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黒薔薇の騎士団  作者: すずしろ
E-2 強くなるために
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梓の特訓ー2

この頃調子がいいのか今回も少し長めとなっております。

 「で?今日は何を殪しに行けばいいんですか?」

 風に黒髪を揺らしながら、梓はまるで何時もやっていることの様に聞いている。

 「む~…んくっ、今日はそうね…渓谷にいる『デュアルドラグーン』を殪してきてもらうわ」

 マルモの前半の妙な声は、前に持ってきたシーサーペントを焼いたものを食べていたからだ。あの戦いから一週間は経つが、二人は料理に工夫を重ねながらひたすら食べている。味こそ悪いものではなくとも、ずっと同じものを食べていて飽きない人などそう多くない。

 「今回は殪すついでに野菜と果物持って来ないとそろそろストックがヤバイので、今日は少し遅くなりますよ」

 はむっとかぶり付きながら梓は現状の食料状況を考える。肉は、シーサーペントの肉が有り余るほどあるので当分心配は要らない、問題は野菜や果物といった所だ。偏った食事で体調を崩してしまっていては本末転倒だ。その為にも結構な量欲しいのだが一回で手にはいる量はどうしても要領上、あまり多く手に入れることができない。

 「分かったわ。一応私の『箱』の中に移しておきなさい」

 そう言って箱を呼び出すと、梓も同じく箱を呼び出す。

 箱には繋げると、繋げた箱の中に容れてあるものを移すことができるのだ。

 「これで良いかな?」

 梓の箱の中のものをあらかたマルモの箱に移しかえる。マルモも箱の中に入っていることを確認して。

 「うん、ちゃんと入っているわ。じゃあ死なないように気を付けてね」

 随分と物騒な見送りだが、実際にそうなのだからなんとも言えない。が、頑張るわねと苦笑混じりに答えて渓谷に向かう。


 「ふぅ…漸く着いた…」

 私が着いたときには多分一時間は経っていました。だって、私が出発した時にはまだ太陽は地面に近い位置にあったのに今ではかなり高い場所まで太陽が上がっていますから。

 「さて…まずは、野菜達を回収しますか!」

 取り敢えず野菜の有りそうな場所を手当たり次第に探します。ここの野菜は分かりづらいところに生えていたりするので、見つけるなら崖の隙間も探すくらいの気持ちでないと見つかりません。

 「あ、やった♪早速げっと~」

 意外と簡単に見つかったのは『スカイリーフ』です。キャベツとレタスを足して二で割ったような感じがします。私が個人的に狙っているのは『ホワイトバード』のミルクと『クリフツリー』の樹液です。樹液といっても、味はカラメルのような味がするので普通に美味しかったりします。

 察しのいい人はこれで私が何を作ろうとしているかは分かりますよね?

 そうです。何を隠そう、私はプリンが大好きなんです!少なくとも三食プリンが付いていても全く飽きないくらいには好きです。

 因みに明日香はもっと好きですよ?具体的には明日香が問題無いなら夜の遊びも一緒にやりたいくらい大好きです!……流石にそれは明日香が許してくれないので今は諦めますが…何時かは明日香とやりたいな~…夜の遊び…

 「はっ!?私、一体何を言って…」

 今回の目的は明日香の魅力を語ることじゃなくて、野菜とプリンの材料を見つけて『デュアルドラグーン』を殪すことでしたね。

 危うく明日香の魅力をひたすら語り続けるところでした…明日香…恐ろしい子!


 そろそろ真面目に見つけにいかないと不味いので、きちんと探すことにします。

 「ふふ、『ホワイトバード』はっけ~ん♪」

 アイツは警戒心が強いので気付かれない様に一撃で仕留めます。もちろん、ミルクの為なので雷魔法や炎魔法は使いませんよ。

 「まずは、『透過煙ステルススモーク』」

 無属性と光属性の二重属性魔法で気配と匂いを消して接近します。使うのはあまり傷つけない風魔法で決まりですね。

 出来るだけ近づいて、確実に当てにいきましょう。威力を押さえるぶん飛距離も落ちてしまいますから。

 『空弾エアバレット

 声を出したことによって気づかれますが、その時にはもう遅いです。魔法がヒットしてホワイトバードは地面に落ちそうになりますが、私の目的はホワイトバードのミルクなので、殺す必要がないので風魔法で優しく受け止めてあげます。といっても二メートル位ある結構大きな鳥なので意外と魔法の制御が大変です…

 「ごめんなさいね。でもあなたが逃げてしまうからこうするしかなかったの…少しあなたのミルク分けてもらいたいのだけれど良いかしら?」

 私に敵意が無いことを分かってくれたのか一鳴きすると、私を巣の方向でしょうか?に連れていってくれます。

 「おお…これがホワイトバードの……凄い…」

 ホワイトバードのミルクは特別とマルモさんに聞いていましたが、まさか氷みたいになっているなんて…しかもそれが巣の奥にかなりの量転がっていたんです。

 「これ…もらっていってもいいんですか?」

 言葉が通じるのかは分かりませんが、聞いてみると大きめの塊を持ってきてくれました。

 「ありがとう♪」

 優しく頭を撫でてあげると、気持ちいいのかきゅるる~と可愛い声で鳴いてます。これで、今日の目標の一つ目は完了ですね。


 さて、ここも渓谷と一口に言っても色んなところがあるんですよね。と言うかここって渓谷と言うよりか見た目がどう見ても崖なんですよね…それを無理やり渓谷っていっている感じがしなくもないですが、渓谷は渓谷です!細かくは考えないようにしましょう。

