終わりを告げる日常ー2
恐ろしくプロローグが長くなってすみませんm(__)m
次でプロローグが終わる筈です。これからは週1で20時から21時あたりに更新しようと考えています
明日香は、合図と同時に走り出し、剣を振るう。慎と信也は先程の攻撃を見ているので余裕とはいかずも受け止めた。明日香は受けられるとは思ってなかったので、少し驚いている。
「まさか、私の最初の一撃が受けられるとは思わなかったわ」
明日香が意外そうに言うと、慎が答えた。
「多分、僕達も先程の高速攻撃を見ていなければあれの餌食になっていたでしょうね」
慎がそう言うと明日香は一歩後ろに下がると、二人の剣がまるで一人が扱っているかのような動きで明日香に襲いかかる。
明日香は、それを見て楽しそうに笑い、剣を受け止めそのまま反撃を仕掛ける。
「今度は受けられるのかな~?」
明日香がさらに早く剣を慎と信也に向けて振るう。二人は先程よりも早くガードした筈なのに明日香の剣はそれを越えてきた。だが、深くは入らず決定打にはならなかった。
「今のは決まったと思ったんだけどなー」
「何時までも守ってばかりだと思わないでくださいよ」
慎は、信也の剣を持ち明日香に攻撃を仕掛ける。二人で戦っているからこそ行える攻撃だ、明日香は慎の戦いかたをみて久しぶりに面白い玩具を見つけてきたような笑顔で。
「面白いけど......そんなんじゃ、私には勝てないね♪」
明日香は攻撃を剣で受け流し懐へ飛び込む。慎は、明日香が近すぎるので剣でガードしようとしても出来ない。逆に明日香は突っ込んだ勢いも加えた強力な攻撃をはなった。
審判が慎の負けを告げる。信也は慎が負けると以外とあっさり降参してしまった。慎は明日香のもとへ行き。
「やはり明日香さんはお強いですね。僕たちもまだまだです」
「そんなことないよ?だって、私があなたの懐へ飛び込んだのはああしないと攻撃が当たりそうだったからだもの」
明日香がそう言うと慎は、嬉しそうに。
「明日香さんにそう言われるとは、僕たちも頑張ったかいがあったと言うものです」
では、僕たちはここで失礼します。と言って慎は、信也とともに外へ向かっていった。明日香も会場を出てクロードのもとへ向かい。
「ふふっ、約束通りすぐに終わらせてきたわよ♪」
明日香の自慢げな態度を見て、クロードは何かを言いたそうにしていたが特になにも言わず重要な事を伝える。
「お嬢様、今夜は藤堂様の家に泊まっていってはいかがでしょう?」
明日香はクロードが良いことをこういうときに言う記憶がなかったが、今回はそこまで悪くはなく心の中でホッとしていた。
明日香は少し考えて、クロードに返事をする。
「今日はもうやることってなかったっけ?」
明日香に聞かれ、クロードは手早く確認すると。
「はい、今日の予定はこれで終了です」
それを聞いて答えが決まったようで。
「分かったわ、今日は梓お姉ちゃんの家に泊まるね」
クロードは明日香の荷物をすでに用意していたようで、明日香に荷物を渡す。
「それでは、お嬢様行ってらっしゃいませ」
明日香はクロードの言葉を聞いて梓のところへ向かう。
「あ、お姉ちゃんみーつけた」
明日香の目の前に梓の姿が見えた。明日香が梓を呼ぶと、梓がこちらに向かって走ってくる。
「あーすーかー♪今日は私の家でお泊まりだね」
「そうだけど...あんまり変なことしないでよ?」
梓は任せときなさい!と自信満々に返事をするが、正直不安で仕方がなかった。前も同じことを言って夜、梓のとなりの部屋にいる明日香に夜這いしてきたのだ。
「今日は変なことしないから安心していいよ♪」
と、梓が明日香の心を読んだかのように答える。明日香も、梓の言うことを信じて梓の家に向かうために車に乗った。
しばらくすると車は梓の家に到着した。車から降りると、梓は門をいつも通り開こうとする。
だが、梓の本能の様なものがこの門を開けてはならないと忠告する。ファンタジーの世界で言うなら、まるで結界でも張ってあるかのような感覚だった。
明日香が少し不安そうに見ているなか、覚悟を決めて門を開けると。
―――――――目の前に見えるはずの梓の家が無くなっていた。
「うそ......でしょ......?」
梓の家の代わりに見えるのは崩れた瓦礫の山だけだった。辺りを探すと、明日香がなにかにつまづいて転ぶ。
「なに......?」
明日香が転んだ原因は転がっていた死体だった。
