動き出す漆黒、災厄の前兆
明日香達が、必死に七天龍に戦っている頃、空間の外れにある誰も寄り付かない場所で人知れず、動き出している闇のギルドがあった。
「ねえ、雅?今回の任務って雅が担当だったっけ?」
廊下で少女が一人話しかけると、どこからともなくか細い少女の声が聞こえてくる。
「…部屋以外でその名前で呼ばないで」
「はいはい、分かったわよ『漆黒の死神』第一強襲部隊隊長『殺龍真祖』のリゲル殿」
もう一人の少女がそう言うと、少女の声は「それなら、いい」と言って、その姿を見せる。
美しい銀色のロングヘアーを靡かせた、15歳位の少女だった。たが、その眼には全てを否定するような濁った光が宿っていた。
「それで、今日貴女はどうするの?第一特殊魔法部隊隊長『堕ちた白き翼』のアゲハ?」
暗闇の中に紛れるような漆黒の長い髪の少女に話しかける。
「う~ん…私は今日はフリーかな?で、リゲルは何?いつものが必要なの?」
アゲハが少し呆れ気味に言っているが、その声色は楽しげだった。暗闇の中ではリゲルの顔色は分かりにくいが、よく見るとほんのりと赤みを帯びている様だった。
「ぁぅ…そ、そう…今日は、激しめにお願い、して、いい?わ、たし…もう、げん、かいなの…!」
「そう言うなら、こっちに来て。ご要望通りたっぷり可愛がってあげるから♪」
アゲハに言われるがままにリゲルはアゲハにもたれ掛かり、「ふふ…♪」という声が聞こえた時には、リゲルの唇はアゲハに奪われていた。
「んん…ぅ、ぅん…んく、ぅぅ…」
「ふふ、ん…んぅ…ん、ふぅ…」
数十秒の長い口づけが終わると、リゲルはとろんとした目でアゲハにお願いをする。
「おねがい…もう、部屋に、連れてって…これ、以上は…中じゃないと、ダメ…」
リゲルのアゲハの服を掴む手は少し震えていた。まるで何かの禁断症状のように。
「何で?ここじゃダメな事でもするの?」
アゲハはそんなリゲルを弄ぶように焦らしていく。
「ぅぅ……そうだよぉ…ここじゃ、あっ、できない、んっ、ようなこと、アゲハと、陽奈としたいのぉ!」
「あれ?リゲルはここで自分の名前を呼ばないでって言ったのに」
アゲハは意地悪く、リゲルに聞いていると、リゲルはそろそろ限界のようで身体が小刻みに痙攣していた。
「ご、ごめんっ、な、さいっ…おね、がい…だからぁ、はやく…つづき、してっ」
アゲハも十分リゲルで遊んだのか「はいはい」とリゲルを自分の部屋へと連れ込んでいった。
因みにその数秒後にはリゲルらしき少女の喘ぎ声が廊下にも聞こえたとか。
「ったく…こっちの都合にもなれっての。あんなんじゃおちおち通れもしないじゃないか…」
二人が部屋に入った頃に、廊下の角から金髪の美女が歩いてきた。彼女の部屋は恐らくアゲハたちがいたところの奥にあったのだろう。
「これからこっちも襲撃任務の調整に入ろうとしてんのに、あの二人はなに廊下で堂々とイチャコラしてんのよ…」
「別に良いだろう。あれも確か龍殺しの一族の特性なのだろう?」
その隣に突然現れたのはくすんだ灰色の髪をしている老人だった。しかし、その赤い目は鋭い光を放っていて、見たものを萎縮させるような目だった。
「はん。だとしてももう少し目立たない場所でやってほしいものね。見てるこっちとしてはたまったもんじゃないわよ」
そう金髪の女は反論して。
「まあ、あんたにはお着きの女がたくさんいるんだから夜の事情には苦労しそうにないけどね」
皮肉混じりにそう言った刹那。姿も見えないほどの速度で何かが飛び出し、女の喉にナイフが突きつけられる。
「オルバ様の悪口は誰であろうと許さない」
ナイフを突きつけた正体は暗闇で分かりにくいが、褐色の肌と栗色の髪の見た目でいうと16位の少女だった。
「あら?別に悪口をいった覚えは無いのだけれど?」
「そんな事は―――」
「気にするな、お前は俺のものだアリナ。俺がそう感じたときにそのナイフで不埒者を切るといい」