 「次は『クリフツリー』の樹液ですね。これはそこまで大変じゃないので問題ないですね」

 クリフツリーは崖から延びるように生えているので目立ちますし、その樹液には別の作物を育てる効果もあるの野菜も探せてで一石二鳥です。

 ただ、太陽がもう頂点近くまで上っているのでそろそろお昼の時間です。今日は…っていうか今日もシーサーペントのお肉が使われていますが、美味しいのでまぁ問題はありません。と言うわけで今日はサンドイッチのようですね、野菜も入っていますしバランスも良さそうです。


 サンドイッチは美味しくいただいて、二回戦の開始です。

 「早速発見したわ♪」

 そんな事言っていたらすぐに見つかりました。見た目はクヌギとかに近いような感じですね、それでは早速樹液を頂きましょう。

 『顕現コール・ブランディッシュ』

 呼び出したのは薄青色の刃を持つツインタガーです。刃の部分は薄いですけどかなりの切れ味があるので、慎重に…

 「よし!これでクリフツリーの樹液回収完了っと。後はこの辺の野菜と『デュアルドラグーン』だけね」

 順調に野菜も回収します。今回見つけたのは前に見つけた『スカイリーフ』と今見つけた『風穴草』、『グロウタロス』の三つですね『風穴草』はハーブの代わりになるお役立ち草、『グロウタロス』は凄く成長の速いトマトの様なものです。

 これで残りは『デュアルドラグーン』を探して殪すだけです。私もそれなりに強くなっているはずなので、その辺の敵なら苦労せずに殪せますけどさてどうなることやら…

 「―――っ!今の魔力…あれが『デュアルドラグーン』…?」

 上を向くといたのが、名前通り二つの首を持つ竜です。しかも体を覆っている深緑色の鱗一枚一枚が魔力を帯びていて、相当固そうですね。

 「だけど…やるしかないよね!」


 「こっちに気づきなさいっ!」

 梓は手に持っていたブランディッシュを投げつける。ダメージは与えられなくとも、相手は梓に気づき滑空しながら向かってくる、この渓谷の幅ではデュアルドラグーンの体は普通ならば入らないのだが、強引に崖を削って地面に降り立つ。

 梓は即座に呪文の詠唱にかかる。今は手加減の必要がないため相手を殪す為の高威力呪文だ。

 「初っ端から飛ばしていくよ!『ボルトウインド』!『アイスブレイド』!」

 雷属性と風属性の二重属性魔法と水属性と金属性の二重属性魔法を同時に放つ。雷を帯びた鎌鼬と氷の剣は相手に向かい飛んでいく筈だった。

 梓が魔法を放ったタイミングを狙って、相手は突進してきたのだ。ただの魔物ならいざ知らず相手はドラゴン、しかもかなりの大型だ。いくら戦闘経験を積み重ねているとはいえ、自分より遥かに大きな魔物に突進されて一瞬も動揺せず攻撃を仕掛けるなど、今の梓には出来ることではない。

 相手の思惑通り、梓はごく一瞬だが驚き狙いを僅かに外す。そのせいで相手の体に直撃する事はなく、鱗の魔力壁によって決定打とならず目立ったダメージは見られなかった。梓が魔力を見た限りでは体の中心は魔力の反応が少なかったので、そこを狙うつもりだったが見事に相手にしてやられた。そのまま突進を緩めるはずもなく、梓に向かい突撃する。梓は咄嗟に防御壁を張るが、その程度で勢いを殺せるはずもなく壁に叩きつけられる。

 「ッ!グウッ!?―――ッゲホッゲホッ!」

 マンガならば崖に自分の形が残るような速度で叩きつけられ、地面に落ちる。相手もそれを見て攻撃を止めるわけがないので、身体の痛みを堪え立ち上がる。

 するとデュアルドラグーンが。

 『クハハハッ!わが一撃に耐えるとは中々頑丈な小娘ではないか!』

 (こいつ…話すことができるの…!?)

 マルモの話によると、魔物のなかでも会話ができる魔物は同種の魔物の中でも強力な魔物のだから気を付けろと忠告されていたが、まさか今回の相手が会話ができるなど考えられなかった。何故なら会話ができる魔物はSSSランクを越えてからだ、それなのにこの竜のランクはSS+程度だと言っていた。


 現時点で考えられる可能性は二つ。一つはあえてマルモがこの事を話さなかった。もう一つは、こいつが『特殊個体』だという可能性だ。特殊個体は同種同士の交配で極稀に産まれてくる個体で通常のランクより1から2高い強さになるとマルモが言っていた。

 前者は恐らくあり得ない、少なくともマルモは梓が死なない程度の相手を考えて選んでいるからだ。そうなると後者ということになるが、SS+の『特殊個体』を今の実力で倒せることができるかだ。一度戻りマルモにこの事を報告すれば、今回の事は大目に見てくれるだろう。だが、梓の考えたことは。

 (このくらいの敵が殪せないで明日香が守れるわけないじゃない…!)

 今は応急処置程度の回復魔法で痛みをやわらげる。

 「さぁ、さっさと来なさい。私が相手をしてあげるわ」

 軽く挑発するようにいった言葉を聞いて少しは頭に来たのか。

 『良いだろう…だが今、お前は傷を負っているからハンデをつけてやろう』

 そう言うと四枚の翼が封じられる。自分の長所を封じるという余りにも露骨なハンデに隠された挑発に。

 「それで後悔しても知らないんだからね!」


 

気に入って頂けたなら感想、意見等よろしくお願い致しますm(__)m

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