終わりを告げる日常ー1
深緑の人形師です。これが始めての作品なので色々と読みづらい部分もあるかもしれませんがよろしくお願い致しますm(__)m
とある街の高級住宅街にある豪邸。その中から少女の声と共に素振りの音が聞こえる。
「1998,1999,2000!!」
少女は自分の腕に一キロの重りをつけながら素振りを行っていたのだ。
「これで今日の素振りはしゅ~りょ~♪」
少女は、嬉しそうに自分の素振り用の剣と重りを芝生に置く。そのあと、自分も芝生の上に寝転がる。しばらくすると、屋敷の方から老年の執事がやって来て少女の様子を見ると。
「明日香お嬢様、あなたも明日で15歳になるのですから、少しは礼儀作法を身に付けてください」
明日香と呼ばれた少女は、執事に言われてしぶしぶ、といった感じで立ち上がる。
「それでクロード、今日の予定は何なの?」
クロード呼ばれた執事は、明日香の使っていた重りと剣を持ちながら。
「今日の予定は、午後1時半から前回の大会の優勝者との特別試合と今日は珍しく挑戦者の方々たちとの試合です」
明日香はクロードに予定を聞いて、すごい面倒くさいという気分になった。明日香自身は歳は15と、まだ幼いが剣の実力は達人に近い人間でも軽く倒せてしまえる相当な強者なのだ。
普通の人では相手にならないと言って、自分が達人のみが参加できる大会を開いたのだが、その優勝者さえも軽く倒してしまい、最早明日香と戦う相手は明日香の中では絶対に勝てないと思っている。
「あぁ、それと今日は藤堂家のお嬢様も見にいらっしゃるようですよ」
クロードが言った藤堂家のお嬢様という言葉に明日香は、ピクッと反応して。
「今日は梓お姉ちゃんも見に来るの!?」
先程とは全く違う態度を取っていた。明日香の言っている「梓お姉ちゃん」という人物は、明日香が初めて社交パーティーに出たときに出会った二つ上の少女の名前だ。
明日香は一度も会ったことは無いはずなのに、その少女をまるで自分の本物の姉の用に思えたのだ。
と言うものの、明日香には6歳より昔の記憶が無い。それに明日香は元々孤児院に預けられていたのだ、それが明日香の一番古い記憶だ。明日香が8歳の時、御影グループに養子として引き取られて現在に至る。
「う~ん...何処かで梓お姉ちゃんと会ったことがあるような気がするのは気のせいかな...?」
明日香がうなっているとクロードが。
「明日香お嬢様、そろそろ用意をして頂いてもよろしいですか?」
明日香はそう言われて、 時間を見ると時計はすでに12時半を指していた。明日香は慌てて「どうしよう…」とおろおろしていると。
「お嬢様の着替えは用意してあるので着替えて待っていてください。すぐに車で迎えに上がります」
「わ、分かったわ。お昼は車の中で食べるから」
クロードは承知しましたと一言言うと、屋敷の方へ戻っていった。明日香も塀の近くで服を着替える、運動をするためのジャージのようなものではなく、外出用の白いワンピースを着る。
まるで、様子を見ていたかの様なタイミングでクロードが車を止める。明日香が扉を開けて急いで席に座る。
「クロード!ここから会場までどれくらいかかる?」
明日香が置いてあったサンドイッチを手にとってクロードに聞く。
「この車なら三十分もあれば着きます」
クロードの答えを聞いて、わかったと短く答えるとサンドイッチを 食べ始める。
しばらくして昼食も食べ終わり、窓の外を見ていると大きめの武道館の様なものが見えた。
「お嬢様、到着しました。そろそろ時間を気にして動けるようにしてください」
クロードにそう言われて、う~とうなっていると裏口の方向に車がバレないように止めてあるのが見えた。
(あれって、確か梓お姉ちゃんが乗ってた車だったはず...やっぱり来てくれてるんだ!)
