、私達のギルドマスターが、あなた達を守るために作り上げた世界なんです」
今まで騙していてごめんなさい。と言われ、明日香も動揺する。
「騙していたって言われても実感が湧かないから、謝られても困るだけなんだけど...」
「そうですね...まあ、分からないようにしていたのでその反応も仕方ないですけど...取り敢えず謝らせてください」
そのあとは異世界の説明や、記憶の解除方などを聞いていた。
「つまり、私達二人の血がお母さんが封印したえっと...強そうな神様の封印を解いちゃうってことだよね?」
「その認識で大体合ってますね...」
名前くらいは覚えていてほしいですが...と心の中で思ったが口には出さないでおく。
「それじゃあ、アリシア、マルモこれからよろしくね♪」
明日香にとっては初めての、アリシア達にとっては久しぶりの握手を交わした。
プロローグが無駄に長くなってしまいました...
作者も書きながら何故プロローグが3パートなのか考えてました(-_-;)
ともかくここまで読んでくれた皆様ありがとうございますm(__)m
ようやく次から本編です、次も読んでいただけるよう頑張ります。