小話*2(どうしようもなく低糖)
儀式の後の会話にて
◇◆◇◆◇◆◇
イリス(以下→イ)「そう言えば、アンさん」
アン(以下→ア)「なぁに?」
イ「さっきエルフの付き人になったらって言ってましたよね?」
ア「ああ、あれね」
イ「あれってどういう意味ですか?」
レイン(以下→レ)「それ、俺も気になってた(…婆さんには鈍いって言われるわ、兄上には武術一筋って言われるわ…納得いかねぇ)」
ア「あらあら(生暖かい目)」
レ「……義姉上までそういう目で見るの止めてください」
ア「イリスちゃん、頑張ってね。あの子勘は鋭いんだけど、物凄く鈍いところがあるから」
イ「え?そうですか?(サラッと言い切ったなぁ…何を頑張ればいいんだろう)」
ア「あのね、“当主の”ってつかなければ付き人には別の意味があるの」
イ「?」
レ「(そんなものあったか?)」
ア「“付き人”には私達の古いの言葉で“家人”とか“家族”って意味も含まれるの」
イ「家族……」
レ「…………!」←やっと気づいた模様。
ア「とくに家族の中でも、お―――――」
レ「(ガシッとイリスの肩を掴んで方向転換)イリス、お前そういや徹夜してたな!」
イ「え!?それはそうだけど、今はアンさんの話のほうが…」
レ「それは知らなくても生きていける!弱いお前には休息が必要だ!(ヤケクソ)」
イ「異議あり!言っておくけど私はそんなにか弱くないわよ?自分と比べて言ってるなら比較対象がおかしいのよ……」
レ「そうか。そこのところ今からじっくり論じよう」
ズルズルズルズル。
レインになんだかんだと巧く言いくるめられながら、イリスは退出した。
ア「……まったく。恋愛方面でヘタレって……血筋なのかしら……」
◆◇◆◇◆◇◆
イ「うーん…よく寝た…」
レインの言うまま客室にまんまと連れられて、ぐっすりと眠れたイリス。
イ「……家族かぁ……」
どうやら寝る前に聞いたアンの言葉がかなり心に響いた様子だ。
ゆっくりと客室から廊下に出るとふわわーんと優しい料理の匂いが漂っていた。
くぅと控え目にお腹の音がした。
イ「(恥ずかしい…ひとが居なくて良かった)」
ルールル(以下→ル)「おや。おはようイリス」
イ「(ビクッ)あ!おはようございます」
もう一度くぅとお腹が鳴った。
ル「お腹がすいたみたいだね。適当にここのをつまんでていいよ」
イ「(は、恥ずかしい……!)あ、いえでも皆さんが…来てから一緒に…」
止めとばかりにもう一度、ぐぅぅと大きくお腹が鳴った。
ル「(じーーーーっ)」微笑み+無言の圧力。
イ「い、いただきます……」
ル「どうぞどうぞ」
イ「もくもく(……美味しい)」
ル「(小動物みたいに食べるなぁ…あ、シチューも温めよう)」
ルールルは料理を再開した。
イ「コクコク(じっくりと料理を続けるルールルを見た)」
ル「ことこと(←シチュー温め)」
イ「(こういう雰囲気、懐かしいなぁ……家庭的というか………。あ。そうだ。)
ルールルさん」
ル「んー?なんだい?」
イ「あの、“付き人”にはどうやったらなれるんですか?」
ル「え?(“付き人”ってエルフの付き人だよね?)」
イ「ご当主以外の“付き人”って“家族”って意味なんですよね?なにか具体的な手続きがあるのかなぁって…」
ル「うちの里なら長老と私が承認したら“付き人”にはなれるよ」
イ「え!?本当ですか!?(期待に満ちた目)」
ル「……もしかして、レインの“付き人”になりたかったり、する?(期待に満ちた目)」
イ「え?レインじゃないとダメなんですか?」
ル「(……ん?あれ?)
えーっと他に誰がいるんだい?」
イ「わ、笑わないでくださいね……あの、ご当主以外ということなので……一番に考え付いたのはお婆様だったんですけど……やっぱり図々しいですよね……」
ル「(笑わないでっていうか笑えない。なんか斜め上に勘違いが発生してるような…)
因みに長老とはどういった関係になると考えたんだい?」
イ「え、と……できたら里親として慕わせてもらえたら……と思ってました……または薬草の知識を教えてもらう師匠として仰げたら……とも……」
ル「……。
(嗚呼。完璧に勘違いしてる。ちゃんと教えてあげた方が今後の為だよね……)」
イ「あ、あの?
(ル、ルールルさん黙っちゃった……っ!やっぱり図々しいって思われたのかも……っ!)」
ル「…………。
(いやでも待てよ。私に似てアイツもこっち方面では苦労するだろう……。悪いが勘違いさせたまま外堀を埋めて……)」
イ「ルールル、さん?
(い、言わなきゃ良かった……!)(涙目)」
ル「………………………。
(よし。可愛い弟のためにここはお兄ちゃんが一肌脱ごう!そしてこれをネタにいつか思う存分からかおう!←本音)
……イリス、いいかい?“付き人”っていうのはね」
イ「すみません!もう“付き人”とか図々しいことは言いません!!」
ル「え!?」
イ「今回受け入れてくださったことだけでも十分だったんです……ただちょっとだけ家族って言葉にまた欲が出てきちゃって…」
ル「あ、いやイリス、あのね」
イ「でも大丈夫です!家族は……まぁ形じゃないですよね!
とりあえずはこの里でお役に立てるように努力することから始めます!そしていつか…」
ル「ちょ、ちょっと待った!」
この後ルールルは図々しいと思っていないこと、付き人にならなくてもお婆様は薬草の師匠だろうが里親だろうがすぐになってくれるだろうことを伝えるのに精一杯で、“付き人”の意味を解説するには至らなかった。とか。
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こうしてイリスは“付き人”の意味を誤解したまま……
レインのヘタレ苦難生活は始まる
*付き人の意味*
あえて書かなくてもいいかなぁとは思ったんですが……。
エルフの付き人とは古い言葉で当主の“付き人”よりも昔から有りました。
エルフたちは30年に一度やって来るましろきものを言い表す用語として、親愛の情をこめて家族(主にお嫁さん)を指す“付き人”と言うようになりました。
今では逆に本来の“付き人”という意味は使われなくなり、当主の付き人(=ましろきもの)を指すようになりました。