アリナと呼ばれた少女は、こくんと頷くと闇に姿を溶かしていった。
その様子を見て、金髪の女は「ふ~ん」と感心して。
「随分と手なずけてる見たいね?『魔王の眼光』のオルバ?だから私にも一人くらいくれないかしら?最近人形の集まりが悪くて困ってるのよ」
「貴様に俺のものを渡す気はないぞ。貴様は捉えた人間を全員不死にして拷問を楽しもうとする人間だからな。そうだろう?『黒き檻の旅団』クロエ」
オルバの鋭い瞳に睨まれるクロエだが、あくまでも飄々とそれに返していく。
「別に、一回限りの使い潰しじゃあ無いんだから私は十分優しくしているのだけど?まああんたがそう言うことは分かっていたけど」
オルバが不機嫌そうに顔をしかめていると「そうそう」とクロエが話を続けてくる。
「『殲滅天使』の事なんだけど、研究部隊の方が覚醒の兆しが見えたって報告してきたわ」
「奴が目覚めるのか…だが、今まで全く反応が無かったのに何に影響したというんだ」
オルバが悩んでいると、カチャという音と共にアゲハの部屋の扉が開いて、リゲルが部屋から出てくる。会話の内容はよく聞こえないが、「次は任務遂行後ね」と言っているようだった。
「おい、『殺龍真祖』次のお前の任務は何だ」
リゲルは不機嫌そうにだが、オルバの質問には一応答えておく。
「異世界の双子の人龍を生死問わずでここに持ってくること。それがどうしたの?そろそろ私は準備に入りたいの」
そういう瞳には、アゲハと百合の花を咲かせていた時とは違い、最初の濁った光を目に宿していた。まるで、アゲハの前以外では心を殺しているかのように。
「成る程、礼を言う」
リゲルはクルリと踵を返して自分の部屋がある方向に歩いていった。
(あのギルドマスターの事だ、恐らく『殺龍真祖』の任務で持ってくるその二人の人龍が何か関係しているのだろう…)
それ以上は確証が持てないため、色々と考えを張り巡らせるがうまくまとまらない。取り敢えず、現状はリゲルが連れてくる双子が何かしらの関係があるということだろう。
(今は、ミュウが使役している大量の魔物の選別が先か……あの娘が役立たずという訳ではないが少しは数を考えて欲しいものだ…)
うっかり口にだそうものならクロエにからかわれかねない。オルバの苦労は人知れず自身に貯まっていくのだった。
生活に最低限必要なものしかない殺風景な部屋のベッドの上で悶えている少女がいた。
「はぅぅ……本当に激しくするんだから…」
リゲル―――真の名を天風 雅は自分の部屋のベッドにダイブして、今さっきアゲハ――陽奈と呼んだ少女と行ってきた出来事を思い返して、顔を赤くする。
「陽奈ってば、あんなに私の…ぅぅ、恥ずかしいよぉ……でも、気持ち良かった……」
それ以外にも一通り、そんなことをひとしきり考えて数十分はたち、雅も落ち着いてきたのか「よし!」と声をだし、深く深呼吸をして自分の身体を、心を任務を遂行するときの状態へと変えていく。
「…もう、大丈夫。これで、ちゃんと任務をこなせる」
そう呟き、壁に立て掛けてあった鞘と刀身が赤と黒にに染まった長刀を腰に下げて、漆黒の衣を身にまとう。
「私は、龍を殺す者、それが神と呼ばれていようと災厄と呼ばれていようと、私には大したことじゃない。これは私を救ってくれた陽奈のため、その任務が陽奈の為になるのなら、例え誰に恨まれてもやりとおす」
雅は誰に言うわけでもなく、ただ一人でそれを自分に言い聞かせるように言うと。扉を開き、任務へと向かう。
例え、それが二人の少女と命を奪い合う事になるとしても。
今回は敵サイドの方を書かせて頂きました。
次の話は予告通り時間が飛びますのでよろしくお願いします(実はこの時点で飛んでいますw)
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