小話*1(糖度は限りなくゼロに近い)
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“花喰い”対峙後、レインとイリスの会話
「良く考えてみりゃ名前の割にあのズタ袋は物騒だったな…」
「え?そう?あのズタ袋は殺傷能力はないわよ?痺れて数時間動けなくなるだけで」
「……『あのズタ袋は』ってことは…もしかして他にもなにかあるのか」
「うん」
「因みに、どんな?」
「えーっと今回は対獣用で即席で作ったからそんなに数はないんだけど。くしゃみ痺れ薬・ふにゃふにゃ眠り薬・あら不思議何してたのかしら薬の三種類の小袋よ。あのズタ袋以外は時間がなくて、こんな小さいものしか作れなかったの」
「……お前、ネーミングセンス悪いな。くしゃみ痺れ薬がまともに聞こえるとは…」
「しみじみ言わないで」
「それはともかく」
「(無視ですか)」
「小袋は本当に小さいな。お前の片手でも軽く握りこめる……これじゃ重さがなくてあんまり飛ばないんじゃないか?」
「その点に関しては大丈夫。小袋にはちゃんと中心に小石を入れて投げやすくしてあるわ。ほら持ってみて」
「…へぇ。じゃあそのままでも石礫ぐらいの威力はあるのか…お手軽で役に立つ武器だな」
「言っておくけど、レインが投げるのと私が投げるのとじゃぜんぜん威力が違うからね」
「……ぜんぜんダメじゃねぇか。そんな物を頼りに森の中歩こうとしてたのか」
「暗に私の石礫だと役に立たないって判断したわよね?」
「そんなことより」
「(都合が悪いと無視するのね……また顔挟んで無理矢理に目を合わせてやろうかしら……)」
「それぞれの小袋の効能は?」
「(まぁ今回はいいか…)……くしゃみ痺れ薬はもういいわよね?ふにゃふにゃ眠り薬は筋肉が弛緩して身体に力が入らなくなって、肺で吸い込めば眠気が襲うわ」
「……ほう(…字面だけ追うとやっぱり物騒な気がする)」
「ただし難点は皮膚に強くすり込んだり、傷口に直接じゃないと筋肉弛緩の効果はあまりないわ」
「それじゃあ意味がなくねぇか?毛がある獣にも甲殻の有る生き物にもほとんど障害にならないだろ」
「人にも振りかけただけじゃあまり効果はでないわ。多分エルフにも。このふにゃふにゃ薬は手負いの獣用の小袋なの。怪我すると気が立って暴れてしまうでしょ?それを回避する即席の麻酔薬よ。もしだめでも吸い込めば眠くなるし」
「それからなんで、ふにゃふにゃ眠り薬とかいうカッコ悪い名前がついたんだ」
「カッコ悪いって(まだ拘るの?)…身体に力が入らなくなってふにゃふにゃになり、さらに眠くなるのよ?そのままを表してて分かりやすいじゃない」
「へー(棒読み)」
「(むか)格好ばっかり気にしてる誰かさんとは違うのよ。実用性重視なの」
「誰かさんって誰だ」
「さぁ」
「(議論の余地はかなりあるが、今は次へいこう)…最後のあら不思議なんたらかんたらっていう薬は?」
「あら不思議何してたのかしら薬よ」
「長すぎだろ!実用性どこ行った」
「いつもは略して言ってるわよ。忘れ薬って」
「……どこをどう略したらそうなる。もとの名前、跡形もないだろ」
「まぁまぁ。あら不思議何してたのかしら薬は小さいときに付けた名前だから。でも便利なのよ」
「どんな風に」
「その粉を吸うと一時的に錯乱と記憶障害になるの」
「へ、へぇ(やっぱり物騒な…)」
「私を襲ってきた奴に投げつけてこれから何をしようとしてたのか忘れさせるのよ。その間にだいたい逃げ切れるわ。安心でしょ?」
「(ある意味不安になったんだが…)『だいたい』?」
「え。」
「だいたいってことは逃げ切れないこともあるのか?」
「(チッ鋭い)まぁ私の足は遅いからね!」
「……もしかしてその粉を自分も吸ってヤバかったことがすでにあったとか…」
「昔のことよ!今はだいぶ改良して飛び散らなくしたもの(とは言ってもこれが一番複雑で、まだまだ改善しないといけないのよね…)」
「ふーん(やっぱりあるのか)…あ。今思い出したんだが」
「(ホッ)何?」
「俺が追いかけて来たとき、確かなにかを拳で握ってたよな?」
「あ。」
「………どの小袋を使う予定だったんだ?」
「咄嗟だったからなぁ…よく覚えてないわ」
「…………。」
「ま、まぁちゃんと解毒剤も用意があるから」
「……………………。」
「あれ。レイン?レインさーん」
「…………………………………。」
教訓:小動物を追いかける時は驚かせないようにしましょう。さもなくば思いがけない反撃にあうかも。
一部修正。(2013.10.13)




