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贄はエルフの付き人に  作者: Fleur
贄はエルフの付き人に
16/27

風雲急を告げる

前回の甘い蜜+谷底へと吹く風=……?

の解答編。

.



◇◇◇◇◇◇



()みきった甘い匂いがしだした。

その薫りはイリスが摘んだエリスの花のみが発している。

思わず顔を寄せて、肺いっぱいに吸い込んでしまうほどに心地のよい香りだ。



「いい匂いね…」


無事に、というかあっさりと花に誓い終えて安堵し、その香りに酔いながらぼんやりと言う。



「…ああ、だな…」



辺りに(かぐわ)しく漂うそれが、レインのもとまで届いたのか、彼も少し陶然とした表情だ。

いや、元々鼻が効くからか、若干レインのほうがその"酔い"の状態が酷そうであった。


しかし、そのゆるゆるとした穏やかな空気は長く続かなかった。


突然、谷底へと引き込むように吹いていた風が止み、辺りがねっとりとした大気に覆われた。

体に(まと)いつく水分が多くなっているのは雨の前兆に似ているが、水気の臭いが違った。

藻の(くさ)さというか、河の(にお)いに近い。


不快感に肌が泡立った。


「レイン…」


言うまでもなく、彼もこの不穏な空気を感じとっているようだ。

すっと近づいてきてすぐにでも触れ合える距離をとる。

遠くで、ザバァッと何かが水から上がってくる音が聞こえた。


「……まずい…来る…」


レインはそう呟くと、予告もなくイリスを抱え、崖を二つ蹴りあげるだけで駆け上がった。





ビタッ…ペタッベタンッ…ベタッビタッ…




それと同時に不規則な足音が崖の(きわ)から聞こえてきた。

ゾッとするようなその音が段々近くになっているのが、イリスにも分かった。

どうしようもなく、自分達が目的だと分かってしまう。


「レ、レイン」


(しゃべ)んな!舌噛むぞ!」


崖の上に登り切ったレインは、イリスを抱き抱えたまま峡谷から離れようとした。


しかし、あと一歩遅かったようだ。


レインの真後ろでベチャッという音とともに、峡谷から這い上がってきたモノがこちらに標的を合わせた。

レインの肩越しに、ばっちりその生物と顔を合わせたイリスは密やかに息をのむ。

その生物を刺激するのが恐くて、大きな声を出さないようにした必死の自己防衛だ。

ソレは夜が明けかかった今でも闇影のような黒い生き物だった。

大きさは馬2頭ほどあり、姿は平べったい胴に足が数本あり、蜘蛛(クモ)に似ていた。

異様なのはその口で、胴体の中央にぱっくりと開いている。きっと普段は上から谷底へと落ちてくる獲物をその口で待っているのだ。

全身を覆うゼリー状の青緑の粘膜が、この水気の臭いの正体のようだった。


敵に背を向けることが危険性を嫌というほど知っているレインは、ほぼ反射的に振り返った。

予想はしていたが、イリスが目にしたものと同じ生き物を視覚で改めて(とら)えクソッと低く呻く。


そうしている間にもソレは容赦なく襲いかかってきた。

その襲い方も独特で、地面の上を這いずり、転げ回るようにビッタンビッタンと迫ってくる。

ベチョベチョ、じょわじょわとバランスをとるように奇妙な動き方をする足も、その気持ち悪さを助長していた。

レインはなんとか後ろに跳びずさり、距離をとる。

その隙を逃さずほぼ悲鳴のようにイリスは質問をした。



「レイン、あれ何!?」

「花喰いだ!!」



答えるレインの息も流石に荒い。

それを感じとってイリスは思った。


ここでは私は足手まといにしかならない


「レイン、私を降ろして!そしたらもっと自由に闘えるでしょ!」


だが即座に却下された。


「アホか!花喰いはその名の通りッ…おっと……ッ!……花を食うんだよ!こいつはエリスの花目当てだろ!降ろしたら即、獲物になるぞ!!」


ごもっとも。


「花喰いなのに人間(にく)も食べるの!?」


八つ当たり気味に質問を続けた。

そうでもしないと迫りくる花喰いの恐怖で固まってしまいそうだったからだ。


奴等(やつら)は雑食だ!」


さいですか。


レインは怒鳴る様にしながらも律儀に答えてくれる。

流石だ。

だが感心してる場合でもない。


「剣を抜かないの?」


先程からイリスを抱えていない方の手が何度も剣に伸びているのを見かけた。

それだけ動作にはまだ余裕があるように見えるのに、剣を使おうとしないのだ。


「奴等に剣は使えない。あのドロッとした体液の下は硬くてまったく歯がたたないんだ。前にやった時は一太刀で刃が折れた」


経験済みなの!?

道理で応戦しようとしないわけだ。

でも前にも遭遇して帰ってこれたなら、今回も同じにすれば良いのでは?

そう聞けばレインは横顔を硬くした。



「前の時は、炎系統の魔法を使った」


「それは……」



そう、今は魔法を使ってはいけない試練の時。


それをまた確かめるように心で呟くと、応呼するように手の中のエリスの花が、白い輝きを強めた。




.


私のなかで結構苦手な部類のクモを、大まかなモデルに考え出した“花喰い”。

しかし動きや住みか、体の大きさ、口は大きく、などなど……変えてみると結構不気味な魔法的な空想生物が出来上がりました。

書いてて自分でもゾッとしてました…(^-^;

いやしかし。私の描写力で果たしてこの気持ち悪さが伝わるかは未知数です。




“花喰い”の弱点→大きく開いた口、炎、強い毒(ある程度ならば耐性有り。なんせ花を食べますし。植物は毒を含むモノが多いですから)

“花喰い”の特徴→鼻がよく、水底にいながら花の臭いが分かる。

春に活発に活動し、主に花の蜜を主食とする。その他の季節は普通、水底で眠っている。

今回、本来は無臭のエリスの花が匂いを発したので目覚めたもよう。彼いわく極上の香りだったらしい。

基本的に1つの縄張りに一匹。かなり一つ一つのテリトリーが大きい。

この水脈が多い小山にはそれでもかなりの“花喰い”が生息している。

人間(にく)は活動エネルギーにはならないが、食べても支障がないらしい…


……とか。

いろいろ細部まで設定はあるのですが次のに書き込めるでしょうか…

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