「ね、ねぇお姉ちゃん?こ、この人......死んでるの?」
明日香が震えた声で、既に息をひきとった人を見る。梓は頷くと周囲を確認する、どこで聞いたかは知らないが狙いは、明日香か自分だろうと考える。
「明日香、家を壊したやつの目的は私か明日香よ。バラバラになっては危険だから一緒に動きましょう」
明日香も分かったようで震える手で梓の服をつかんでいる。梓もこんな状況でなければ役得と喜べただろうが、今の状況にそんな余裕はない。
数分家の回りを探して何もなかったので家だったものの近くにいくことにした。すると震えていた明日香が口を開く。
「む、向こうの方に嫌な気配があるの......行くんだよね?」
いつもなら、明日香の言うことを聞いていたが今回ばかりはそうはいかず。私の後ろについてきてと、明日香に頼む。
明日香もこくんと、頷き梓についていこうとする。すると、目の前に先程別れたいないはずの人間がいた。
「まこととしんやがどうして...?まさか...!」
明日香は予想していたが、その言葉だけは聞きたくなかった。だが、二人の少年はそんなこと知るわけもなく。
「はい、これは僕たちがやらせてもらいました。でも、心配ありませんすぐに――――楽になれますから!」
慎が梓に向かって剣を降り下ろす。咄嗟に明日香はクロードから受け取った鞄の中から剣を取り出して受け止める。いつもの素振りようとは言え、万が一のために中には本物の真剣が仕込まれているのだ。
「慎...何でこんなことするの!?」
明日香が叫ぶと、慎はそんなこともわからないのかといった表情で。
「まさか、あなた達の母親が何をしたか分かってないんですか?」
慎の言った言葉を聞いて明日香は、何をしたかではなく何故慎が明日香の母親について知っているかを聞きたかった。
「どうしてまことが私のお母さんの事を知っているの!?」
慎は、明日香たちが自分の母親に関する記憶が全て無くなっていると気づいて、思わず笑ってしまった。明日香たちは突然慎が笑いだし。
「な、何がおかしいの!?」
「いや、すいません。まさか自分達の母親の記憶が全て消えているとは思わなかったので」
だから、と慎は笑顔で続ける。
「大人しく二人とも僕たちに連れ去られてください。今なら貴女達の綺麗な体にキズをつけなくて済みますから」
その余りに理不尽な要求に梓は震える身体を必死で押さえ込みながら。
「もし、私達が聞かなかったらどうなるわけ?」
慎はそうですね...と、少し考えた後よしと言って信じられない言葉を口にした。
「では、貴女達の一番大切なもの...と言っても多分、貴女たちはお互いが一番大切なものと言いそうですので、お二人の『初めて』を貰いましょうか」
明日香たちはそんなことを言われ、恐ろしくなる。今すぐ慎達に着いていけばそうなることはないだろう。だが、それは一時的なもので連れ去られた後には何をされるかわからない。それこそ、慎のいっていた通りのことになってしまうかもしれない。だから、明日香は覚悟を決めて慎に向かって剣を構える。
「それが、貴女達の答えですか...仕方ありません。では、動けないように痛め付けてあげますよ!」
慎が剣を振ると同時に明日香の足元に陣の様なものが浮かび上がる。
「痺れて貰いましょうか『パラライズパニッシャー』」
明日香の足元から電撃が走り明日香の身体の自由を奪う。梓が急いで明日香を守ろうと明日香のもとに向かおうとすると、後ろから誰かに刺された感触があった。
「な.....に......?」
梓の後ろに立っていたのは信也だった。刺したものは恐らく毒針だろう、梓は力が抜け地面に崩れ落ちる。明日香は梓が倒れたのを見て、隙が出来てしまう。
「余所見するなんていけませんよ」
目の前で明日香が梓をかばい慎に斬られる。梓はそれをどうすることもできず見ることしかできなかった。
「いやあぁぁぁぁっっっっっ!!!」
明日香は、体を切られて血を大量に流していた。梓が正常な思考を忘れそうになるとき明日香が。
「お...ねぇ.......ちゃん...だい......じょう......ぶ...?」
「明日香こそ早く血を止めないと......!!」
梓は急いで止血をしようとするが、身体を這いずる事でしか動かすことができない。
「おや?毒が回りきっていなかったんでしょうか?まだ動けるんですね」
(どうして...私には明日香を守る力がないの......?また......守れないの?私の力が足りないから...)