そう思うと、明日香もこのつまらない勝負にやる気が出るというもので。
「梓お姉ちゃんの前ならかっこよく勝たなきゃね♪」
と、思っていることが口から漏れているのだがクロードは気にせず。車を止めて明日香を降ろす。
先にいってるわね、とクロードに伝えて試合会場に向かうと、黒髪と茶髪の二人の少年がいた少年たちは明日香を見ると。
「あなたが御影明日香さんですね?」
「うん、そうだよ。あなたたちが私の今日の勝負の相手?」
明日香がそう訪ねると、黒髪の少年が。
「はい、僕の名前は南宮慎、後ろの茶髪の方は僕の友人で秋篠信也です」
以後お見知りおきを、と慎が爽やかな笑顔で言うと明日香も笑顔で。
「まこととしんやね。今日はよろしくね。私は用事があるから今度は試合で会いましょう」
明日香は、そう言って二人のもとを去った。
明日香の後ろ姿を見ながら慎と信也は口から笑みがこぼれる。
「あんな小娘とは聞いていなかったが、あいつを誘拐するだけで一生遊んで暮らせるような大金がてに入るんだ...」
受けない訳にはいかねぇよな信?と、慎が問いかける。
「......俺はまた汚れなければならないのか......?」
「心配すんなよ。......汚れ仕事は俺の請け負いだ」
明日香は、武道館の裏口から入ると、突然誰かに抱きつかれた、と同時に胸を揉まれる。
「ふにゃあ!?」
「あーすーかー♪」
少女が、明日香に抱きついていた。少女は明日香より少し年上だろうか。セミロングの明日香よりも少し長い黒髪のロングヘアーで大人びた少女だった。
「あ...そこ......だ...め...ふぁっ!?」
「んーやっぱり明日香のちっぱいは可愛いわねー」
「だ...か...らぁ...ちっ...ぱいってぇ...いう...な...ぁ」
明日香は、否定しながら身をよじる。黒髪の少女は明日香を離そうとせず、明日香の胸を揉み続けている。しばらく胸を揉んでいると満足したようで、明日香のからだから離れる。
「梓お姉ちゃん?やめてって私言ったはずだけど......?」
「ご、ゴメンね...許して...ね?」
梓と呼ばれた少女が、手を当てて明日香にお願いする。その様子は他の人から見れば、美少女同士のかわいい喧嘩なのだが。
「これで何度目だっけ?しかも前にやったのってまだ二日前だよ......」
明日香は呆れぎみにそう言うと、梓がじゃあ、許してくれるの!?などと言っていたので。
「誰も許すなんていってないよ♪」
梓は嫌な予感がするので一応明日香に聞いてみる。
「あ、あの...じゃあ、どうしたら許してくれるの?」
明日香はかわいらしい笑顔で明日香にお願いする。ただ、目はあまり笑ってないように見えた。
「うーん、じゃあケーキバイキングで許してあげる♪」
梓は仕方ないと言った表情で頷く。明日香がケーキバイキングで食べ始めると、周りの人間が軽く引いてしまうほどの量を明日香一人で食べてしまうのだ。
(今週の私のお金は明日香のお陰でケーキに消えそうね......)
そんなやり取りをしていると、そろそろ試合が始まると言うアナウンスが流れた。明日香は梓と別れて選手用の控え室に向かう。部屋に向かうと、部屋の前でクロードが待っていた。
「お嬢様、今日の試合なるべく早く終わらせることは可能ですか?」
クロードがそんなことを聞いてきたので明日香は、ブイサインをして。
「そんなことよゆーに決まってるじゃない♪で、どれくらいで終わらせればいいの?」
「観客に怪しまれないギリギリのラインでお願いします」
明日香は「おーけー」と言うと控え室のなかに入っていった。
明日香は部屋のなかで先程のクロードの言ったことを考えていた。クロードがあんなことを言うときは、決まってあまりいいことはないのだ。明日香の事ならば問題ないのだが、クロードの事となれば話は変わってくる。
「ま、考えてても仕方ないよね。さっさと終わらせれば良いんだし」
明日香は、今やるべきことをするべきだと考えた。しばらくすると、もう一度アナウンスがあり明日香は会場へと向かう。
会場内はすでに人で満員になっており、明日香が入ると辺りから拍手や歓声が飛び交う。明日香は周りの人に対しても笑顔で振る舞う。すると、クロードの言っていた大会の優勝者なのだろう、見るからにがたいのよい男が現れた。
「何だ、お前?おい、小娘がこんな所に入り込んでいるぞ」
男がそんな事を言っているので明日香は、むっとなって少し怒り気味に。
「私が御影明日香なんだけど?」
明日香がそう言うと、男は大声で笑い明日香に向かって。
「何をバカなことを、史上最強と呼ばれる剣士がこんな胸もない小娘な訳があるか」
男が明日香に対して一番言ってはいけないことを言ってしまった。明日香は笑顔だが、両手が震えている。明日香の試合を見たことがある観客は、全員男の運命が決まったと確信した。
「ねぇ、審判さん。早く始めましょう?」
審判はそう言われ、急いで用意をする。男はまだ目の前の少女、が御影明日香なのだと気づいていなく。審判が用意を終わらせ、明日香が男の対面に立つと。
「貴様...ふざけているのか?どうして俺がこんな小娘を相手にしなければならない」
「その言葉、一生後悔させてあげる...!」
審判が始め!と声を出した刹那、まるで銃弾のような音がホールじゅうにひびく。次の瞬間、男はすでに倒れていた。前にも明日香の事を分からず追い返そうとして、試合開始と同時に相手を倒す事があった。
「その人、どこかに運んどいて」
審判は特に驚くこともなく、人を呼び男を運ぶ。しばらくすると先程であった慎と信也が歩いてきた。明日香の方へ慎が近づき。
「先程の試合、目で終えないほどの早さでしたね。流石明日香さんです」
「別に、私の事を勝手に誤解したからお仕置きしただけ」
慎は、成る程と言って、「いい勝負にしましょう」ともとの位置に戻っていった。
(あの二人...今の男の人より強いような気がするし、もう少し本気でやってもいいよね)
審判の開始の合図の前に明日香は、もう一本の剣を持つ。明日香は普段のあまり強くない相手には剣一本で戦うが、強いと思った相手には本来のスタイルの二刀流で戦う。周りの客は二刀流を見る機会などほとんどないので会場も盛り上がっている。
そして、審判が試合開始を告げる。
「さぁ、始めましょう♪」
最後まで読んでいただいてありがとうございます。次回からは出来るだけ一週間以内に投稿したいと思います。誤字、脱字や感想、アドバイスをもらえたらとても嬉しいです。