梓の目から涙がこぼれる。そして、梓の中の感情が爆発した。
(もう、みんな死んじゃえ......何もかも壊して壊して壊して壊して壊して壊し尽くしちゃえ......)
梓の中で何かが壊れた音がした。同時に頭の中に全ての過去の情報が流れ込んできた。
「ふふ、あはっ、アハハハハハハハハハハハハハハッ!!みーんな思い出した。魔法の使い方だって思い出したよ」
明日香を緑色の光に包まれる。すると、明日香の傷が塞がっていき、明日香の呼吸が落ち着く。
「もう大丈夫だよ......明日香」
梓は明日香を傷つけた二人を見て、魔方陣を作り上げる。
「明日香を傷つけたあなた達に用は無いわ。今すぐ土に還りなさい」
慎は今までとは全く違う梓を見て、少し興奮している。
「残念ですけど、そう簡単に死ぬわけにはいかないんですよ!」
慎は梓に一気に近づく。どんなに魔法使いも接近戦にはあまり強くない、ということを知っているからだ。
「近づけば私が魔法を使わないと思ったの?」
梓の足元に赤い魔方陣が浮かび、その外側にも青い魔方陣が浮かんでいた。
「『氷獄壁』『炎陣壁』
魔法が発動し、絶対零度の氷壁が作り上げられる。人間はおろか生物でさえも凍死する壁を梓は、逆の性質をもった火属性の魔法で相殺していた。
梓は一瞬で判断して後ろへ飛んだ慎を見て、少し驚く。
「へぇ~、今の普通の戦士なら引っ掛かって絶対死んじゃってたのに」
「残念ですけど、この程度で死んでいたら僕たちは今頃骨も残りませんよ」
明日香の後ろから信也が襲いかかる。梓は冷静に魔方陣を構築し。
「それじゃあ、私の後ろは取れないわよ『狐火』」
梓の作り出した魔方陣から高速で炎が放たれ、信也の肩を撃ち抜く。
「......っ!グッ...」
「どう?痛い?明日香を傷つけたのだから、容赦はしないって言ったわよね?」
炎で肩を射抜かれた信也は、激痛で動きを封じられた。慎は小さく舌打ちをして。
「この際、仕方ありませんね...形振り構っている場合ではなさそうですので、こちらの姿で相手をさせて貰いますよ!」
慎の身体が震え、肉体が人間とは違う別のものに代わり始める。数秒後には、慎はいわゆる獣人と言われるものになっていた。
「この姿だと、加減ができなくて困りますが死ななければ問題ないでしょう」
そう言って慎は巨大な爪のついた手を降り下ろす。梓はそれを迎え撃とうとした瞬間、甲高い金属音とともに爪が弾かれた。梓と慎の間に入ったのは、梓とあまり歳が変わらなさそうな茶髪のツインテールの少女と銀髪のいかにもインドア派というオーラを出している少女だった。
「ふ~ようやくこっちの世界に繋がったわ。後で覚えておきなさいよ」
「そんなに怒んないでよ。マルモの部屋の魔導書を勝手に動かしたの謝るから」
銀髪の少女がマルモというのだろう。そして、ツインテールの少女は獣人となった慎の爪をまるで怒ったときの子供をあやすときのような余裕さで攻撃を受け止めている。
「貴女が藤堂梓で間違いないわね?」
梓は何が起こっているかいまいち理解できていないが、取りあえず頷いた。少女は「よし、ならあってるわ」と言うと。
「細かい所は今は省くけど、あなた達を守りに来たわ」